百七十六話 海底の城

「それじゃあ、行くわよ。」



俺は彼女のほうきに一緒にまたがる。



「変なとこさわったら、殺すから。」



「はい......」



「俺たちが先行するから、しっかり

ついてきてくれ。」



ビールとワインは案内役のため、

俺たちよりも先に海に潜る。

それを見た彼女は自身の

ほうきを浮かせ、勢い良く

海に飛び込んだ。



「......!」



俺は同時に思わず息を止めていたが、

意を決して口を開いてみると、

魔法のおかげで呼吸ができた。




「おお! すげぇ!」



「うるさいわね、黙っててよ。」



「はい......」



ちょっと感動しただけなのに......



そんな涙目な俺を乗せたほうきは

ビールとワインを追ってぐんぐん

進んでいく。

あたりはもう空からの光が

届かなくなり、真っ暗になっているが、

何故だかそこまで不憫に感じない。

いや、むしろ真っ暗なのにはっきりと

海の中が見える。

これも彼女の魔法の効果なのだろうか。



「ここからは俺たち魚人族の

警備区域だ。見つかったら

面倒なことになる。」



先行していたワインは、俺達に

近づいてそう言ってくる。



「じゃあどうすればいいのよ。」



「俺は城までの抜け道を

知っている。けどその

抜け道は狭い岩壁の間を通って

いくから、頼むから迷子には

ならないでくれよ。」



「ふんっ、そんな間抜けなこと

私がするはずないじゃない。」



それを聞くやいなや、ワインは

ビールと合流し、二人はものすごい

スピードで海を泳いでいく。



そんな二人をみたヨーテルは

のぞむところよ、とほうきの

スピードを更に加速する。



「は、はや!」



俺はあまりのスピードに危うく

振り落とされそうになった。



そうこうしながら、俺たちは

ワインの言葉通りの巨大な岩の

間をもうスピードで駆け抜けていった。




「ここだ。」




そして、ようやく俺はその

人魚姫の眠る海底の城にたどり着いた。

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