百六十六話 三日月島31

ビールは俺達に、何故人間と魚人族の

仲が悪くなったのかを語った。








百年前、とある昼の晴れた日に、

三日月島の真ん中に位置する

崖から、なにかが海に落ちてきた。



近くを警備していた魚人兵達は

不審に思ってそれに近寄った。



「姫様!!!!」



崖から落ちていたのは、

腹部が血に染まった、人魚姫だった。



魚人兵達は人魚姫様を直ちに

海のそこにある城へ連れていった。



その時、見たのだという。


崖の上から自分達を見下す、

刃物を持った男の人間を。




人魚姫様はその後、回復カプセルの

中で治療を受けたが、腹部の傷には

呪いがかけられており、完治しなかった。

そして、人魚姫様は今もなお、

城の回復カプセルの中で眠り続けて

いるのだという。



一方、他の魚人兵達はその人間を

捜索し、その人間は海底洞窟を通って、

エレディア村に逃げ込んだ。




しかし、そのことで魚人族の怒りは

頂点に達し、その人間とエレディア村を

滅ぼそうと考えた。



そこで、魔族の仲間入りをし、

魔族の力を借りることにした。

元々、魔族からも誘いがあった

のだという。



そして、魔族と魚人族はエレディア村を

滅ぼしに行った。

だが、結局、海底洞窟のエレディア村の

入り口は巨大な岩で閉ざされてしまい、

魚人族はエレディア村の人間を

滅ぼすことができなかった。



それからというもの、魚人族の

人間たちに対する憎悪は

増し、今では人間と戦争を

するほどになったそうだ。










「隼人、その巨大な岩というのは......」



「ああ、ここに来るときに俺が持ち上げた

岩だ。」



「しかし、まさか魚人族と

人間の戦争の発端がエレディア村の

その人間にあったとはな。」




「ああ、そうだよ! もとはといえば、

お前ら糞人間が俺たちの姫様を

刺したことが原因なんだよ!」



ビールは俺の胸ぐらをつかんでくる。



「魚人族がこきつかわれているのと、

人魚姫様を人間が刺したのとは

関係ないだろ。」



俺はそう言いながらその手をはらう。



「な、なんだと!」



「だが、これは我々人間側に非があるぞ、

隼人。」



「そ、そうか?」



「ああ。ビールと言ったか?

その人魚姫様とやらは

今も目を覚まさないだけで

あって、生きてはいるのだな?」



「それがどうしたよ。」



「安心しろ。ちょうどここに

その人魚姫様の治療ができるものがいる。」



「あ? どこにいるんだよ。」



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