パーフェクト・ロイヤル・スリーエンジェル降臨!
第55話 理由
「ユイナ、そろそろ起きないと遅刻するわよっ」
ママの声で目がさめて、時計を見たら飛び起きた。
ゆうべはアイビーのことが気になって、なかなかねむれなかった。今ごろ、アイビーはシーちゃんたちとお話をしているんだって考えたら、胸の奥がちくっと痛んだ。
「アイビーのばかっ。どうして帰ってきてくれないのよ」
朝から少し、涙が出たけれど、あわててしたくして、ご飯を食べて、玄関を出た。
今日はミチルちゃんとはちあわせしたんだけど、ミチルちゃん、あたしの顔をにらんで行っちゃった。
あまりのことに衝撃を受けていると、井川くんがやってきた。
「おはよう、天羽。その昨日の今日でなんだけど、いっしょに登校してもいい?」
「えっと、おはよう。いい、よ」
今日はアイビーもいないし。ふんっと鼻息を荒くしていると、最初は緊張していた井川くんが吹き出して笑った。
「よかった。昨日散々ふられた後だったから心配したけど、いつもの天羽だ。山田は?」
不意打ちでアイビーの話を持ち出されて、あたしはますます不機嫌になる。
「お泊りなんですって」
シーちゃんと、と言いそうになったところで口をつぐんだ。そこまで言っちゃだめだ。そんないじわるを言ったら、また羽根が黒くなっちゃう。
しかたがないので、話題を変えることにした。
「ねぇ? 井川くんとミチルちゃんって、小学生の頃はもっとなかよしだったんでしょう? 黒田くんに聞いたよ」
「ああ、おさななじみってやつかな? でもあいつ、五年生かそのくらいあたりで急に人が変わったみたいになっちまったんだ。自分のことをぼくって呼ぶようになったし。そのせいでなんていうか、溝みたいなの感じて、あんまりしゃべらなくなった」
溝かぁ? なにがあったんだろう?
「ちなみに、そのあたりって、なにか変わったことがなかった?」
ごく自然に聞いたつもりだったのに、井川くんは鼻息を荒くし始めた。
「あったよ。運命の出会いが。『パーフェクト・ロイヤル・スリーエンジェル』と出会ったんだ!! って、これはぼくのことか。ごめんごめん。あまりにも衝撃的な出会いだったからさぁ」
つまり、井川くんが『パーフェクト・ロイヤル・スリーエンジェル』と出会ったことで、ミチルちゃんは変わらなければならなかったってことでいいのかな?
「ミチルって呼んでたんだけど、なんかもう他人行儀でさ。しかたないから清野って呼ぶようになったんだけど、あいついっつもむくれることがふえてさぁ」
シーちゃんとの出会いが、井川くんにそこまで影響しているのだとしたら、ミチルちゃんもむくれるしかなったのかもしれない。
よしっ。だいたいのことは把握した。
「いろいろ教えてくれてありがとう。じゃああたし、先に行くね」
「ちょっと、天羽?」
あたしは井川くんにかまわず、学校へと走り出していた。こんなところをミチルちゃんに見られたりしたら、また変な誤解をされかねないもん。
今は、ミチルちゃんの恋をかなえなくっちゃ。
つづく
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