第1話 夢か現実か

『ユイナ、目をさますんだ』


 頭の中で声が聞こえた。なつかしい男の人の声がする。え? ひょっとして、パパ?


「パパ? どこにいるの?」


 パパは長期で海外出張中なのに、あれ、おかしいなぁ? 電話でもしているのかしら?


「パパ?」

『ユイナよ、すべてを受け入れるんだ。そして強くなって、人々の恋をかなえてやるのだ』


 なんだろう? 眠っているはずなのに、意識が遠のいて行く。


「はっ!?」


 荒い呼吸を繰り返す。目がさめた。息がとっても苦しい。なんだろう、すごく感じがする。


「え? 浮いてる?」


 ってっ!?


「キャーッ!!」


 上掛け毛布がはらりと落ちて、体がベッドから浮き上がっていく。なにこれ!? どういうことっ!?


「ユイナ」


 すぐにママが来てくれたけれど、電気をつけても状況は変わらない。


 あたし、なんで浮いているの!?


「そうね。今日はユイナの十四歳のお誕生日だものね」


 そう言われてみればそうだけど、どうしてママが泣くの?


「ユイナ、これから言うことを、落ち着いてよく聞いてね。実は、ユイナのパパは天使なの」


 思いがけない言葉に、あたしは息を飲む。


「そんなの、絶対に夢だぁーっ!!」


 あたしの声は、夜中なのに家の中で大きく響いていた。ママってば、あたしのことを天使だなんて、おかしなこと言って。きっと寝ぼけているのね。


 それとも、あたしが本物の天使ばりにかわいいっていう意味なのかしら?


 つづく



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