後輩って、どんな子たちなんだろう?
「サンキセイ、オトコ、ハイル……? オデのハーレム、マタジャマサレルノカ……? ゆ゛る゛さ゛ん゛っ!! あべしっ!?」
三期生として男性タレントが追加されるかもという話を聞き、バーサーカーと化した乙女にハリセンでの一発を食らわせた枢が改めて他のメンバーの反応を窺う。
それもそうだ、と頭の片隅においてはいたもののそこまでしっかりと考えていなかった一同は、その件についても話し合いを始めた。
「男の子か~……! まあ、枢くんもファンのみんなに受け入れられたわけだし、三期生に男性が追加されてもおかしくないもんね」
「三期生自体の人数もそうだけど、男女比も気にしなくちゃいけないポイントだよな。もしかしたら、男の方が多いって可能性もあるだろうしさ」
「そうなったら男の子は枢くんの方に固めて、女の子を残りのメンバーで取り囲む感じにする?」
「いや、十二人の先輩に囲まれる後輩の気持ちも考えてあげようよ。もしも女の子が一人だけだったら、もうとんでもない圧を感じることになると思うよ?」
ああでもない、こうでもないと話し合うメンバーであったが、やっぱりきちんとした答えは出せずにいるようだ。
三期生の人数も、男女比も、どんな性格をしているのかもわからないのだから仕方がないことだが、それを指摘してしまうとこの話し合い自体が無駄になってしまうため、敢えて全員が言わないようにしている。
そんな中、先輩たちが話し合いをしている姿を尻目に窓の外を眺めた枢が、ぼや~っとした声で一人呟きをこぼす。
「男の後輩か~……どんな人が入ってくるのかなぁ……?」
「あっ、やっぱり枢くんも気になってるんだ?」
「そりゃあね。事務所で唯一の男性タレントって状況から脱却できるわけだし、楽しみではあるよ」
これまで同性の同僚がいない状況で活動してきた枢にとって、三期生の加入はその状況から脱することができる大きなチャンスでもある。
自分が二期生としてデビューしたことで土台は整っているわけだし、後輩として男性タレントが追加されてもおかしくはないという期待で胸を弾ませている彼へと、話し合いを中断したメンバーが次々に声をかけてきた。
「やっぱし同年代の男の子が入ってくれると嬉しいよね~! 気兼ねなく話せるだろうし、年齢の近い友達が事務所にいるって嬉しいもんだよ~!」
「そうっすね。下手に気を遣わなくていいだろうし、先輩後輩感のないダチができるといいかな……?」
ほわほわと頭の中からフキダシのようなもやを噴き出した枢がまだ見ぬ男の後輩に思いを馳せる。
自分と歳が近そうな青年を思い浮かべた彼がうんうんと頷きながらその後輩と仲良くなることを夢見て笑みを浮かべる中、愛鈴がまた別の方向性の後輩を提案してきた。
「いや、逆にナイスミドルなイケオジが来てもいいんじゃない? 年上の後輩ってことで最初は戸惑うかもしれないけど、慣れたらいい感じの話題になるだろうしさ」
「落ち着きのある大人か~……! 確かに入ってもらえると嬉しいかもしれないっすね。この事務所、俺より年上なのに落ち着きがない大人ばっかりなんで」
「おいちょっと待て、それは誰の事だ? あっ!? お前っ! フキダシで私たちを押し出すんじゃない! こらっ、聞いてるのか!?」
愛鈴の叫びを無視して、もやの中に大人の男性の姿を思い描く枢。
スーツ姿のダンディな中年男性の姿を想像した彼は、これはこれで悪くないんじゃないかと思い、これまたうんうんと頷いてみせる。
「折角の後輩ですし、ショタっぽい子でもいいんじゃないっすかね!? 坊やの面倒見の良さが引き立つと思いますし!」
「それも悪くないかもです。自然に後輩として接することができますし、かわいがってあげたいですしね」
「色黒金髪のチャラ男を呼ぼう。んで、芽衣ちゃんにいつの間にか手を出されてるみたいな展開に……いや待て! それは私の脳も破壊されるからやっぱなし!!」
「薄い本の知識で後輩を想像するの止めてもらっていいですかね……これ絶対、三期生に男が入ったらネタにされますよ?」
とまあ、そんな感じで男の後輩が入ったらどうなるか? どんな後輩が入ってほしいかを語っていった一同は、乙女のふざけた発言に対する枢のツッコミで一旦この話題に終止符を打つことにしたようだ。
とは言いながらも、完全に流れを断ち切ることはできないようで……ここからもう少しだけ、この話題が尾を引いた話が続いていく。
「男の子の話ばっかりしてましたけど、女の子も入るんですよね? どんな子が来るんだろう……?」
「こ、怖くない子がいいな。それで、ゲームが好きだとすごく嬉しい……!」
「コラボとかバンバンやって、いっぱい遊びたいよね! いつかは一期生、二期生も含めた大規模コラボなんかもしちゃってさ!」
「こうして考えると不安もありますけど、楽しみなことが多いですよね。本当にどんな子たちが入ってくるんだろうなぁ……?」
「ふふふ……っ! 本当にどんな子たちなのかしらね~? 三期生の子たちって……」
思いを馳せるようにおせろが呟くと同時に、全員がまだ見ぬ後輩たちの姿を想像する。
楽しみを募らせながら妄想を膨らませるメンバーに対して、早矢は笑みを浮かべながらこう言った。
「……結局、大事なのは歓迎会とかの場じゃなくって、歓迎する気持ちの方なのかもね。思いを伝えるってわけじゃないけどさ」
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