空気を戻して、そして――!


「んじゃ、こっからは似たようなマロが沢山届いてるから、それを一気に紹介するわ。飲み物口に含んでる奴は噴き出さないように注意しろよ~」


 先んじてリスナーたちに注意した枢が送られてきていた同じ題材のマシュマロを画面に表示する。

 今度は油断をしていなかったお陰で飲み物を噴き出すことはなかったが、表示されたそれを見たリスナーたちは喉から変な声を出して笑ってしまった。


『蛇の唐揚げって美味しいのかな』

『ハァイ、くるるん! これ頼まれてた蛇スープと火炎瓶だよ!(側溝から)』

『夜は焼き蛇っしょ!(大きく背中を反らしながら)』

『お腹すいた。鰻は高いので、蛇の蒲焼の作り方を教えてください』

『年越し蕎麦も良いけど私は蛇の丸焼きとかもいいと思うの |д゚)チラッ』

『新しいゲームを買いました。内容が蛇の丸焼きを作るらしいのですが蛇を焼きたくない自分はどうすればクリアできますか?』


「……お前ら、どんだけ蛇が食べたいんだ? そんな食べたいならゲテモノ料理店にでも行ってこい。唐揚げにスープに蒲焼に丸焼きって、よくぞまあここまでメニューを考えられるよな?」


【ここでも唐揚げの話題出てきちゃったよwww】

【ペニー○イズもよう見とる……】

【こういうマシュマロ見てると蛇の味とかに興味出てくるよね。マジでゲテモノ屋に行ってみようかな?】


「蛇を食べる話から続くけどさ、最近のVtuberさんって虫とか食べてる人結構いないか? 実写配信ができる人たち限定なのかと思ってたらそうでもないしさ……嫌だぞ、いつか罰ゲームとかで蛇を食わされる羽目になったりするの」


【確かに最近めっちゃ増えたよね。激辛焼きそば早食いの系譜かな?】

【くるるんラブリー乙女しゃぼん……くらいか? 虫とか蛇を食べさせられそうなのは】

【でもくるるんなら蛇肉くらいまでなら美味しく調理してくれそうな気がする。罰ゲーム押し付けられて泣いてる芽衣ちゃんに愛の力で美味しい蛇肉料理を食べてもらうんだ】


「無理じゃね? 俺も流石に一度も扱ったことのない食材はどう調理したらいいのかわからねえわ。だからといって蛇肉料理を調べるってのもなあ……って感じじゃね?」


 送られてきているのはれっきとしたクソマロなのだが、前の話の流れが綺麗だったお陰か話題はまだまともな形になってくれている。

 まあ、蛇をどう料理して食べるか? という話題がまともかと聞かれると首をかしげるしかないかもしれないが、まともだということにしておこう。


「やっぱ食って大事だな。くるるんキッチンとかやってるし、誰かに作ることも多くなったから、これからも腕を上げていこうと思うわ……ゲテモノ料理は作らねえけどな。さて、お次は……こいつでいくか」


『くるるんへ、もし二期生のみんなへ花を贈るとなったらどんな花を贈りますか?』


 ここらで食べ物の話は終わりにしようと考えた枢が、まともな流れは残しながらもそれとは全く関係のないマシュマロを画面に映し出す。

 それを見せた後、ふんふんと唸りながら腕を組んだ彼は、真剣にこの質問の答えを考えていった。


「花を贈るって難しいよな。昨今、そんな気障なことする男なんざそうそういねーよ。でもまあ、こうして送られてきたわけだから考えるわけだけど……う~ん、とりあえずたら姉はハイビスカスでいいよな?」


【まあ、通常衣装に付いてるしそれでいいんじゃね?】

【色にもよるけど、ハイビスカスの花言葉って「華やか」とか「輝き」とかだからたら姉にぴったりかも!】

【新しい恋ってのもありますけどね……浮気か?】


「え~、怖いコメントは目に見えないことにして……こっからちょっと難しいよな。愛鈴は……ラフレシアでいいか」


【愛鈴www雑が過ぎるwww】

【くるるんから世界一臭い花を贈られるラブリー、解釈一致です】

【ラフレシアの花言葉……夢現(ゆめうつつ)。う~ん、確かに初期ラブリーは夢の存在となったしぴったりか】


「リア様は……名前が気に入ってるからスノーフレークとかじゃダメか? 白いし、雪っぽい名前だし、合ってね?」


【末っ子に贈る花だぞ! もう少し真面目に考えんかい!】

【でもリア様はなんでも喜んでくれそう】

【スノーフレークは純粋とか皆を惹きつける魅力って花言葉だし、普通に合ってる。流石は枢兄っちゃ!】


 という感じでサクサクと質問に答えた後、芽衣に贈る花の種類を考えようとする枢であったが……?


【バラを贈れ。九九九本贈れ】

【そんなに多くても芽衣ちゃんも困るし、枢だって集めるの大変だろう。ここは一〇八本でいいよ】

【三桁とか無理に決まってんだろ。ここは十一本でいこうぜ。そのくらいなら余裕で集められるだろ?】


「う~ん……なんだろうかこの団結力は? そして絶対に碌でもないこと考えてるって確信が持てるコメントの雰囲気は……?」


 一瞬にして染まるバラを贈れとのメッセージに口の端を吊り上げて苦笑した枢が呆れた様子で感想を述べる。

 愛を伝える情熱の赤いバラなんて言われている花だし、だからこそそういうふうに誘導したいんだろうなと思いながら、枢はリスナーたちへと自分なりの回答を口にしてみせた。


「でもまあ、バラでいいと思うぞ。ただし赤じゃなくって白な。花言葉が「深い尊敬」だってことは知ってるんだ。だからそれでいくわ」


【ヘタレ! そこは赤いバラを渡して愛の告白をしろよ!】

【毎日一本贈れ。愛の囁きも毎日伝えろ】

【チューしろ、チュー! というわけでチューリップだ!!】


「ええい、お前らめんどくせえんだよ! この話は終わりだ、終わり! 結果が出たんだからもうおしまい! はい、次行くぞ~!」


 強引に流れをぶった切りつつ、配信の空気をいつものクソマロ配信のそれに近付けた枢の叫びが響く。

 いよいよ配信もクライマックス。締めに向けておなじみのが始まろうとしている。


 胸を躍らせているリスナーたちの期待に応えるべく、深呼吸を行った後で枢は高らかにそれを宣言してみせた。


「よっしゃ~! んじゃ、そろそろいくか……新年一発目クソマロノック、始めるぞ~!」

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