食べ物の話って、盛り上がるよね
「……多分なんだけどさ、俺も疲れてるんだと思う。十二月は本当に忙しかったからな~……」
【うん……本当にごめんね、くるるん……】
【枢、あなた疲れてるのよ。芽衣ちゃんに膝枕してもらってゆっくりお休みなさいな】
【クソマロばっかり見てるから精神が摩耗してるんやろうなって……】
閑話休題、少しお休み。疲れがどっと出てきた雰囲気の枢が温かいお茶を飲みながらどこか気の抜けた態度でぼそりと呟く。
本気で疲れが溜まっているんだろうなと思いながら、それでもクソマロ配信の続きがみたいなと正直な欲望を露わにするリスナーたちが見守る中、枢は落ち着いた声で話を進めていった。
「ここからはクソ濃度が低いマロを紹介していくぞ~。でも濃度が低いだけでクソマロなのは変わりないからな~」
【逃げてもクソマロ、進んでもクソマロか……】
【くるるん、前世でクソマロ関連の悪事でも働いた?】
【もしかしなくてもVtuber随一のクソマロソムリエになってないか?】
流石にあのハイペースでクソマロを捌き続けるのはスタミナがもたないのだろう。ここらで少しペースダウンして、落ち着こうとしているようだ。
リスナーたちも休憩するつもりで飲み物を口に含み、のんびりとする中、枢は次のマロを表示する。
『相談いいですか』
「……肝心の相談はどこだよ? もしかしてあれか? 段階を踏まえるパターンか? ここで俺がいいよって言ったら次のマロを送ってくる感じか?」
【丁寧にツッコまないでくれ、茶を噴いた】
【不意打ちは止めろ。繰り返す、不意打ちはやめろ】
【さらっと流すべきマロにもしっかりツッコミを入れるから枢のマシュマロ配信は好き】
落ち着き始めた雰囲気を自らぶち壊す枢の発言に揃ってリスナーたちが揃って噴き出す。
飲み物を口に含んだタイミングでのクソマロ紹介&それへのツッコミは自分たちに対するちょっとした反撃なのかもしれないと思いながら、今度は警戒しつつ、画面を見つめ続ける。
『最近、私が唐揚げを注文するとみんなが摘んでいきます。私の唐揚げはいつから共有財産になったのでしょう?』
「これさ、ガチであったらキレていいレベルの話だと思うんだけど、お前らはどう思う? 俺は周りにそんなことする奴がいねえからわかんねえけど、やられたらキレる自信があるぞ」
【ブチギレ推奨案件。人の物に手を出す時点でおかしい】
【フライドポテトとかもそうじゃない? 皿に山盛りになってるのに手を伸ばすのはまあわかるけど、昔、友達とマ○ク行った時にセットのポテト無言で食われた時は二度とこいつと遊ばねえって決意するくらいムカついた】
【この話とは関係ないけど、大人数でシェアする物に勝手に手を出す奴も嫌い。会社の飲み会で勝手に唐揚げにレモンかけた奴がいて、上司とかその場の全員に怒られてた】
「あ~、唐揚げにレモンもブチ切れる人いるよな。あれはレモンが嫌いっていうより、みんなで食べる物を自分勝手に扱うことに対してキレてるんだけど、それがわからない人って一定数いるのが怖えよ」
【そう! 俺の会社の奴がモロにそうだった! 「レモンかけた方が美味しいじゃないですか。みんなもかけて食べてるでしょ?」って言ってて、ガチでこいつダメだわって思った】
【俺も食事関連でムカついた話していい? 焼肉食べに行った時、一人だけ食う担当の奴がいて、俺が焼いてた肉とかを全部食べられちゃったことがあったんだよ。なんで俺の分も食うの!? ってキレたら、ついうっかり……としか言わなくてその時点で店を出た】
【友達とバイキング行った時に似たようなことやられた。そいつバクバク食ってて、私がのんびり食べてたら「私の分も取ってきて!」って命令してくる。こっちはこっちのペースで食べてるのに向こう側でフードファイトされて、給仕役までやらされて嫌になっちゃった】
「おーおー。出るわ出るわ、嫌だった思い出……やっぱ食べ物の恨みは恐ろしいってことなのかね? まあ、食事に関しては生きていく上で欠かせない部分だし、そこで相手に嫌悪感持っちゃうともうダメになるよなぁ……あ、マシュマロにも送られてきた。うわ、やっべぇ……」
一通のマシュマロをきっかけにリスナーたちから次々と送られてくる食事に関する嫌な思い出を確認した枢が苦笑を浮かべながら頷く。
確かに自分もプリンが嫌いだった理由は味とかではなくて家族に除け者にされていた過去を思い出すからだったよなと自身の経験も合わせて振り返った彼は、愚痴で盛り上がり始めた配信の流れにストップをかけるために口を開いた。
「はいはい、これに関してはまた別の配信でやるから、今日はここまでにしとくか。飯で嫌だった経験があったらマシュマロに送っといてくれよな~! 今度、配信で紹介させてもらうわ~! あ、そうだ。飯関連といえばこんなのも送られてきてたな……」
ついでだし、といった雰囲気で次のマロを出す枢。
食べ物関連の話題ってやっぱり盛り上がるなと彼が考える中、こちらのマロに対してもリスナーたちは相応の反応を見せてくれていた。
『年末の年越しは赤○きつね、緑○たぬき、どちら派ですか?私は黒○豚カレー派です』
「これは製品じゃなくてうどん派かそば派かどっちかを聞いてみたいんだよな。ちなみにだけど、これに関しては二期生では誰がどっち派かは話し合ってあります」
【そば! ざるそばが好き!】
【うどんかな~? もちもちしてる方が好きなんだよね】
【う~ん……どっちも好きだけど、どっちか選べって言われたらそばかな……?】
【そばアレルギーだからうどん一択なのです(涙)】
【敢えてのラーメンはダメですか?】
「これも綺麗に割れるな。マシュマロ配信じゃあなかったらアンケート取ってみたかったわ。ちなみに二期生では俺とリア様がうどん派で、芽衣ちゃん、たら姉、愛鈴がそば派だそうです。うどん派の理由は食べ応えがあるっていうのと、焼うどんにもできるから飽きないってところかな。そば派はやっぱ年越しそばとかで食べる機会が多いからどっちかっていうとそっちって感じらしいわ」
クソマロ配信ではなく、普通のマシュマロ配信のようなやり取りを続けながら、自分たち二期生の好みに関しても話す枢。
逆に珍しいありふれた雰囲気のあれやこれやを見せていた彼は、そこで気を取り直す(?)といつも通りの残念なマシュマロを紹介していった。
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