クリスマスパーティー、楽しみだね
「ああ! そう言われてみればそうでしたね!! いや~、うっかりうっかり!」
「ボケるにはまだ早いんじゃないっすかね? っていうか、周りに興味がないからそんな大ボケかますんじゃないっすか?」
「うぐっ……! い、いや、言い訳じゃあないんすけど、この時期は色んな人たちがパーチーだのオフコラボだのの配信をするから、情報の整理が追い付かなくって……決して坊やたちに興味がないとかどうでもいい存在だと思ってるとかじゃあないんすよ!?」
言い訳以外の何物でもないじゃあないかと思いつつ、その気持ちはわかると苦笑する零。
別に本気で怒っているわけでもない彼は、はいはいと慌てる梨子を宥めながら近付きつつある二度目の二期生オフコラボに思いを馳せて話を続ける。
「三瓶さんがこっちに来るのも久しぶりですし、折角だから楽しいパーティーにしたいっすね。クリスマスソングメドレーの歌ってみた動画も投稿予定ですし、リスナー共々、いい思い出を作れるといいな」
「ほうほう! 色々と考えてるんすね~! 流石だなあ……!!」
前々から計画を立て、楽しいクリスマスが過ごせるようにタスクをこなしてきた二期生たちは、十二月二十五日のオフコラボを心から楽しみにしている。
準備はバッチリ整えたし、あとは当日にスイを迎えてクリスマスパーティーを楽しむだけだと考える零に対して、梨子が質問を投げかけた。
「今回、料理とかはどうするんすか? クリスマスだし、スイちゃんがこっちに来てからお金を出し合ってオードブルとか買う予定なんすかね?」
「いや~……時期が時期だし、三瓶さんがこっちに来る頃にはデパートもごった返してるでしょうから、あんま外出は控えようと思ってるんですよね。だから、手作りでどうにかしようかなって……」
「うおっ、すっげ……! 流石は料理できる系男子の坊や。パーティー用の料理もお手製かあ……!」
「俺が一人で作るわけじゃあないっすよ。他のみんなと一緒に作る予定です」
クリスマスやその前日の夜に買い物なんて出掛けたら、オードブルを求める人の波に飲みこまれる気しかしない。
元アイドルの沙織やただでさえ目立つスイ
と一緒だと身バレの危険もあるし、それを回避するためにも多少くらいならば手間がかかっても安全な方策を取った方がいいだろう。
七面鳥の丸焼きなんかは無理だが、それっぽい料理ならまあ作れる。
少し前に奮発して自宅でピザを作るための調理道具を買ったりもしたし、ケーキもみんなで手作りするのもいい思い出になるだろうと……そう考える零もまた、クリスマスを前に結構浮足立っていた。
「本当は陽彩さんとか須藤先輩も誘おうかと思ったんですけどね、二人とも予定が入ってるみたいだったんで、今回は不参加ってことになりました」
「へぇ~……あれ? 自分は誘われてないんですが? なんで坊やはママを楽しい楽しいパーチーに誘ってくれなかったの!? ねえっ!?」
「……普段、大変な仕事から逃げてる人が楽しいことだけ参加しようだなんてのは虫が良過ぎると思いませんか?」
「あひぃ……! ご、ごもっとも過ぎて何も言い返せねえ……!!」
二期生コラボ、という話にはなっているが、別にもっと大勢のメンバーが参加してもいいんじゃないかと零は思っていた。
しかし、陽彩はルピアと穂香の二人とスタバトのランクを回すらしいし(クリスマスにすることかと尋ねたら、クリスマスだからこそやるんだとルピアに言われたと返された)、澪も澪で他のVtuberとのコラボ配信に参加するとのことで、今回は見送りとなったわけだ。
いつかは【CRE8】全員が参加するパーティーを開催してみたい。どうせなら、今度デビューする後輩も加えた大規模な集まりがいい。
そんなことを考えながら、住んでいる場所や専業兼業の問題もあって難しいだろうなと考える零へと、そわそわと落ち着かない様子の梨子がこんなことを尋ねてきた。
「……で? 当然、クリスマスプレゼントは用意してあるんすよね?」
「ええ、まあ。言っておきますけど、加峰さんの分はありませんよ?」
「そんなことわかってるっすよ! それで何を用意したんすか!? 指輪? 高級ディナーの予約? それともホテルのスイートルームの鍵っすか!?」
「……もしかしなくても有栖さんに渡すプレゼントの話をしてると思いますけど、ピンポイントで誰かに渡すつもりなんてないですからね? 用意してあるのは交換用のプレゼントであって、個人的な物は買ってませんよ」
「ええ~っ!? それはなしでしょ、坊や!! そこはしっかりお嫁さん用に何かプレゼントをっすね――!!」
絶対にツッコまれると思ったところを予想通りにツッコまれた零が面倒くさい義母の話にうんざりとしたため息を吐く。
普通に考えればプレゼントといったらパーティーで交換する用の物を指すに決まっているだろうと思いながらも、周囲の人間がそれを期待することもまた知っている彼は、梨子の話を聞き流しながら数日前に買い物に行った時のことを思い返し始めた。
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