集結、ビッグ3
「うぐえっ!? ぶぐおっ!?」
「なにやってんだよ、ヴァル子。後輩いじめもその辺にしときな」
「ぶごっ!? れ、玲央ぉ!? ちょっ、タンマ! 入ってる! 完全に気道塞がれてるって!! あっ、でもれおっぱいを枕にできるのはいいかも……ぐぶへっ!? 嘘です嘘ですっ! だからそれ以上締めないでぇ~っ!」
流子の細い腕をがっちりとホールドしながら彼女を引き寄せたのは、ボリュームのある金髪が特徴の女性だった。
呼吸ができなくなって苦しむ流子のタップを受けながら歯を見せて笑った彼女は、零へと視線を向けると気さくな挨拶を口にする。
「よっ、零。久しぶりだね」
「来栖先輩! おはようございます!」
「アタシの同期が悪いことしたね。しっかり締めとくから、安心してくれよ」
「ぶ、物理的に絞められてる、なう……し、死ぬぅ、マジで逝くぅ……!!」
零たち二期生とも親交が深い、【CRE8】のNo.2タレントである獅子堂マコトの中の人こと来栖玲央。
暴走する流子を制して襲われている零たちに助け船を出した彼女は、呼吸困難になって青ざめている流子を解放してから改めて挨拶をした。
「零、入江、喜屋武に秤屋……三瓶は地元だから今日は不参加か。こうしてリアルで顔を合わせるのも、本当に久々だね」
「ちょくちょく世話にはなってるんですけどね。今もそうですし」
「ははっ、気にすんなよ。っていうか、こっちこそ悪かった。ヴァル子もああは言ってたけど、悪い奴じゃあないよ。お前への恨み言も半分はネタみたいなもんだし、気にしないでやってくれ」
「は、半分はマジってことなんですね。笑えねえ……」
面倒見のいい姉御肌の玲央のフォローに、苦笑しながら乾いた笑い声を漏らす零。
嵐のような流子を抑えられる人物がやって来てくれたことに一同が安堵する中、未だにぴとっと零の背中にくっついたままの有栖が彼へと言う。
「す、すごいね……! 今、ここにビッグ3の二人がいるんだって考えると、ドキドキしちゃう……!」
「ああ。でも、それで終わりじゃあないよ。あと一人……ここに来るんだ」
所属事務所のNo.2と3が並び、更に自分たちも同じ場所に立っているという事実に緊張する有栖へと、そう付け加える零。
そう、まだここには一人来ていない人物がいる。
その人物との邂逅に緊張と期待を入り混じらせた感情を抱く零の心を見透かした玲央は、僅かに笑みをこぼしながら彼をリラックスさせるようにこう言った。
「安心しな。別に変な奴じゃあないよ。少なくとも、ヴァル子よりかはずっとマシな奴さ。アタシほど威圧感もない、普通の奴だよ」
「普通……ですか?」
「そう、普通。でもまあ、そうだな……ダメだ、アタシにはあいつを上手く表現できる言葉が見つからないや。誰か上手いこと説明できる奴、いる?」
「いや~、でも玲央ちゃんの反応も尤もだと思うっすよ? 自分も普通以外の言葉が出てこないっすし……」
「敢えて言うなら、普通だけど普通じゃない、かな~? 多分、一期生全員がそう思ってるんじゃない?」
澪の言葉に、一期生たちがうんうんと頷く。(流子だけは地べたに這いつくばっていた)
普通だけど普通じゃない、という意味不明な表現に零たちが首をかしげる中、意味深に笑った玲央が会議室の扉へと軽く視線を向けてからこう言った。
「まあ、百聞は一見に如かずってやつだ。あとは自分の目で確かめなよ」
意味深なその言葉に紛れて近付いてくる、一つの足音。
段々と大きくなっていくその音を耳にした零は、ごくりと息を飲みながら扉を見つめる。
コツン、コツン……と響いた音が止まった直後、ドアノブが捻られ、ゆっくりと扉が開いていく。
その先から姿を現した一人の女性は、自分へと向けられる無数の視線を浴びながら笑みを浮かべると、会議室に集まった面々への挨拶を口にした。
「あはは……私が一番最後っぽいね。でも、遅刻はしてないでしょ? セーフだよね、セーフ!」
とてもいい声だ……それが、零が抱いた彼女への第一印象だった。
流子のようにとびきり清楚というわけでもなく、玲央のようなパワフルさを感じさせる声でもない。
ただ、聞き取りやすさや通りの良さ、そして耳に残る優しく落ち着いた雰囲気が特徴的なその声は、非常に魅力的で唯一無二のものだと思う。
黒い髪を肩まで伸ばしたミディアムヘアが特徴的なその女性は、会議室の中に初めて見る顔があることに気が付くと、茶目っ気たっぷりにウインクをしながら声を弾ませて自己紹介をしてみせた。
「二期生のみんな、はじめまして! 私は
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すいません、宣伝です!
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