また一つ、約束が増えた
「……随分唐突だね? 急にどうしたんだい?」
「いや、思ったより相性いい感じしますし、普段とは違う狩栖さんの姿が見れるから、リスナーたちも嬉しいんじゃないかなって。有栖さんも須藤先輩とは普通に話せてますし、やってみたら面白くなる気しかしないじゃないですか!」
「それ、いいねえ! ゆーくんを配信で弄りまくるの、楽しそう!」
「ふふふ……! 零くん、男のお友達ができて嬉しいんだ。一緒に色んなことをしてみたいんだね?」
突然の提案に驚いたのは優人だけで、澪と有栖は四人でのコラボ配信に乗り気な様子を見せている。
別に彼も嫌だというわけではないだろうと思う零の予想は正しく、苦笑を浮かべた優人はこの場の面々へと呟くように言う。
「……一人だけ別の箱の人間だと、色々と大変そうだな。叩かれた時はフォローしてくれよ?」
「もちろん! にししっ、W夫婦のコラボ配信、楽しみだな~!」
少しだけ回りくどいながらもコラボ配信を承諾した優人の言葉に、澪が嬉しさを弾けさせながら笑う。
零もまた喜びを感じて微笑むと、早速その企画内容について相談をし始めた。
「何をしましょうか? やっぱり普通にゲームでもやります?」
「初めてのコラボでただの雑談って難しいもんね。なにかやることを決めた方がいいよ」
「じゃあさ! 男女に分かれて、相手に言ってほしい台詞とかボイスの脚本を書いてくるとかどう!? 面白そうじゃない!?」
「下手をすると荒れるよ、それ。君たちは大丈夫だと思うけど、僕と阿久津くんが燃える」
活発に、楽し気に、意見を出し合って話を進めていく四人。
それぞれのやりたいこと、してみたいことを次々に提案しては、それもいいねと認め合う話し合いは非常に楽し気な雰囲気で進んでいく。
「そういえば零くんって公式で料理番組やってたよね? そこに四人で出るとか、どう?」
「いいっすね! 今度は俺たちが二人に手料理をごちそうしますよ!」
「ふふふ……! 目指せ、『くるるんキッチン』初の別事務所からの出演、ですね!」
「なんだか話が大きくなってきちゃったな。プレッシャーを感じるよ」
どんどん企画の規模が大きくなり、やってみたいことの数も増えていくほどに、話し合いは盛り上がっていく。
ああだこうだと様々な企画を出した後、このままではきりがないと判断した優人は、手を叩いて注目を集めてから零たちへとこう言った。
「はいはい。今はとりあえず、声劇コラボに集中しよう。あれもこれもってやってたら、全部が中途半端になっちゃうよ」
「そうっすね。この案を実現させるためにも、声劇コラボの作業を進めていかないと――」
「零くん? 今日はもうお仕事終わりにするって、さっき言ったよね? 忘れたの? 泣くよ? お尻に敷きながら大泣きするよ? それでもいいの?」
「違う! そうじゃない! 今日は休むけど、明日からは節度を守って頑張ろうって意味! だから勘弁して、有栖さん!!」
明るい笑顔を瞬時に引っ込め、黒羊さんを召喚した有栖の言葉に戦慄しながら言い訳をする零。
そんな彼と、彼をジト目で見つめる有栖の姿に大笑いした後、澪が向かいに座る優人へと言う。
「約束だよ。絶対、この四人でコラボするからね。忘れたとは言わせないよ!」
「ああ、わかってるよ。全部が落ち着いたら、その時は――」
また一つ、約束が増えてしまった。
そのことを喜びながら、口元に笑みを浮かべた優人が言葉を途中で区切る。
かわいい弟分と、その嫁と、自分にとって大切な人と……その三人と一緒にテーブルを囲んでいるこの瞬間の幸せを噛み締めるように俯いた彼は、どこまでも優しい瞳で彼らのことを見つめ続けるのであった。
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