ふつおたに、答えてみよう
「改めまして、今回はゲストの蛇道枢くんとみんなが送ってくれたお便りを読んでいきたいと思います。蛇道くん、よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします。あんまり変なことを言わないようにしないと駄目っすね」
「リラックスして、普段通りの君を見せてくれればいいよ。じゃあ、一つ目のお便りを読んでいこうか」
「はい!」
所謂、『ふつおた』と呼ばれるコーナーの始まりを自然な流れで行う二人。
リスナーたちから送られてきている多くのメッセージの中から最初の一つを選んだ優人が、それを落ち着いた声で読み上げていく。
「【ライル様、蛇道くん、こんばんは。コラボが発表された日から今日まで、ドキドキワクワクしながら過ごしていました。質問なのですが、お二人は自分の事務所の中でどんなポジションの人間だと思いますか? 主観的な意見でいいので、教えてください】……だって。どうかな、蛇道くん?」
「自分がどんなポジションの人間か、ですか……改めて聞かれると、返答に困るっすね。レッドハートさんはどうです?」
「僕はまあ、ちょっと浮いてるような気がしなくもないかなって。変な意味じゃあなくって、各スートの代表の中で唯一のジャックだしさ。周りのみんなに迷惑かけてないか心配だよ」
【迷惑かけてるはないでしょ。むしろかけられてる方だ】
【王様たちはちょいちょい炎上してるからなあ……】
【そういう意味では枢とライルは似てるかも。同じ事務所の盾的なポジション】
「……って、リスナーさんたちは言ってくれてますけど?」
「ありがたいことです、はい」
他のスートのメンバーたちと歩幅が合っていないのではないかという不安を抱く優人に対して飛ぶ、リスナーたちからの温かい励ましの声。
彼が【トランプキングダム】に必要不可欠な存在であると再認識した零は、主観的な意見で自分のポジションについて語っていく。
「俺も浮いてるって気持ちにはなりますけどね。女十二人の中に男が一人ですし、居心地が悪いわけじゃあないですけど、落ち着かないなあって」
「でも、蛇道くんは【CRE8】の盾だって言われてるじゃない。紆余曲折あったけど、ファンのみんなに認められている証拠でしょ?」
「いや~、俺としては、自分のお陰でどうにかなった! みたいには思ってないんですけどね。もう本当にポジションがコロコロ変わるんで、どういう奴かって聞かれると返答に悩んじゃいますよ」
【そうだよな。芽衣ちゃんリア様と絡むとママだけど、たらばやマコトと絡むと弟だし、しゃぼんとだと息子だもんなあ……】
【色んな枢の姿を見れるのは嬉しいことかも】
【これ! っていうポジションがないのがCRE8の魅力なのかもね】
「なるほどね。うちみたいなみんながみんな王子様お姫様じゃあない個性豊かな事務所だからこそ、タレントの様々な魅力が発掘できるってことか。勉強になったよ」
「個性が豊か過ぎて困ることもありますけどね。基本的には楽しい事務所で楽しくVtuberやらせてもらってます」
軽くおどけも入れつつ、いい形で一つ目のお便りへの返答を終えた二人が、続いて二つ目に取り上げる質問を選んでいく。
今度は零がその役目を担い、共有されているお便りフォーラムから気になったものを選んだ彼は、元気にそれを読み上げていった。
「【くるるん! ライルさん! こんばんは! くるるんの記念すべき初男性Vとのコラボに立ち合えて感激です! くるるんの方に比重が傾いている質問なのですが、お二人は男二人でこれがしてみたい! っていうこととかってありますか? よければ教えてください! PS.枢、愛してるぞ!】……なんか最後余計なことを言ってましたね」
「愛されてるね。蛇道くんは人気者だ」
【草】
【ガチホモニキもよう見とる】
【これが蛇道枢のところの名物ってやつかあ……】
別チャンネルでも普段通りの振る舞いを見せるガチホモリスナーたちからのお便りは、優人や配信を視聴している人々の笑いを誘ったようだ。
少し雰囲気がそぐわないかと思ったが、受け入れてもらえてよかったと……そう思ってほっとする零に対して、優人が問いかける。
「それで、質問の答えは? 蛇道くんには、何かやってみたいこととかってあるかい?」
「あ~、えっと、そうっすねえ……なんか地味とか言われちゃいそうですけど――」
この質問の答えに関してはそう迷うことはなかった。
ただ、若干どころかかなり平凡でありふれたものであるために言うべきかどうか迷った零ではあったが、別に問題発言でもないし嘘をつく必要もないだろうと考え、素直にその答えを口にする。
「飯、行きたいっすかね。ラーメン屋とか牛丼屋とか、焼き肉屋みたいなところ」
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