ブックマーク一万件突破記念短編後編・零、飲酒疑惑!
二期生招集!(零を除く)
このエピソードで五部前の短編は終了となります。
また長い間付き合ってくださってありがとうございました。
次の章に入るまでの最後の面白おかしいお話を、どうぞお楽しみください。
―――――――――――――――
「え~……ごほん、ごほん。本日は自分の招集に応えてくださり、本当にありがとうございます。今日は皆さんにとても大事な話があって、こうしてお集まりいただいた次第でございます」
……零の体調不良から始まる騒動から数日後、彼を除く二期生の面々は、柳生しゃぼんこと加峰梨子によってとある通話チャンネルに呼び集められていた。
もうすっかり零の体調もよくなり、彼が元気に配信を行えるようになったことを喜んでいた有栖たちは、急な梨子からの呼び出しに若干の嫌な予感を覚えながらも彼女へと問いかける。
「あの、加峰さん。大事な話ってなんでしょうか? 多分、零くんに関係あることだとは思うんですけど……」
「あ、やっぱりわかっちまいますか。流石は正妻、坊やだけじゃなくって義母である自分の考えもお見通しなんすねえ……」
普通に零を呼ばない時点でこんなことくらいは予想できると思うが、という言葉をギリギリのところで飲み込んだ有栖が黙って梨子の話に耳を傾ける。
半分くらいはしょうもない話のような気がしなくもないが、零に関してはダメ人間なりに本気で大事に思っている彼女のことを信じようとしている二期生たちに向け、梨子は咳払いの後にこう話を切り出した。
「……先日、坊やが体調を崩したことは皆さんもご存じでしょうし、ここにいる全員がお見舞いに行ったことも覚えているでしょう。かく言う自分も坊やが心配で心配で大慌てでお見舞いに行ったわけです」
「ええ、まあ……お陰で零の家のリビングが壊滅状態になりましたけどね……」
「加峰さんと秤屋さん、どうやったっきゃ家の中をあったらに滅茶苦茶にでぎるんだが? わー、わんつか想像がづがね」
「電子レンジの爆破は割と冗談抜きで危ないから、天ちゃんも今後は調理器具の使い方には気を付けようね~。それと、加峰さんもスポーツドリンクくらいはまともに作れるようになった方がいいと思うさ~」
「痛い! 痛い! 止めて、よして、古傷を抉らないで……! まだ癒えきってないの。許してはくれたけど明らかに呆れてた坊やの視線を思い出すだけで心が痛むの……!!」
話を始めると共に、数日前に自分が晒した醜態をツッコまれた梨子が悲痛な呻きを漏らす。
同じくとんでもないやらかしをしでかした天もまた、無い胸を抑えて小さくはないダメージを受ける中、なんとか軌道を修正した梨子が話を再開した。
「は、話を戻すっすよ! そんで、その時に自分、坊やの冷蔵庫の中身を見たんすけど……そこでとんでもない物を見つけちゃいまして……」
「とんでもない物? なんですか、それ?」
「いや~、その~、銀色のアレっていうか、黄金のしゅわしゅわっていうか、なんていうか……」
「んん……? 銀色なんだが? 金色なんだが? どっちなんだ?」
自分が零の家で発見したとんでもない物に関して、遠回しな表現を用いる梨子であったが……そういったことに疎いスイには、その正体が伝わらずにいるようだ。
多少の躊躇いを見せていた彼女であったが、ここでもたついていては話が先に進まないと判断したのか、えいっと覚悟を決めると大声で自分が目にした物を二期生の面々へと伝える。
「ビールっすよ、缶ビール! スープァードゥラーイ的なやつが六缶セットで坊やの家の冷蔵庫の中に入ってたんっす!!」
「え……? ビール、ですか? ビールってあのビールですよね……?」
「何かの勘違いなんじゃあないですか? ノンアルコールのやつだとか、あるいは紛らわしいだけのジュースだったとか……」
「いや、あれは間違いなくビールだったっす! 自分、現実逃避のために酒はよく飲むっすから、あの容器を見間違えることだけはしないっすよ!!」
「現実逃避のだめにお酒飲むって聞ぐど、なんだが秤屋さんの炎上思い出すますね!」
「お願いだからあの件は忘れてください。無邪気に人の心臓をメッタ刺しにしないでください……」
「あ、あの……その件は置いておくとして、もしも、もしもですよ? 加峰さんが見間違いや勘違いをしていなかったとしたら、零くんの家にはビールがあるってことで、ということはつまり――」
幾度となく二次被害を受ける天を放置し、梨子の言っていることが本当だったらという仮定で話を進める有栖。
全ての情報が真実だったらという条件付けの下で結論を出した彼女は、顔を青ざめさせながらそれを言葉として発した。
「零くんが……未成年飲酒をしている、ってこと……!?」
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