過激派全滅!くるめいのボイスは二つで一つだった!

「く、く、く……枢と芽衣ちゃんのボイス、繋がってるじゃねえかっ!!」


 ビリビリと空気が震える程の大声を出した界人が、その勢いのまま背後へと倒れ込む。

 ごつんという音を響かせながら再び床に寝転ぶ体勢となった彼は、その衝撃的な事実に言葉にできないほどの感動を覚えていた。


 そう、そうなのである。

 芽衣の方はデートの待ち合わせに遅刻し、それを謝罪した上で相手からからかわれて恥ずかしがるという反応を見せており、枢の方は待ち合わせ場所にやってきた誰かをからかいながらデートに向かう素振りを見せていた。

 この二つを組み合わせるとあら不思議、これからデートに行くカップルの待ち合わせ場所での会話に早変わりするのである。


 双方の台詞も適切な箇所で区切って交互に流すことで、これまた見事に繋がっており……ただの偶然とは思えない一致の仕方をしていた。

 要するにこの二人のボイスは、両方のクリアファイルを手に入れた者だけが気付くことができる、くるめいのデートボイスということになっているのである。


 遂に外部企業とのコラボでもイチャつき始めたかと、おかしくないようでおかしいこの事態に耐え切れない衝撃を受けた界人は、尊死の向こう側まで到達しながら滝のような涙を流していた。

 そうした後、この驚異的かつ喜ぶべき事態に気付いている者がどれだけいるかと一日中封印していたSNSを解禁して限定ボイスについての情報を検索してみれば、自分と同じく唐突なくるめいに脳を焼かれた者たちが発狂しながら行った投稿が次々と目に飛び込んでくる。


【あびゃああああああ! くるめいあびゃああああああ! ふざけんなマジでやめろ(やめるな)気付いた時心臓が止まったわマジで!】

【くるめい過激派の皆様へ、私服バージョンの枢と芽衣ちゃんのクリアファイルは何としてでも手に入れてください。そして、両方のボイスをよく聞いてください。死ねます。私は死にました。これが現世の皆さんに送れる最後のメッセージです】

【よくやったぞサソリナぁ!! っていうかワレ、くるめい好きのCP厨やったんか!? 最高で最悪な奴が厄介ファンやってるなwww】

【ねえちょっと待ってこんなのってないよ。【CRE8】はくるめい好きを滅ぼすつもりとしか思えないんだけど? こんなの聞かされたら死ぬしかないんだけど!?】

【ご報告・この度、私、黄瀬祈里はくるめいの尊さに触れた結果、無事に人生を終了する運びとなりました。これからは天国から二人のてぇてぇを見守りつつ、遠慮なく赤スパを投げ続けようと思います。メンバーが一人減ってしまいますが、これからも【SunRise】の応援をよろしくお願い申し上げます。くるめいてぇてぇ。過激派やっててよかった】


 とまあ、一部を抜粋しただけでも十分に濃い阿鼻叫喚の図が繰り広げられていることがわかるだろう。

 地獄絵図兼天国の図ともいえるこの様相には事態を把握しきれていない【CRE8】ファンたちもすわ何事かと困惑しながらも大体の状況は理解したようで、どこか達観した様子を見せている。


 こうして自分と同じ反応を見せている同志たちがインターネットの世界に山ほど存在することを見て取った界人は、その感動に打ち震えながら自らも祭りに飛び込んでいく。

 蛇道枢ガチ恋勢&くるめい過激派を隠しもせず堂々と宣言しているアカウント、PマンのSNS垢を起動した彼は、そこで今の思いの丈を注ぎ込んだ文章を打ち込むと、それをネットの海へと放流してみせた。


【周りの人たちの助けもあり、無事にCマートさんとのコラボファイル全種類をコンプリートできました! ボイスも全部聞きました! 既に肉体と魂は分離してます! くるめいを見守る壁になるというCP推しの夢を叶えてくれてありがとう、サソリナ! 今度スパチャ投げます! スパダリ枢にエスコートしてもらう夢を見ましたが、そのポジションは芽衣ちゃんのものだってことをわからされました! 幸せになれよ、二人とも! ご祝儀はいくら? 結婚式はどこでやる? 予定空けておくんで、早めに連絡ください!】


 ここまでのファンたちの反応にも負けない濃いコメントを残し、枢のところのヤベー奴の名前に相応しい反応を見せた彼の下には、そのコメントに共感した【CRE8】ファンたちの声が続々と集まってきている。

 くるめいの過激さに目を奪われていた界人であったが、他のボイスたちも十分に素晴らしい内容であり、それら全部に対する賞賛として声を上げた彼は、拳を天井目掛けて突き上げながらこう叫んだ。


「やっぱ二期生は最高だな!!」


 これからも全力で推し続けよう、応援し続けよう。

 そう強く決意した後、二周目のボイス鑑賞を開始する界人。


 美味い酒を飲みつつ、尊死を繰り返しつつ、その感想をSNSに投稿して実況を行うことで仲間たちと楽しみを共有しつつ、この一時を過ごしていく。

 二期生推しのファンとして、蛇道枢ガチ恋勢として、今日もPマンは賑やかな界隈を更に盛り上げ、同じ趣味を持つ仲間たちと熱い一夜を過ごすのであった。




 ……なお、この過激なCP厨ボイスの制作者である左右田紗理奈は一部のファンの反感を買って炎上し、いつも通りに枢もそれに巻き込まれて炎上したことをここに記しておく。

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