差分を紹介して、その後は……
それぞれの衣装を紹介した後は、差分やこの衣装に付属している細やかな機能の紹介が始まる。
とりあえず、といった形で最初に紹介されたのは、三人ともに実装されている装飾品を表示する機能であった。
『は~い、折角のFPS衣装というか、戦闘服モデルの服を用意してもらったってことで、こんな機能も実装しちゃいました! じゃっき~んっ!!』
芽衣の合図に合わせてその機能をONにすれば、三人がそれぞれ腕を動かして各々の手に武器を持つ。
しずくはアサルトライフル、芽衣はショットガン、枢はマグナム……と、【ペガサスカップ】での活躍によって強い印象を残した武器を装備する姿もお披露目した三人は、騒ぐリスナーたちへと得意気に武器のデザインを解説していく。
【おおおおおっ! しっかり武器も用意されてる!】
【デザインいいね! それぞれの星座のロゴも入ってて、専用武器っぽい感じがいい!】
【小っちゃい女の子たちがデカい武器持ってて、強面なくるるんが拳銃タイプの武器を持ってるっていうギャップが堪らん……!】
『俺も結構気に入ってるんだよな。やっぱ武器を持つのって男としては憧れるじゃん?』
【くるるん、男の子出てますぜ】
【メチャゴツのリボルバー持ってるくるるん、実によき……】
【火炎瓶の実装はまだですか?】
『そっちはちょっと悩んだんだけど、如何せん地味だったから……今後のアップデートに期待ってことで、よろしくお願いします!』
お揃いでありながらもしっかりと差別化されている部分を見せた後は、衣装の差分とその組み合わせのお披露目だ。
フードを被った状態、ガスマスク装備、腕まくり状態、ゴーグル装着等の差分を一つ一つ表示しながら、今度はそれを上手く組み合わせて新しい姿をリスナーたちへと見せていく。
フードとガスマスクを両方装備した完全武装の怪しい集団としての姿をお披露目したかと思えば、今度は腕を捲り、ゴーグルを装着しての活動的な印象を与える服装にチェンジして先程まで隠れていた表情を存分に見せつける。
武器だけでなく、そういった小物部分にも薫子のセンスが表れていて、細やかな部分まで揃えつつも違いもしっかりと表現されている三人の衣装は、背景のストーリーも相まってファンたちから好評を博していた。
『実装した機能についてはこんなもんかな? 三面図とかに関しては後でSNSの方に上げる予定だから、そっちの方もフォロー頼むぜ~!』
『地味に緊張したな……ボク、あんまり新衣装のお披露目って慣れてないからさ……』
『それを言ったら、実は枢くんって新衣装お披露目をまだ一人でやったことないんだよね。いつも誰かと一緒にやってるの』
『えっ、そうなの? なんか意外だな……』
『あ~……言われてみたらそうか。五万人記念は芽衣ちゃんと合同だったし、水着もしゃぼん義母さんに協力してもらって、最後に芽衣ちゃんが登場したもんな……』
『で、今回は芽衣ちゃんとボクと一緒ってことだね。あはは、初めての単独お披露目はいつになるんだろうね?』
【お気付きだろうか? 枢の新衣装お披露目には、必ず嫁の姿があるということを……】
【こう考えるとくるるんって人脈幅広いよね。二期生だけじゃなくって、一期生とも親交あるのは地味に凄い】
【今度のハロウィン衣装も二期生全体でやる可能性あるしな~。ソロでのお披露目はまだ先か?】
新衣装のお披露目が終わったとしても、配信の盛り上がりは治まる様子はない。
にこやかに談笑し、愉快な会話を繰り広げて、三人で繰り広げる雑談をリスナーたちも楽しく視聴している。
『……こういう新衣装を作ろうって話をしてくれたのは枢くんだし、本当に感謝してるよ。男の子の立場からだと言いにくいだろうに、こうして提案して形にしてくれるまで案を練ってくれたことは、本当にありがたく思ってる』
『私も同じ気持ちだよ。別に枢くんを疑ってるわけじゃあないけど、やっぱり私としずくちゃんの間には入りにくいのかなって思っちゃってたからさ。こうして一緒に何かができることが、凄く嬉しい』
『いや、まあねえ。やっぱ折角出会えた同い年のメンバーだし、性別が違うとはいえ仲良くしたいって気持ちは俺にだってあるよ? 芽衣ちゃんたちが思ってるより、割と俺は二人のことを大事に想ってるから』
『……本当に? 枢くん、ボクたちと仲良くしたいって思ってくれてるの?』
『本当ですよ。マジマジ』
『え~? 本当かな~……?』
『芽衣ちゃん!? あれ? 俺って自分が思ってるより信頼ない感じ!?』
『いやだってさあ……ねえ?』
『枢くん、気付いてないの?』
『えっ? 何? 何!?』
珍しく女性陣に翻弄されて慌てる枢の反応を見つめながら、画面の向こう側で芽衣と視線を交わらせたしずくが小さく息を吐く。
気持ち的にも、状況的にも……今がベストだ。
三人でのお出掛けの時には達成することができなかったけど、まだ自分は諦めたわけじゃあない。
リラックスした状態で、話の流れ的にも無理のない状況で……しずくが枢へと視線を向ける。
まだ困惑している彼を見つめた彼女は、自分のタイミングで最後にして最大の試練に挑むべく、少しだけ意地の悪い口調で枢へと言った。
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