嵐が去って、また嵐


【ファーストキルが発生しました。ファーストキルが発生しました。ファーストキルが発生――】


『枢くん、大丈夫!? 回復アイテムは持ってる!?』


『あ、うん。だ、大丈夫。助かったよ、芽衣ちゃん』


 危機一髪、有栖が助けてくれたお陰で窮地を脱することができた零は、安堵のため息を吐きながら彼女へと感謝の言葉を述べた。

 どうしてだか、蜂の巣にされる寸前に祈里がどこか満足気な雰囲気を醸し出していたような気がしたのだが……きっと勘違いだと思うことにした彼は、こうしている場合じゃないとショットガンのリロードを終えた有栖へと言う。


『そうだ、急いで魚住先輩を助けに行かなきゃ! 先輩は今、黄瀬さん以外の【SunRise】チームの2人を1人で相手してるはずで――』


『ああ、大丈夫だよ。こっちも今、終わったから』


『へっ……!?』


 自身の心配に反して、実に落ち着いた雰囲気で返事をしてきた陽彩の声から少し遅れて、画面に羽衣と奈々が撃破されたことを告げるログが流れる。

 2VS1という不利な状況にも関わらず、それを単独で跳ね除けてみせた彼女の実力に驚いた零は、同時に現時点で自分だけが何の役にも立ってないことに気が付いて表情を引き攣らせた。


(うわっ……! うちの女性陣、強過ぎ……!?)


 無事に奇襲を仕掛けてきた祈里たちを撃退することができたのはいいが、女性陣に頼りっぱなしというのは男としての沽券に関わる。

 せめてここからは少しでも役に立つところを見せないと……と不甲斐ない自分自身の活躍に零が悔しさを募らせる中、冷静に状況を分析した陽彩が2人へと指示を出してきた。


『【SunRise】さんたち以外にボクたちの近くに降下してきたチームはいないはずだ。ちょっとヒヤッとしたけど、これで安全は確保できたと思う。まずはこの場所を漁って装備を整えたら、【SunRise】さんたちが使うはずだったランドマークに行って必要なアイテムを確保しよう』


『そうだね。枢くん、私が開けたボックスの中にいくつか武器があったから、それを使いなよ。場所まで案内するからさ』


『あ、はい……』


 陽彩のオーダーに従いつつ、有栖に面倒を見てもらうという何とも情けない状況についつい敬語になってしまう零。

 どうしてこうも自分は締まらないというか、肝心なところで運の悪さを発揮してしまうのかと、泣きそうになりながら今度こそ落ち着いてアイテムを漁り始めた彼は、撃破報告のログが凄い勢いで流れていることに気が付いて目を丸くした。


『な、なんか、滅茶苦茶人がやられてません!? ぽんぽん撃破報告が流れてくるんですけど!?』


『こういう大会ってゲームスピードが緩やかになりがちなんじゃなかったっけ? それとも、私たちが知らないだけでこれが普通なの?』


『ううん、これは異常だよ。名前を見るに、中央付近に降下したチームがいきなりぶつかり合ってる。普通はこんな風になることはないはず、だけど……』


 ログに流れる被撃墜者の名前と、みるみるうちに減っていく残りの部隊数のカウントを目にした陽彩が2人からの質問に答える。

 そして、今しがた流れたキルログに記載されている敵を倒した人物の名前を見て目を細めた彼女は、中央で起きている激戦の様子を想像しながら呻くように呟いた。


『やっぱり暴れ始めたんだね、夕張さん……!』


―――――――――――――――


地味にこのお話で500話だったりします。

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