話し合いが、終わった後……


『それで、話し合いの方はどうなったのよ? いい感じに纏まったの?』


「微妙……っすかね。とりあえずの対応策は決めたんですけど、結局は目立たないように大人しくしておこうみたいな感じになっただけですし、問題の解決なんてとてもじゃないけど無理そうでしたよ」


 夕方、2期生たちが集まる通話アプリのサーバーに参加した零は、そこで待っていた同期たちに本日の話し合いについての報告を行っていた。

 他事務所のVtuberが訪ねてくるのもそうだが、今現在炎上の真っ只中に在る緑縞穂香と夕張ルピアの2人との話し合いの内容について興味津々である彼女らを相手にする零は、ため息交じりにそのことについて話していく。


「【VGA】のメンバーは暫く配信の頻度を落として、主に裏でチーム練習をするそうです。俺たちは逆に個人での練習は控えて、配信をする時は3人揃ってやった方がいいだろうって結論になりました」


『アンチコメントに対処できそうな零くんがいる方が、有栖ちゃんも蓮池先輩も配信をしやすいだろうしね~。考えたくはないけど、ソロ配信をやったばっかりにぶわーって荒らし目的の人たちがやってきちゃったりしたら、いつぞやの時みたいに2人がパニックになって倒れちゃうかもしれないんだもん。その判断は間違ってないと思うさ~!』


「でもやっぱり、目立たないようにするしかないって状況は歯痒いですよ。スクリムへの参加もできなさそうですし、これまで一生懸命頑張ってきたことに正式に制限がかかっちゃうのは辛いっす」


『仕方がねど思います。薫子さんも阿久津さんたぢへの負担考えで、可能な限り安全さ配信がでぎるギリギリのどごろで許可くれだんだど思いますし……』


 これまでのように個別で練習配信をすることをやんわりと禁止され、自分たちの行動に制限がかかってしまったことを悔しがる零。

 沙織やスイが言うように、薫子たちも色々な事情を踏まえた上でこういった判断を下したということは理解しているのだが、やはりそれでも事務所からの通達で行動が縛られるというのは苦しいものだ。


 こういった事態に直面した以上、これまで通りに活動できるとは思っていなかったが……自分たちが大きな不利を背負い続けているという状況は、零の心に焦りを募らせていた。


「ランドマーク争いに参加できないこともそうですけど、練習の回数とかが縛られるとそれだけ他のチームとの差が広がっていくような気になっちゃうんですよね。ただでさえ不利な状況なんだから、少しでもそれを埋めるように努力しなくちゃいけないのにって思うと、どうにも落ち着かなくって……」


『焦ってもどうしようもないでしょ? あんたがそれで妙な真似して、【VGA】の炎上に追加の燃料ぶち込むような事態になったら、それこそ洒落にならないんだから、少しは大人しくしてなさいよ』


「わかってるっすけど……ああ、落ち着かねえなぁ……!!」


 自分が焦ったところでどうにもならないことはわかっているし、無理に動いて逆に事態を悪化するようなことにならぬよう今は静観すべきだということも理解している。

 それでも、【ペガサスカップ】に向けてできる限りのことはしておきたいと考え、PCの前でそわそわと落ち着かない態度を取り続けていた零は、そこではたと七種から聞いた話を思い返した。

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