第3試合、代表者決め



『雪、雪かぁ……! これは、乙女パワーが試されるのでは?』


『ロマンチックな感じがしますけど、秋月さんがやったような方法は使えなさそうですし……』


『いや、これって単純なようで結構複雑よ? というより、雪景色っていうのがどういった場面を指すのかでシチュエーションが大きく変わってくるわ』


『ど、どういう意味だか?』


 第3試合のテーマを確認した女性陣が感想を口々に零す中、難しい表情を浮かべた愛鈴が静かにそう呟く。

 彼女の意味深な言葉に困惑したリアがその真意を尋ねてみれば、代わりにたらばがその答えを述べてみせた。


『雪景色っていうのにも色々なパターンがあるよね~! 今もしんしんと雪が降ってているのか? それとも積もった雪を指しているのか? もっと言うなら、ロッジみたいな場所でただっぴろい平原を眺めながらでもいいし、スキー場だって雪景色といえばその通りでしょ~?』


『なる、ほど……! 言われてみれば、確かにそうですね……!』


『アドリブ力と舞台の設定力が試されるというわけか……面白い! ここは私が代表として出させてもらおう!』


 シチュエーションの指定が緩いが故の幅広い可能性を悟ったメンバーが一様にその解説に頷く。

 そんな中、楽しそうに笑ったつららが大声を出すと、チームの代表者として立候補した。


『うん、まあ妥当よね。こっちのチームの代表は決まったけど、【CRE8】さんの方はどうでしょうか?』


『……なら、こごはわー行ぎます。わーの地元、雪は結構降るんで、そった場面想像するのは得意だはんで』


 自信満々といった様子のつららに対抗するように、リアがふんすと気合を込めて鼻息を噴き出しながら名乗りを上げる。

 確かに地元が東北である彼女ならば雪景色とも関わりが深いだろうと考えた【CRE8】チームのメンバーたちは、やる気を見せる彼女にこの重大な局面を任せる判断を下し、勝負の舞台へと送り出した。


『どうやら、代表者が決まったようです! 我々【SEASON】チームからは冬雪つららが! 【CRE8】チームからはリア・アクエリアス選手が代表としてこの勝負に臨みます!』


『お互い、冬と雪に関わりが深い人だからね~! これもいい勝負になるんじゃないかな~?』


 お互いに冬の季節や雪との関わりを持つリアとつららであるが、その性質は真逆であるように思える。

 クールな年上系美人であるつららと、見た目に反して子供っぽく妹属性が強いリアの対決は、これまでの勝負にも見劣りしない好カードだ。


『ふふふ……! よろしく頼むよ、アクエリアスさん。順番を決める権利は君に譲ろう。先攻後攻、どちらがいいかな?』


『じゃあ……後攻でお願いします』


『了解だ。さくら、先攻は私が受け持つことになった。準備の方を頼む』


『はい! では準備が整い次第、【SEASON】チーム代表である冬雪つららに演技を行ってもらいましょう!』


 大人の余裕を見せ、先攻後攻の順番決めをリアに委ねるつらら。

 リアはその申し出をありがたく受け入れると共に、相手の演技を観察出来る後攻を選択する。


 既に演技プランが頭の中で組み上がっているのか、先行を任されても一切動じずに司会進行役であるさくらへと声をかけたつららは、スタッフが画像を切り替えるのを待ってから、『バイカムⅡ』に向けて演技を開始した。

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