第1試合、対戦カード
『では、ここで改めて今回の勝負のルールを説明させていただきます! 蛇道さんにはご覧の通り、『Contrast』を装着してもらってご自身の心拍数とストレス値が配信画面上に表示される状態になってもらっています。私たちはこの数値の内、心拍数を上昇させ、ストレス値を低下させるような台詞を『バイカムⅡ』を通して彼に聞かせればいいわけですね』
『勝負は合計4回。各回お題を出して、それに見合った代表者をチームから1名出しての真っ向勝負をしてもらうさ~! リスナーのみんなも枢くんと一緒に私たちのASMRボイスを楽しんじゃってよ~!』
枢の呻きを無視して、進行役を務める2人が今回の配信企画についての解説を行っていく。
目に見える数値という、不正のしようがない証拠を競技者だけでなくリスナーたちにも見せつけることではっきりとした勝負の審判をつけようというのは公平でいいことだが、それは枢にとっても誤魔化し様がないということだ。
下手に心拍数を上昇させたり、逆にストレス値を跳ね上げたりなんかした日には、【SEASON】と【CRE8】2期生を推すファンたちから袋叩きにされかねない。
絶望の時が刻一刻と近付いていることを感じ取る枢が恐怖に怯える中、そんな彼を死刑台へと送り込む女性陣は実に楽しそうだ。
男女の間で砂漠と北極並みの温度差が存在している配信ではあるが、リスナーたちは実に楽しそうにこの雰囲気を楽しんでいた。
とまあ、そんな風に着々と配信は進んでいき、ルールの解説とそれに対する談笑が終わった頃、早速第1回戦のお題が発表される。
『では、最初の勝負のテーマを発表します! 今回のお題は……海というロケーションでの囁き、です!! 代表者には蛇道さんと海でデートしているつもりで、彼を悩殺するような素敵な台詞を囁いちゃってください!』
『ああ、いきなり危険だなぁ……! 何が来ても安全なんてものはないんだけど、もう少し手心とかありません?』
海でデートという、あまりにも危険なシチュエーションを指定された枢が半泣きの状態でぼやく。
女性陣はそんな彼を無視して、この勝負に対しての感想を口々に述べていった。
『海……海かぁ……プールとかならまだしも、海となるとちょっとハードルが高いわね』
『イチャつき度を高くする必要があるのは間違いないな……!!』
『聞いてるだけで心臓が痛くなるんですけど、どうにかなりませんか?』
『はいは~い! 作戦会議の間、少しでも枢くんの心を落ち着かせるために、『バイカムⅡ』を通じてオーシャンドラムで再現した波の音をお届けするよ~! リスナーのみんなもこれ聞いて、新型マイクの性能を知ってほしいさ~!』
空き時間を使って製品の性能アピールを行い、透明度の高い音声で波を再現した音声をリスナーたちに届ける出演者たち。
だがしかし、心落ち着く静かな波の音も、枢の緊張と恐怖を和らげることは出来ないでいる。
その証拠に画面に表示される彼の心拍数とストレス値は凄いことになっており、傍から見れば羨ましい状況にいる彼がどれだけの重圧を感じているのかが一目でわかるようになっていた。
『はい、というわけで作戦タイム終了です! 各チーム、代表者は名乗りを上げてください!』
『はいっ! 海といえば夏! 夏といえばこのオレ! というわけで【SEASON】チームからは夏海なぎさが行くぜっ!』
『【CRE8】チームからは私が行かせてもらうさ~! うちなーの海を見続けてきた私の本気、見せちゃうよ~!』
ややあって、オーシャンドラムの演奏が終わってから発表された代表者は、リスナーたちの予想に違わぬ人選であった。
海、というワードに深い関わりのあるたらばとなつきの立ち絵が大きめに表示される中、その対戦カードを聞いたメンバーたちがやんややんやの歓声を送って、場を盛り上げていく。
『奇しくも両チームで最もスタイルのいい2人がぶつかることになったわね……! どっちが勝つかしら?』
『おっぱいの大きさは……花咲さんの方が上っぽいけど、うちのなぎさはやる時はやる女ですから!』
『いやいや、うちのたらばは常にやる女よ? まあ、やらかす女ともいうんだけどさ』
『これはもう、同じ属性を背負う者としては絶対に負けられない勝負だな! 夏キャラ! 元気キャラ! 巨乳キャラ! その全てを賭けて、オレは勝つ!!』
『望むところだよ~! 私だって負けるつもりはないからね~!!』
【揺れる4つのビーチボール……この勝負、絶対に目が離せない!!】
【くるるんはたらばとなぎさのおっぱいサンドに挟まれることになるのか、許せねえな!】
【ASMRボイスよりも胸に興味深々なリスナーが集まるコメント欄がここです】
色んな意味で(というより2名のとある1点から)目を離せないリスナーたちは、第1戦の勝負を固唾を飲んで見守っている。
枢もまた大きく揺れるたらばとなぎさの胸の様子に息を飲む中、似たキャラクター性をした2人の戦いの火蓋が、切って落とされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます