黙ってるのも、そこそこ疲れる


『ふざけんなよ! せめて同じサイズであれよ! うわ、最下位とかマジで心が傷付くんだけど……?』


『話題の切っ掛けが愛鈴さんだから、あんま同情出来ね』


『あーあーあーあー! 最年長なのにサイズ最小とか笑い話にしかならね~! たらばとの格差がやべ~っ!! そもそも年下のリア様との格差も十分過ぎてつれ~っ!』


『カップ数でいえば3づ分の差がぁ……よぐわがねばって、大ぎぇものなんだがね?』


『ぶぐっ、ふっ!?』


 飛び交う女性陣の会話の中でリアがポロリと零した一言を耳にした枢が噴き出す。

 彼の思いを代弁するように、若干声を震わせた芽衣がリアへとおそるおそるといった雰囲気でこんな質問を投げかけた。


『えっ……!? ってことは、リア様Dあるんですか?』


『そうですね、はい』


『は~っ!? 自慢かぁ!? なに食ったらそんなに発育が良くなるんだよ!? あ~っ! うっぜえ! うっぜえ! うっぜえわ!』


『わーの周りだど、わーくれの大ぎさのふとは普通にいますよ? あ、でも、流石に花咲さん並みの人は見たことねえな……』


『お姉さんもお姉さんレベルのおっぱい持ってる人とはなかなか出会ってないからね~! でも、リアちゃんならまだ育つ可能性あるし、追い付かれちゃう可能性も無きにしも非ずさ~!』


『……参考までに聞くけどさ、追い付けるサイズ差なの? カップ数いくつよ?』


 そろそろこの会話を止めさせなければマズいことになるということは、枢にも理解出来ていた。

 既に女性陣4名の内、3名のカップ数が割れ、今まさに最後の1人であるたらばの数値も公開されようとしている状況が良いものであるはずがない。


 だが、しかし……ここで会話を止めさせると、それはそれでリスナーたちからの顰蹙を買う気がしてならないが故に、はっきりと止めることが出来ないでいる。

 ついでに、正直に言えば自分もちょっと聞いてみたいなという思いが頭の中にある枢が自身の行動について迷う中、たらばはさらりと愛鈴からの質問に答えてみせた。


『ん~? Fだよ~! リア様とは2つくらい離れてるね~!』


『え、えふ……? ABCDEからのF……?』


『愛鈴さんとは5つくらい離れてるんだぁ……!!』


『おい、止めろ! 私と比較するんじゃない! 惨めな気持ちになるだろうが!!』


 メインディッシュというか、誰もが知りたかったであろうその情報をさらっと暴露したたらばの発言に凄まじい衝撃を受けた女性陣がリアクションを見せる。

 そんな中、遂に我慢の限界を迎えた枢は、深く息を吸った後で同期たちへと大声で注意の言葉を叫んだ。


『止めろはこっちの台詞だわ! 数万人のリスナーの前でなんて話してるんだよ!?』


『あっ……!?』


 その突っ込みを受けてようやく冷静さを取り戻した愛鈴が、はっとした声を上げる。

 心の中のヤバい、という感情がそのまま溢れてきたようなその声を耳にした枢が溜息を吐く中、コメント欄はとんでもない大盛り上がりを見せていた。


【情報提供感謝。流石は枢だ】

【最後まで一応聞かせてくれるのなwww】

【順番にA.B.D.Fか……格差がヤバい】

【#涙拭けよ愛鈴】

【芽衣ちゃんがBあるのは枢が育てたお陰】

【枢は巨乳好きだから芽衣ちゃんを立派なロリ巨乳に育成するつもりだろ!? 許せんけど許す!】

【1期生にたらばに匹敵する戦闘力の持ち主はいるか!? やはりあの2人だけか!?】

【多分しゃぼんは無理だし、牛蠍コンビだけだろ。でも蠍の方はサイズ的には負けてそう】

【誰かが牛蠍蟹の乳合わせファンアート描いてくれるの待ってます】


『……この有様だよ。お前ら、ここ女子校じゃねえんだからな? 大勢のリスナー+男の俺がいるんだから、ちょっとは話題を考えてくれよ?』


『す、すいません……完全に妙なスイッチが入っちゃって……』


『いや~、お姉さんもうっかりしちゃったよ~! なんだか学校の休み時間に友達と話してる気分になっちゃってたさ~!』


『本当にもう、お願いしますよ……! 気まずさが半端なかったんすから……!!』


『ご、ごめんね。枢くんはちょっとお休みしてもらって、ここからは私たちに送られきたマシュマロを紹介していこうか』


 クソマロに突っ込みを入れるのもそうだが、こうして突っ込みを入れにくい話題を黙って聞き続けるというのも体力を消耗するものだ。

 たかだが数分間話を聞いていただけとは思えない疲弊っぷりを見せる枢の様子に罪悪感を感じた女性陣は、一旦彼を休ませるために自分たち宛てのマシュマロを読み上げ始めた。

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