それはそうとして、実は……
ごめんなさい。お話の区切りを間違えてしまったので、今回ちょっと短いです。
本当は昨日のお話のオチとして書いてあったのに、失敗しちゃったな……
――――――――――
「……色々とありがとうございました。あなたが協力してくれたお陰で、俺も喜屋武さんからの伝言を皆さんに伝えることが出来ましたよ」
「こちらこそ、ありがとうございました。あなたと沙織さんのお陰で、
一方その頃、ホテルの入り口では社員寮に帰ろうとする零のことを祈里が見送っていた。
今回の計画に際して、自分たちの協力者として手を貸してくれた祈里に感謝の言葉を口にした零に対して、自身も感謝の言葉を返す祈里。
お互いに譲り合うようなやり取りを続けていく中、零が苦笑を浮かべながら彼女へと言う。
「お互いに共通の目的があったとはいえ、あなたの協力がなかったら俺はライブ会場に潜入することも出来なかったでしょうし……沙織さんの頼みとは別枠で、俺の方からもお礼を言わせてください」
「……そう、ですか。あなたは、私に対して感謝の念を抱いている、と?」
「ええ、勿論です。沙織さんの要望から外れたことして迷惑かけちゃった部分もありますし、申し訳なくも思ってますけどね」
「なるほど……では、その感謝の気持ちと罪悪感を表すために、私のお願いを聞いてくれますか?」
「へ?」
唐突に、いきなりに、そんなことを言い始めた祈里の顔を目を点にして見つめる零。
こんな形で帰り際に新しい頼み事をされるだなんて予想外だなと思いつつ、恩を返すためにもちょっとしたお願いくらいならば聞いてもいいかと判断した彼が、承諾の返事を彼女へと口にする。
「構わないですよ。それで、何をすればいいんですか? 喜屋武さんに伝言を伝えるとか?」
「いえ、そうじゃありません。この場で解決する、非常にシンプルな頼みです」
そう言いながら、スチャッと音を立てて眼鏡を掛け直した祈里が、両手を後ろに回す。
即座に再びその手を前に出した彼女は、手にしたマジックペンと色紙を零へと差し出しながら……彼に叶えてほしいお願いを口にした。
「サイン、貰えませんか? 蛇道枢より、祈里ちゃんへでお願いします」
「……へ? サイン? 俺の? ってか、蛇道枢の?」
「はい、是非とも一筆お願いします」
「え? ちょ、ちょっと待って。もしかしてなんですけど、あんたって――?」
「はい、リスナーです。あなたの配信、結構な頻度で観させてもらってます」
「うっそぉ!? え、マジで!?」
「マジです。コメントはしてませんけど、デビュー間もない頃からチェックしてます」
「ま、待って待って、ちょっと理解が追い付かない。え? うそぉ……!?」
突然のカミングアウトに驚き、クールな表情のままに色紙とマジックペンを差し出してサインを強請る現役アイドルの姿に唖然とする零。
普通、これって立場が逆なんじゃないかと思いつつ、恩人の頼みならばとそれを引き受けた彼は、生まれて初めてのサインを震える手で色紙に書き記すと、それを祈里へと手渡した。
「あの、こんなんでいいですかね……?」
「ありがとうございます。実に満足です。早速厳重に保管し、家に飾ろうと思います……では、おやすみなさい。本日はお疲れ様でした」
「あ、はい、お疲れ様でした……」
むふーっ、と満足気に鼻息を噴き出した祈里が無表情ながらも嬉しそうにスキップを刻みながらホテル内へと戻っていく。
その後ろ姿を見送りながら、世の中の不思議さを身を以て経験した零は、やっぱり立場が逆なんじゃないかと首を傾げながら帰路に就くのであった。
―――――――――
短い話のついでで申し訳ないんですけど、ちょっとだけ皆さんにお願いというか、協力していただきたいことがあります。
詳しくは本日か明日の夜くらいに投稿する近況ノートの方に書きますので、一読いただけたら幸いです。
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