#10 久しぶり③

藁科に伝わる龍の本来の姿は、このような人型だ。

ある時は龍の、ある時は人の、またある時は剣の姿をする龍。


ただし、人型になるには第4段階を突破する必要がある。

そして結人は未だ第4段階を突破していない。







「お久しぶりです、結人様、咲夜様、茜様。」


黒いドレスの少女はゆっくりと頭を下げる。

人間のような美貌を放つ。街に出ても誰も彼女が『龍』だと気づかないだろう。


「久しぶり、ヨルフィア。元気そうだね。」


「はい、結人さんにおかれましてもお元気そうで何よりです。リエス様も上機嫌でいらっしゃいます。」


「ホント?良かった~最近色々とあって呼び出せていなかったから、怒っているかと思ったよ。」


例え剣の姿でも龍同士であれば、会話する事が可能だ。

結人は直接、リエスと会話する事はできないが、ヨルフィアを通してであれば通話が可能だ。


「我々龍とて生き物、優しくしてあげてくださいね、結人様。それにリエス様は結人様を大変好んでいらっしゃっておりますので、今も早く会いたいとおっしゃっております。」


「面目ない・・・」


「だ、大丈夫ですよ結人さん。結人さんは魅力的なお方ですし・・・」

「そ、そうだよ結君。第4段階突破するために東京校に通うようにしたんだし・・・」

「そうだぞ、結人。俺も第4段階を突破したのは18歳の時だったしな・・・それにお前の嫁さんが強すぎるだけだぞ。」


「う、うん・・・」


「まぁ頑張れよ、結人・・・」



そんな事を話していると一機の小型旅客機が着陸した。

機体の後方にある扉が開くと浮遊魔法を使いながら3人のよく知る人物が下に飛び降りた。


笑顔でこちらに近づいてくる。


「久しぶりね、茜、結人、咲夜。3人とも元気そうだね、安心してよ。」



この人は藁科 琴音


藁科真人の妻でドイツ所属のA級魔法師(元S級魔法師)。

15歳の時に超級UCを単独討伐しA級魔法師となり、17歳の時にS級魔法師となる。

しかし、18歳の時、育児休暇のため、魔法師を突如引退。

その後6年前真人がドイツに渡る際にA級魔法師として復帰した。


序列は25位、『蒼海の舞姫』の二つ名を持つ。

彼女は魔力量が非常に高く、S級魔法師にも劣らない膨大な魔力を保有する。


日本の古参家の1つ橋場家の長女。

結人と同じ黒い目に美しい黒い髪を持つ。



「こんにちは。結人君、茜君そして私の可愛い愛娘咲夜よ~」


「お父様は下がって下さい・・・」


「ガァーーン」


この人は嘉神 優夜


咲夜の実の父親で日本防衛軍所属のA級魔法師。

日本の古参家の1つ嘉神家の現当主。

なお、子供は咲夜しかいないため次期当主の座は考え中らしい。


討伐はあまりしていないため序列はそれほど高くなく95位だが、その力は本物。咲夜同様、火の精霊を使役する。

黒い髪に黒い目をもち、二つ名は『れつの魔人』。



「こんにちは、結人君に茜ちゃん。いつも娘がお世話になってる、今の咲夜があるのは2人のおかげだよ。」


「いえいえこちらこそお世話になっております。」


この人は嘉神 エリーナ


咲夜の母親で、ジルトレア本部所属のS級魔法師。二つ名は『銀の船』

ただし、彼女に戦闘能力は無く、技術的な面で大きな貢献をしている。

9人の守護姫は全て彼女の作品だ。




「じゃあ早速だけど新作のテストに協力してくれない?結人君」


「いいですけど・・・今度は何を作ったんですか?エリーナさん」


「ちょ、ちょっと結人君?エリーナさんじゃなくて『お・義・母・さ・ん』」


「何を作ったんですか?お義母さん」


「ふふ〜んよくぞ聞いてくれました〜今回作ったのは〜こちらです!」


そう決めゼリフを吐きながら先程まて乗っていた小型旅客機を指さすと、機体の荷台が自動で開き、中から大きさ2mぐらいの何かの装置らしきものが出てくる。

彼女は浮遊魔法でこちらに引き寄せるとみんなの前に置いた。



「こちら、第2世代型魔力測定機です!」


「「「はい?」」」


全員の声が重なる。

魔力測定機といったら部屋1つ分ぐらいの大きさだ。それがこんなにもコンパクトになるなんて誰が予想できただろうか。


試しに中を魔法で覗いてみるがさっぱり意味が分からない。



「前作の戦姫シリーズはコストパフォーマンスが悪かったし、大きすぎて持ち運びできなかったからさ、作って見ました~パチパチパチ~」


「えっと~とりあえず試してみてもいいですか?」


こういう新装置に目がない結人が手を挙げる。


「ちょ、ちょっと待と~か、結人君は・・・耐えれないかもしれないし・・・」


「は、はい・・・僕は最後にします・・・」


「じゃあ私やる~」


「じゃあまずそこの白い所に利き手と逆側に手を乗っけて~」


次に手を挙げたのは茜。

言われた通りに魔力測定機に左手で触り自身の魔力を込める。


すると装置全体が赤く光り輝いた。


「よし、そのまま固有魔法もいってみて。」


「は~い。第1段階<龍召喚ー紅玉龍> 第2段階<完全空間掌握>」


身体全身に超高密度の魔力をまとわせる。

そして、魔法陣から龍剣を取り出した。


「ど、どんな感じですか?」


「体内魔力量は約75万、空間魔法適正値2.50、時間魔法適正値0.01、精神魔法適正値0.20、重力魔法適正値2.00、精霊魔法適正値0.01、波動魔法0.20」


「やったー魔力値上がってる~!!!」


「ありがと〜茜ちゃん、いいデータが取れたよ〜」


「お役に立てて嬉しいです、」




適正値

魔法師における強さは魔力操作技術で決まると結人は考えているが、こう考えた科学者もいた。


”才能”


限られた人にしか使うことができない魔法、『特殊魔法』が存在するとすればそれを数値化できるのではないかと・・・


数十年に及ぶ研究が身を結び、世界初の魔法探求者のS級魔法師が誕生した。


その名も『銀の船』


そして彼女は『魔法適正値』の存在を証明する。



特殊魔法を満足に使うことができる『才能』を持つ人間を魔法適正値1.00とした時の数値である。

ほとんどの人が0.10程度で、全く使えない状態だ。

適正値が2.00を超えればその分野に置いて『才能』があると言われ、3.00を超えれば『天才』と呼ばれる。

2.00を超える値を持つ人間は全魔法師のおよそ5%で、3.00を超えるのはその内の0.01%にも満たないだろう。


茜が『無能』の烙印を押され、次期当主の座を退いた理由もこの『才能』が原因だ。

2.50程度ではS級魔法師にはなれないと判断されたからだ。

確かに才能がない人間が上に登った例もある。しかし、それはほんのひと握りで1番良い人でもA級魔法師止まりだ。

自分の進む道を奪った『才能』という理不尽な壁、だが彼女は諦めずに頑張った。

そして、日本最強の部隊”夜明けの光”の副隊長になるまで登りつめた。


彼女の足はまだ止まらない。




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