ss 空の入隊

日本最強の部隊、夜明けの光への入隊が決まった、いや決められた次の日、俺は副隊長である茜さんに連れられて東京にある日本防衛軍本部にいた。



「はい、これ。必要な書類ね。」


「は、はぁ・・・」


渡された資料を受け取り内容を確認する。

まるで当然の事のようにその資料は既に。もちもん俺の名義で。


「あの〜これ既にサインされているのですが・・・」


「あれ?もうサインしてくれたの〜?そんなに早く入隊を決めてくれるなんて嬉しいな〜」


・・・どうやら拒否権というものは無いようだ。

別にエリート部隊である夜明けの光に入る事自体は悪い事だと思っていない、むしろ光栄だ。

だが、夜明けの光の戦闘担当は黒白様をはじめとする日本屈指の実力者達。

そんな化け物達と一緒になって戦っても邪魔になるとしか思えないのだ。


「あの、理由を聞いてもいいですか?」


「理由〜?何の〜?」


「俺を誘った理由です。」


「ん〜簡単にいうと育成かな。今回の人型UCは結君の調べだと最低でも序列100位以内じゃないと倒せないんだって。今後同じようなのが来るかもしれないでしょ?だから今上層部はとっても焦っているの。だから、戦力を強化したの。って言っても空君はまだ戦力に数えられてないけどね〜」


「なるほど」


確かにその件に関しては理解出来た。

あの黒白様が取り逃がす程の相手だ、茜さんの話では状況を鑑みるに高速移動で、黒白様の魔力障壁と結界魔法を振り切ったと聞いたが、だとしても十分な脅威だ。

街中に急に現れて暴れられたらたちまち大混乱になる。

まぁ俺が加わってそれを止める実力は無いし、単なる建前なんだろうけど。


「他に質問ある〜?」


「いえ、特には・・・」


「じゃあ次のところ行こっか〜」


「は、はい」



茜さんと共に日本防衛軍の本部を出ると、彼女が呼んでいたであろう車に乗り込む。

運転席に座るのはいつぞやの執事。

確かツクヨミに乗ったときにいた人だ。

軽く会釈をする。

すると直ぐに出発した。

そして向かった先は・・・


「・・・俺ん家じゃねーか、なんでこんな所に!」


「いや〜一応親御さんへの報告は必要かなってね〜早速入ろ〜」


「・・・は〜」


俺の家は東京都の郊外にある2階建ての普通の家だ。

まぁお金はある方だと思う。某有名銀行の銀行員である父親とその倍以上稼いでいる俺で単純計算で一般家庭の3倍だ。

もちろん、給料のほとんどは家計にしているが・・・

まぁそんな話は置いといてリビングに行くと目を丸くしたお袋がちょこんと座っていた。


「初めまして、日本防衛軍所属、紅と申します。」


「初めまして、空の母です。軍の方ですよね、いつも息子がお世話になっています。」


「いえいえ、いつも息子さんにとても助けられています。」


嘘つけ!初めて会ったの3日前だろ!

とは突っ込まないでおく。

そして、茜さんの口調・・・

別人だ・・・別人としか言いようがない。

こんなん騙される人続出だろ、めっちゃまともな人間に見えるわ。


「本日は、息子そんの配属が変更になったのでその報告に参りました。」


「は、はぁ・・・でも、わざわざどうして我が家におこしになったのですか?」


「それはですね、息子さんが配属される事になった部隊が少し特殊出して・・・」


「特殊ですか?大丈夫ですよ覚悟は出来ています、早く配属先をおっしゃって下さい。夜明けの光以外ならば驚きませんので。」


「あ、その夜明けの光です。」


「へ?」


途端にお袋の目が点になる。分かるぞ〜その気持ち。俺も最初聞いた時はそーなったわ。


「あ、あの夜明けの光ですか?」


「はい、その夜明けの光です。」


「あのツクヨミを保有する夜明けの光ですか?」


「はい、そのツクヨミを保有する夜明けの光です。」


「えーーーー〜!!!」



「と、言うわけでよろしくお願いします。一応この事はあまり公にしないでいただけると嬉しいです。それと、積もる話もあると思うので、ご本人はここに置いておきますね。それでは失礼させていただきます。」


「は、はい。」


茜さんが帰宅すると、お袋は親父に電話をかけ2人で発狂していた。

そして当然のように質問責めをくらい、さらに今日の晩飯は赤飯だった。


そして、自室のベットの中で何故茜さんが家庭訪問を計画したかを悟り、静かに感謝した。






帰りの車の中、茜は1人で笑っていた。


「これこれーこれだから家庭訪問は辞められないんだよねー。あの驚いた顔!も〜最高!」


「茜様、少々おいたがすぎるのでは?本来機密事項である。夜明けの光についての加入を御家族の方に伝えるなんて・・・」


「大丈夫、大丈夫〜こういう祝い事はみんなで共有するもんだからね。それに、明日からは楽しい楽しい特訓が待ってるからさ♪」


「相手はまだ高校生、程々にしてあげて下さいね。」


「分かってるって」

・・・これ絶対分かっていないやつだっ、と山本は1人、頭を悩ませた。




________________________________



予定通り、6月の2日に第3章を始めます。

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