ss 入学式

50話到達!

700ブックマーク突破!



1話からもう一度読み返してみたのですが、入学式を書き忘れていたので今更ながら書いてみようと思います。



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人生初の入学式は思ったよりも緊張するものだ。

隣に座る咲夜も普段の冷静さが欠けていた。

小声でそっと話しかけてみる。


「思ったよりも緊張するね、咲夜。」


「そうですね。ですが、面接の際に色々とあったのでゆっくりとする暇はなさそうですけどね。」


「まぁ確かにあの校長先生はだいぶやばそうな人だったよね・・・あの人最後にゼロ・ノートを見せてほしいいって頼んできたんだよ。」


「私も精霊の皆さんに会わせてほしいって言ってきたんですよ。もちろん断りましたけど・・・・・・どうしたんですか?そんなに慌てて・・・」


「僕、受けちゃった・・・」


「フフフ、結人さんらしいですね。まぁ私はその断れない性格と優しさに惚れたんですけどね・・・」


そういいながら結人に抱きつく。


「ちょっと咲夜!今は入学式の最中だよ。」


「いやなのですか?」


「ま、まぁ嫌じゃないけど・・・」


「ならいいじゃないですか♪私はこうしているだけで幸せなんですよ。」


「あんまり目立たないようにね・・・」


「分かってますよ。あ、校長先生が出てきましたよ。」


「流石に前を向いてしっかりと聞いておこうよ、咲夜。」


「仕方ないですね〜」


そういうと、咲夜は前を向く。そしてこっそりと手を繋いできた。まぁこのくらいはいいだろう。

壇上に上がった先生の話が始まる。


「皆さんこんにちは、国立日本魔法師育成学園東京校校長の天沢です。まずは皆さん、本校への入学おめでとうございます。50年前の"悪魔の日"から人類は未だにこの地球の支配者としての地位を取り戻せておりません。そして、2度にわたる領土奪還作戦も全て失敗に終わっております。ご存知の通り、本校は未来の日本をそして世界を守る為の優秀な魔法師を育成するために作られた学校です。」


校長先生は1度辺りを見回してからもう一度厳しい口調で話し始めた。


「私が求めるのは優秀な人材のみです。本校は世界から見てもトップレベルの環境を整えた学校です。実力があれば魔道具から研究資料までなんでも手に入ります。3つのアリーナと6つのグラウンド、そして成績上位者だけが所有する個人練習場などなんでもあります。皆さんには存分に高みを目指して欲しいと考えています。これからの活躍を期待しております。」


校長先生が話し終わると拍手が飛びかった。

それがやむと司会者が次に移った。


「新入生の言葉、新入生代表 水篠大和君お願いします。」


「はい!」


入学試験の時、話しかけてきた男が席を立ち、前に出る。


「ねぇあれ、やっぱり水篠さんの息子さんだよね。」


「そうみたいですね。新入生の総代に選ばれたって事は水篠さんに似て優秀なようですね。」


「まぁ水篠さんはすごいからね。古参家でもないのにS級に近づくなんて・・・」


「しかし残念ながらあの方がS級魔法師になれるとは思えませんが・・・」



そんなことを話していると、前に立った大和はマイクに顔を近づけると話し始めた。


「本日はこのような素晴らしい入学式を挙行していただき、誠にありがとうございます・・・・・・」


(新入生総代・・・是非とも結人さんの行っている姿を見たかった所ですが・・・目立たないようにしなくてはならないので仕方のない事ですが・・・)


(今のやっぱり水篠さんの息子だよな・・・なんか、あの人の息子さんと仲良くなれる気がする。)




     *




この後も入学式が続き、やがて静かに幕を降ろした。

入学式が終わると結人と咲夜は一旦、それぞれの自宅に帰ることになった。

我が家というのは結人の両親がドイツに旅立った時に購入した一軒家で、東京における結人たちの拠点だ。

拠点と言ってもそこで過ごすのは週に一回あるかないか程度だが・・・


久しぶりの我が家に戻り、必要なものを揃える。

武器の類や戦闘服は既に亜空間の中に、そこで日用品などをアタッシュケースに詰め込む。


さて、どうするべきか・・・

爆弾など危険物の類を持ち込むわけには流石にいかないが、通信機器や身分証明書の類は必要だろう。


すると隣の部屋から助けを呼ぶ声がした。


「結人さん~ピンチです!相談に乗って下さい~」


「うんわかった~ちょっと待ってて。」


自分の作業をやめ、急いで咲夜のもとへと駆け付ける。


「大丈夫か?咲夜!」


「はい、これのことなのですが・・・」


「えっとーこれは?」


そう言って隠し戸のようなところから大量のアルバムを取り出す。

よく見ると写真だけでなくメモリーカードのような混じっていた。

その数は100を超えている。

試しに一冊とり中を見てみると中には大量の僕の写真が入っていた。


というかこの隠し戸なんなんだよ。家主である僕も知らなかったんだけど・・・


「えっとー、一応聞くけどこれは?」


「もちろん私の宝物隠し撮り集です。」


「えっと~それで悩みって言うのは?」


「もちろんこれらをどこに保管しようかなと・・・」


「・・・いや、別にここにおいておけば良くない?」


「よくありません!私は毎日これを眺めてから眠りたいんですよ!」


「なるほど、確かに流石に部屋は別々だろうし・・・。よし、わかった僕の収納魔法に入れといてあげるよ。僕が僕の写真もっているのは変な感じがするけど・・・」


結人は知らない、学生寮の部屋割りが咲夜と同部屋である事を。

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