第二章 絶海とスピリット
#0 プロローグ
ある日、何も無いはずの自宅の縁側に、いるはずの無い少年が座っていた。
それを見て、一瞬自分の目を疑った。
しばらく眺めて見たが、少年はこちらに気がついた様子がみられない。ただ黙って本を読んでいた。タイトルはわからないがとても難しそうだった。一瞬幽霊なんじゃないか、と疑うほどだった。
このままでは埒が明かないので少年に話しかけてみる。
「どちら様でしょうか?」
「・・・・・・」
少女はそう問いかけるが、全くこちらに気がついていない。存在すら認識していないようだった。
相変わらず、見た事の無い本を読んだままだ。
「あなた様は・・・・・・どうしてここにいるのですか?」
「・・・」
竹林に囲まれたこの小さな箱庭に
そもそもこの場所の存在を、嘉神家の存在を知っている人など極めて少ない。
今日はお父様の大切な御友人がおこしになるとおっしゃっていました。という事はこの方はその方の息子なのでしょうか。
様々な憶測が少女の脳内を飛び交う中、その答えを表す人物が走ってくる。
「あーいたいた、結君。お父様がもう行くってよーってあれ?もしかして咲夜ちゃん?久しぶりだね〜」
「こんにちは茜さん。お久しぶりです。」
「元気にしてた?咲夜ちゃん。あ、紹介するね。この子は私の弟の結人、咲夜ちゃんと同い年だよ。ほら結君挨拶して!」
(お父様の御友人というのは藁科真人様の事でしたか・・・でも、藁科様にこのような息子さんがいたなんて知りませんでした・・・)
「藁科・・・結人です。」
少年は手に持っていた分厚い本を閉じるとゆっくりと挨拶をする。それはまるで心ここにあらずという様子だった。
(言われてみれば、納得ができますね。目の周りとかがそっくりです。姉弟というのは本当のようですね。ですが魔力回路が全然違いますね。あまり人に会った事がないから分かりませんが、どうなっているのでしょうか。でも、そんな事より・・・・・・)
「ごめんね、無愛想な子で。この子ちょっと訳ありでね・・・・・・」
「大丈夫です。それよりもう行ってしまわれるのですか?」
「ごめんねー今日は色々と忙しいみたい。また今度来た時たくさん遊ぼうね!」
「はい、お待ちしております。」
「それじゃあーねー。ほら行くよ、結君」
それだけ言うと結君と呼ばれた少年の手を引いて去って行った。
だか、茜の話を聞いても咲夜は油断出来なかった。
長年の修行により咲夜は見ただけで、その者の魔力量や魔力回路、そして魔力操作技術をある程度把握する事ができる。
結人と呼ばれる少年はその全てが、咲夜が今までに見た誰よりも高い存在だった。
それはもちろん、S級魔法師である藁科真人よりもだった。
*
「今日、夢を見ました。」
「へ〜どんな夢?」
「私と結人さんが出会った時の夢です。」
「え?あの時の?」
「はい、とても可愛らしかったですよ。」
「やめて、あの時はほら色々とあってさ。ちょっと、いやだいぶ暗い感じだったから。」
「フフフ、私にとってはいい思い出ですよ。なんせ私の『運命の出会い』ですから。」
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