#26 部活動の決め方③
「私は3年Bクラスで部長の古井 秋葉、こっちは2年Aクラスで副部長の佐々見 作太、我が時間魔法研究会へようこそ!」
「佐々見 作太です・・・」
古井先輩は黒髪の明るい人で、佐々見先輩は青髪の大人しそうな人だった。部員は2人しかいないらしく、結人たちをとても歓迎している様子だった。
「初めまして、1年Aクラスの藁科結人です。本日は見学に来ました、よろしくお願いします。」
見学をしたいと言い出したのは結人と咲夜だったので、結人が代表で挨拶をする。
「わかったわ、紹介するから好きな席に座って待っててね。」
結人たちをテーブルに座られ、テーブルの上に山のように積まれた資料の中から一冊の古い本を取り出す。その本のタイトルは『時間魔法研究会記録帳』というものだった。
「じゃあ説明を始めるね、我が研究会は開校当時からずっとある唯一の部活で、毎日ここで時間魔法や空間魔法について研究しています。昔はとても人気があって人もいっぱいいたらしいけど今は見ての通り2人だけ、部室が無駄にでかいのは昔の名残りかな。なぜ時間魔法研究会なのに空間魔法も扱っているのかというと理由はとっても簡単で、人類が使える時間魔法ってせいぜい周囲の時間をゆっくりにしたり、少し早めたいするぐらいで、発展性がぶっちゃけないんだよね。そこで、時間魔法から1番近いとされている空間魔法の研究を最近はしているんだよ。」
時間魔法というものは軍に席を置いているA級魔法師ですら、周囲の時間をゆっくりにする程度が限界なほど高度な魔法。そんな時間魔法を学生が研究するのは確かに無理難題だ。一方空間魔法であれば、学生でも異空間に人1人分ぐらいの重さのものを収納する程度のことなら可能だ。
また、難しい時間魔法の研究はすでに世界各国で凍結されており、今は準最強である空間魔法についての研究が主流となっている。
「とは、言ってもご存知の通り空間魔法も魔力操作がとっても難しくてね、1kgの物体を30時間ぐらいしか収納できていないんだけどね。」
「いや、全然凄いと思いますよ!私なんて2時間ぐらいで駄目になっちゃいます…30時間なんてすごいと思いますよ。」
「そうですよ先輩、自分も10時間ぐらいが限界ですから…」
魔法師の魔力操作技術を競う時に空間魔法はよく採用される。世界大会の平均が1tの物を1時間ほどで、質量が大きいほどそれは難しい。
【私、1kg程度なら永遠にできますよ、結人さん】
【さすがは咲夜だね!】
【もっと褒めてくれてもいいんですよ、結人さん】
【ここだと恥ずかしいから、部屋に戻ったらね。】
【フフフ、いいでしょう。楽しみにしています。】
結人も1kg程度なら永遠に可能だ。たとえ1tだとしても数年間収納できるほどの魔力操作技術をもっている。なぜなら結人は空間魔法の使い手だからだ。
「まぁでも学生なら1時間ぐらいできれば十分だからね・・・話を戻すと日々の活動としてはここで研究したり本を読んだりしている。ゆったりするならこの部活はいいものだよ。」
確かに、この広い部室を自由に使える上、ゆったりできるこの部活はなかなかいいものかもしれない。
元々この部活に入ろうと考えていたが、この雰囲気をみて決心する。
「どーするんだ?結人。入る?この部活に」
「うん、もちろん入るつもりだよ。」
「なら私も入りますね」
やりました!ちょっと邪魔が多い気がしますが目的は達成です。これで毎日一緒にいられます!
「結人がはいるなら俺も入るかな・・・面白そうだし。大和はどうする?」
「何だか面白そうだから自分も入ろうと思います。」
「なら私も~」
「私もお願いします。」
「と、言うわけで僕たち6人全員入部します!よろしくお願いします。」
結人と咲夜につられて全員入部した。咲夜はまず間違いなく入ってくれるだろうと予想していたが、他のみんなも入ってくるとは思っていなかった。
「入ってくれてありがとうみんな、2年前は私1人、去年も作太君だけだったのに今年は6人奇跡だーー」
どうやら入部を大歓迎してくれたようだった。
さらに彼女は続ける。
「いやー本当に嬉しいよ、3年生が2人いなくなっちゃって・・・部員が3人いないと廃部になっちゃうんだよ。でももう大丈夫!これで安心して卒業できる。」
「いや先輩はまだ3年なんですけど。」
どこからか取り出したハンカチで涙を拭こうとした部長に大和が突っ込む。4年生はいないみたいだしピンチだったのは本当らしい。
結人には分からないが、名前に込められた意味や伝統なんてものがあるのかもしれない。
「まぁ冗談は置いといて、明日から活動を始めるから来るように!じゃあ今日は解散ね。さぁ作太、隅で本読んでいないで必要な資料をまとめて。」
「もう出来てます、先輩」
そこには既に記入された入部届けがあった。入部を決めてからまだ5分も経っていないはずだ、それはまるで本当に時間魔法を使ったかのような驚くべき早さだった。
「ありがと、作太。じゃあ私、顧問にこれ届けてくるね。じゃ」
そう言うと走ってどこかに去っていった。
【結人さん、この部活、何だかとても楽しくなりそうですね、少し騒がしいかもしれませんが・・・】
【そうだね、せっかくだから時間操作魔法作っちゃうかな。】
【完成するといいですね、私も応援します!】
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