魔族国再び2

 次の日、いまだにクラクラしてダウンしているクロハさんを看病していたら、リドリリさんが二日酔いに効くという薬草を持ってきてくれた

「す、すみません、とんだ醜態をお見せしてしまいました」

「いえ、魔王様も問題ないとおっしゃっていますので」

「お姉ちゃん、大変だったね」

「ハクラ、お前無事なの? その、酔った私はタガが外れて本能のままに動いてたはずだけど」

「大丈夫、いつもよりちょっとスキンシップがすごかっただけだよ」

 ハクラちゃんは平静を装っているけど、その顔は真っ赤だった

 何をされたのか知らないけど、口では言い合わらせないことをされたのは間違いない

 真っ白な肌が真っ赤になるってよっぽどだもん

「と、取り合えずお姉ちゃんまだ本調子じゃないでしょう? 魔王がこの部屋を好きに使っていいって言ってたから、今日は寝てなよ」

「ええ、ありがとうハクラ。それにリドリリさんも」

「いえ、お酒が苦手なお客人の前に葡萄酒を置いていた私の不手際です。申し訳ありません」

「そんな、あれはお姉ちゃんがお馬鹿だっただけで」

「そうです、私が悪いのです」

 ああもう自分が悪いんです合戦が始まったよ

 責任感の強い人たちは時折この状態になる。止めないといつまでも続きそう

「ほらほら、まだクロハさんフラフラしてるじゃない。ここはもう黙ってしっかり寝なさい!」

 僕は無理やりにそのやり取りを止めてクロハさんをベッドに倒すと布団をかけた

「せ、精霊様、ですが」

「四の五の言わない!」

「はい、申し訳ありません」

 とにかくなんとか寝てくれたクロハさんを部屋に残して、僕とハクラちゃんは城の中を見学し始めた

 この城、さすが魔王が住むための城だけあって広すぎる

 キーラちゃんの自室はクロハさんの部屋の真正面なんだけど、ここは元々城で働くメイドの部屋だからそこまでは広くない

 本来の魔王の部屋はその上にあって、ここがまた一人だと広い

 だからキーラちゃんはリドリリさんと同じ部屋に寝てるらしいんだ

 幼馴染で親友だからその方が安心できるんだろうね

 で、そのメイドの部屋から廊下を真っ直ぐ進むと大会議室がある。昨日ご飯を頂いた場所だ

 その横に調理場があってたくさんのコックが働いてるんだけど、昨日はリドリリさん一人で料理してたらしい

 まぁリドリリさんの趣味は料理らしいから調理場が近いのは嬉しいのかも

 ちなみに上の階には魔王の部屋しかないんだけど、今は倉庫になってるらしい

 まあ宝物庫だね

 それから下に降りていくとそこは魔物たちはびこる迷宮になっていた

「これって、攻略しないと下に行けないのかな?」

「いえ、ここの魔物は我々のテイムしたものなので私と一緒なら襲ってきません。それにここは通りませんから」

「あ、もしかして抜け道があるの?」

「はい、こちらです」

 リドリリさんは迷宮の横にある本当に指一本が入るだけの穴に指を突っ込むと、カチリと音がして奥にある壁が開いた

 その先は廊下で、進んでいくと下への階段があった

 あ、因みに入る時は外から飛んで窓から入ったから、この道は知らないんだ

 で、その階段を降りたら大きな門のあるロビーになっていて、そこはガーゴイルたちが守護していた

 彼らは結構人懐っこいらしくて、尻尾を振りながらリドリリさんに飛びついていた

 石像だからかなり重いんだろうけど、リドリリさんは意に介さず受け止めてる

 す、すごい

「ほらもう戻りなさい」

 リドリリさんに言われてガーゴイルたちは戻って行った

「ではこちらへ」

 そのまま出口にはいかずに、奥の扉に入った

 そこにはたくさんの鎧が置いてあって、さらにその奥にドレスの置いてある部屋があった

「す、すごいです! 綺麗ですね!」

「うん、こんなドレス着てみたいね」

 華やかなドレスはどれもこれも中世のお姫様のようで、女の子なら憧れるのも無理はない

 ハクラちゃんはいつも着物だから、こういうのを着たことがないみたい

 かくいう僕も着たことないけどね

「どうぞ、どれでもお好きにもらってください」

「え!?」

「魔王様から許可は頂いています。というより魔王様があげたいと申しておりまして」

 それは素晴らしい。こ、こんな素敵なドレスが、もらえるなんて

「じゃあお言葉に甘えて」

 僕はキラキラとフリルが付いたドレス、ハクラちゃんは真っ白なシンデレラのようなドレス

 そしてクロハさんの分はハクラちゃんが選んで、赤いバラの装飾が付いた黒いドレスだ

「ほんとにいいの?」

「はい、魔王様は既にお気に入りのドレスがあるので、それ以外は着ません。ここにあっても宝の持ち腐れ、相応しい方が着られるのがよろしいかと」

「ありがとうございますリドリリさん!」

 ハクラちゃんはドレスを持ってクルクル回ってる

 よっぽど嬉しかったんだろうな

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