黒の国21

 五十一階層

 ここから先に行った人の話を街で聞いた

 ここからはレベルが一段階上がってさらに進むのに苦労するらしい

 まずここは粘着質な床を進まなければならなかった

 大いなる水で進もうとしたら発動しないんだなこれが

 どうやらここは足をとられながら進む仕組みらしい

 それに、以前の階で中ボスだった蜘蛛が普通に歩いてるんだもん

 とにかく前に進むしかない

 蜘蛛は以前よりもあっさりと倒せた

 戦ったことで倒し方が分かってるからかな?


 しばらく進んで分かったけど、虫の魔物だけじゃなくて毒を持つ蛇、本当に電撃を出して痺れさせてくる空飛ぶクラゲ、魔法を封じて来る鳥などなど、こちらを肉体的、精神的に追い詰めて来る魔物が多かった

「相手の耐性もまちまちですからなかなか進めませんね」

 エンシュがうんざりとした表情で僕の方を振り向いた

 まぁ確かにそうだね

 敵はそこまで強くないんだけど、少し触れただけで様々なバッドステータスを与えて来る魔物ばかりだからエンシュの蹴りだともろに喰らっちゃうもんね

 それから苦労してようやく次の階へ

 やっとねっちょりとした床から解放されるよ


 はい残念でしたの五十二階層

 今度は落とし穴ばかりのフロアだ

 落ちれば一気にゲームオーバーで、外に放出されるみたい

 ここはまずアスラムに食虫植物の戦士たちを召喚してもらって先導してもらった

 そのおかげで穴を避けて通れるようになった

 ちなみに魔物は五十一階層と同じで厄介な魔物ばかりだった

 エンシュがグロッキーになってるのでみんなで支えながらゆっくりと、着実に進んで、無事誰もかけることなく進めた

 そういえば、ここで何人か欠けることがあるって言ってたな

 そっか、この落とし穴のせいだったのか

 中の様子は他言無用だからどうなってるのか分からなかったんだよね

「や、やっと階段だよ。わちき、疲れた」

 クノエちゃんも激しく戦ってたもんね

 それにしても、ここで誰も脱落しなかったのはアスラムの食虫植物のおかげだね

 ほとんどの人がファーマーという職を選ばなくてその強さを知らないみたいだから、その有益性に気づけてないんだろうね


 五十三階層は小さな足場を渡っていくかなり怖いフロア

 落ちればもちろんゲームオーバー

 上へと続いている人一人がやっと立てるような足場に飛び乗り続けて次の階を目指さないといけない

 フーレンはフワフワと楽に上がっていってるけど、アスラムはそうもいかないみたいだった

 ここでは精霊の力は使えないからいつもみたいにみんなで飛んでいくこともできない

「こ、これは・・・。空を飛ぶのとはまた違い恐怖心が湧いてきます、ね」

 アスラムは恐る恐ると言った感じで足場を飛んでいたんだけど、とうとう足を滑らしてずり落ちてしまった

 すぐに足場にしがみついて何とか落下は免れたけど、このままじゃ落ちちゃう

 すぐにフーレンが戻ってアスラムの手を掴んだ

 一気に引き上げると二人が一つの足場に危なっかしく立つ形になってしまった

「ふえ~、落ちちゃいます~」

「フーレン、私はいいですからあなたは先に進みなさい」

「でも~、アスラムちゃんが~」

「私は大丈夫です。何とかしますから!」

 フーレンはぴょんと次の足場に飛び乗った

 アスラムはうまくバランスをとって持ち直したみたい

 全員がほっと胸を撫で下ろす

 この調子でなんとか階段までたどり着いた

 ちなみにクノエちゃんはいつもやってる修行に似てるとかで簡単にクリアしてました


 五十四階層から五十七階層

 この四フロアは透明な壁がある迷路で、階を上がるごとに広くなっていた

 そこで思いついたのがアスラムの植物だ

 食虫植物とは違うツルの植物を伸ばしてその全容を探った

 ここの壁は透明

 つまり、伸びていくツルが見える

 要はツルが伸びていくのを見て、入り口から見えている階段まで伸びたツルを追いかければいいのだ

「ここは簡単に突破できそうだね」

 ツルを辿ったことで恐ろしく簡単に攻略できてしまった

 魔物もいないので本当にスムーズにだ


 次なる5五十八階層

 炎と氷の世界

 前半は炎が吹き出る危険な道で、燃え盛る魔物がまた出てきた

 でもこいつらの対処法は分かってる

 吹き出る炎に気を付ければ比較的楽に進めた

 後半は氷の世界で、恐ろしいほどの寒さが僕らを襲う

 僕たち精霊は平気だけどクノエちゃんがやばい

 尻尾が凍り始めてた

「フーレン、あったかいカプセルとかできない?」

「う~ん、そのような魔法はないみたいですね~。あ、ちょっと試してみても~、いいですか~?」

 何か思いついたみたいで、まず風魔法で空気のカプセルを作り出した

 これは水のステージで使った魔法と同じだね

 そこに炎の魔法をかけ合わせると、クノエちゃんを包む暖かいカプセルが出来上がった

 中は炎で温められた空気が充満しているみたい

「あったか~い」

 クノエちゃんも元気になったみたいだ

 氷で出来たゴーレムやシロクマのような魔物、狼のような魔物等々、寒さに強い魔物が僕らの行く手を阻む

 ただ、炎に弱いみたいなのでエンシュ、クノエちゃん、フーレンで十分対応できた

 危なげなくこの階層をクリア


 五十九階層

 ボーナスステージらしい

 看板にゴーレムたちを倒せって書いてある

 フロア全体に何百体とゴーレムが立ち並んでいて、うろうろと攻撃してくる気配もなく歩き回っている

 無抵抗のゴーレムたちを倒すのは少し気が引けたけど、これもクリアのためだ、許してね

 フーレンが魔法で砕き、エンシュの蹴りで破壊し、クノエちゃんが切り刻み、テュネがハープをハンマーに変えて殴り、アスラムが食虫植物を召喚し、僕が・・・。僕は破壊できなかったから見てただけだね

 だって、僕の攻撃魔法はアンデッドにしか効果ないんだもん

 あっという間に数が減っていき、数十分後にはすべてのゴーレムが破壊されていた

「これでクリアなのかな?」

 周囲を見ると、ゴーレムたちが消えて中央に宝箱が現れた

 開けてみると、ゴーレムのメダリオンというアイテムが入っていた

 どうやらゴーレムを召喚できるらしい

 一日一回使用できて、一度に召喚できるのは三体までだからアスラムの食虫植物戦士より断然少ない

 でも、破壊されない限りずっといてくれるらしい

 これは頼もしいかも


 さぁいよいよ六十階層

 そこにいたのはオーガの男の人だった

 オーガは鬼人であるハクラ姫たちと近い種族で、一般には大柄で力の強い種族とされ、鬼人のように流暢に話せないみたい

 でもここのオーガは違った

「ここまで来るとは、なかなかの手練れのようだな」

 ハクラ姫たちが着ていたような鎧を身にまとっていて、頭には兜をかぶっている

 腰に下げているのは大きな刀で、太い丸太でも一刀両断できそう

「俺はオーガのデンノスケ。武人の誇りにかけ、正々堂々、いざ、尋常に勝負!」

 大きな刀を抜くと構えた

 この相手はクノエちゃんにはきつい気がする

 素早さでは勝ってるだろうけど、つばぜり合いとなるときっと力負けしちゃうだろう

「どうした? 全員でかかってきてもよいのだぞ。来ぬのならこちらから行かせてもらう」

 デンノスケさんは刀を天に掲げた

 するとその刀に雷が落ち、デンノスケさんは体に雷を纏った

「テュネ、僕らに強化の歌を歌って。アスラム、植物戦士の召喚お願い。クノエちゃんは素早く動いて翻弄して。フーレンは魔法で攻撃。エンシュはオーガさんの足止めをして」

 僕が指示を飛ばすとみんなそれに従って素早く動いた

 走ってくるデンノスケさんの攻撃をエンシュが足で刀の幅を蹴って逸らす

 その際に生じる電撃によるダメージを僕が回復

 受け流された刀を再び構えなおす間にクノエちゃんが斬りつけて少しずつダメージを与える

 横なぎに来た攻撃はアスラムの植物戦士が犠牲になって受け止め、そこをフーレンが魔法でチマチマと攻撃する

 僕ら全員の強化が終わったテュネは弓で応戦

 少しずつだけど着実にダメージを与えていった

 その時、素早く振られた刀にエンシュが斬りつけられてしまった

 一気に体力は赤になりピンチ

 エンシュを後ろに下がらせて回復魔法をかける僕

 その時ふと先ほど手に入れたゴーレムのメダリオンを思い出した

 よし、物は試しだ

「えいっ」

 メダリオンを使うとゴーレムが三体飛び出した

 屈強ながっしりとした2メートルほどのゴーレムたち

 ただ、顔は埴輪みたいで可愛い

 しかしながらその力はすごかった

 電撃をものともしないようで、しかも刀による攻撃でもさほどダメージを受けていない

 あっという間に形成は逆転して、最後はフーレンの魔法で倒れた

「ぐ、ぬぅ、十人いようと勝てる気でおったが、これは修行のし直しだな」

 デンノスケさんはどうやら回復が速いらしく、すぐに立ち上がっていた

 懐をゴソゴソと探っている

「ほれ、これを持っていけ」

 渡されたのは帯電のお守りと言うアイテム

 これを装備すると、さっきのデンノスケさんみたいに体に雷を纏った状態で戦えるらしい

 ただし一日三回までで、一度の発動での持続時間は五分、次に使えるようになるインターバル期間は1時間

 それを加味しても結構強力だと思う

 攻撃のダメージにさらに追加ダメージが与えれるわけだからね

 強い敵相手に使ってみよう

「そこが階段だ。先に進むといい」

 デンノスケさんは紳士的に僕らをエスコートしてくれた

 彼の故郷では女性は大切に扱うものらしい

 ただ、戦いは別らしいけどね

 お礼と別れを告げて六十一階層へと進んだ

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