第10話 3月15日 騒音
ピンポンピンポンピンポン。
……そろそろ本当にインターホンの電源抜くことを検討している。今日この頃。いや、本当に抜いていい気がしている。それか……検討をしている間にインターホンが壊れるのではないかと思っている。
「……」
珠弓も何回かこの状況を経験したからか。インターホンが鳴ると俺の方を見て「また来ましたよ」みたいな表情をしている。そして今もその表情。
ピンポンピンポンピンポン。
「弥彦ー!居るのはわかってるぞー!早く出ろー!」
「……今日もうるさい奴だな……珠弓。入れていいか?っか多分100%入って来ると思うが……」
「……」
こちらを見ているだけで「わかっているでしょ?」みたいな感じで全く反応なしの珠弓。
「……珠弓。反応なしはやめてくれ。あと、その目。追い返してください。的なお願いの目。目で訴えるじゃなくて。話してくれ」
珠弓はジーっと俺を見ている。あっ、立ち上がった……そして俺に近づいてきて……。
「どした?」
珠弓がさらに近づいてくる。
ピンポンピンポンピンポンピンポン。
その間もインターホンは連続で鳴る。っかあの馬鹿野郎鳴らしすぎだよ。俺が電源抜く前に本当に壊れる可能性も出てきている。まあすぐに俺が出ないから。鳴り続けているのか。だが……光一よ。珠弓の態度を毎回見てるから分かるだろ?めっちゃ避けてるじゃん。気が付けよ。ホント。って、珠弓さん?なんですか?近くないですか?結構近いですよ?どうしました?そのまま近づくと……。
「……」
「……なんだよ。珠弓」
「……お願い」
久しぶりに俺以外の声が聞けた。と、この部屋も思っているのではないだろうか。
「……」
「……」
珠弓が話してから謎な沈黙があったが……。
「……久しぶりに話したな。珠弓」
「……」
「もう黙ったよ。っか近くないか?この距離」
珠弓は俺の目の前で、ちゃんと話しました。はい。さらにぺこりと「お願いします」みたいな感じに今はなっている。そして近くに来過ぎた。という自覚は珠弓にもあったのか。顔をあげてからちょっと照れていた珠弓だった。そしてスッと距離をとった。
ピンポンピンポンピンポン。
っか、あれはどうしよう。俺には光一を追い返す能力っか。多分馬鹿は何言ってもだから……いやね。警察なんやらも1日もたないから。あの馬鹿野郎には。この前もすぐにケロッとしてたし。ホント馬鹿は困る。
ピンポンピンポンピンポンピンポン。
「弥彦ー!珠弓ちゃんも居るんだろ?開けてくれー!」
ピンポンピンポンピンポン。
「……とりあえず。珠弓が拒絶したやらは言ってやるが……わからんぞ?」
「……」
珠弓は頷いているが……これは……すんなりは入れるな。なんだろうか。まあ部屋に居てもこのままインターホンは壊れるまで鳴ると思うので……とりあえず玄関へ移動した。
ピンポンピンポン。
っか、うるさいよ!!何回インターホン鳴らすんだよ!馬鹿だろ。って、馬鹿だったか。ホントもう。嫌だわ。
ガチャ。
ドアを開ける。
「……馬鹿野郎うるさい」
「やっと出てきたか。弥彦。っか珠弓ちゃんは?」
「お前を拒絶した」
「いやいやいや。それはないだろ。絶対に」
「あるよ!お前昨日も来てなかなかの態度取られてたの忘れたか?」
「忘れた。じゃ、入る。オープン。さあ、弥彦早くドアを開けてくれ」
「珠弓が拒絶してるから無理だ」
「大丈夫大丈夫。今日こそ珠弓ちゃんを預かるから」
「意味がわからない。っか、お前がすごいのはよくわかった。だから大人しく帰れ」
「だろだろ。大学始まる前に付き合って、すぐ結婚まで見えた。よし。今日はいける」
「……頭痛くなってきた。会話が成立してない気もしてきたし……」
「ほらほら、弥彦じゃ珠弓ちゃんの相手は大変なんだって。俺がどっか遊びに連れてくからさ」
「……はぁ」
この馬鹿野郎の相手の方がはるかに疲れるんだが。っか珠弓と居て疲れること全くないんだが。
「っか弥彦。早くチェーン外せよ」
光一に言われたから今の状況説明。ドアはチェーンでロックしたまま。少しの隙間で話している。以上である。これ以上の説明はいらないだろう。
「珠弓の許可がないからな」
「またまたー。珠弓ちゃんならいつでも歓迎してくれるっしょ」
「なんで毎回あの態度されてそうなるんだよ……」
ツンツン。
「ひっ!?……びっくりした……どした珠弓?」
「珠弓ちゃんいるのか?居るのか?見えないぞ?弥彦開けろー。珠弓ちゃん弥彦が開けてくれないんだよー。開けてくれー、珠弓ちゃん!」
いきなり後ろからツンツンされるのは心臓に悪い「わかったか?珠弓」と、あとで言っておこう。多分言うの忘れるが。っか、珠弓。良い位置に居るな。俺の後ろでドアからは見えないところに珠弓は立っている。身体が小さいって隠れるのに良いですね。はい。ごめんなさい。余計な事考えました。
「……」
「いやいや、見つめられてもな。うるさいのは帰らないみたいだぞ?そろそろ自分で話すか?」
「……」
それに対してはすぐに首を横に振った。激しく振っている。もう日に日に珠弓の光一を避ける行為。というのが激しくなっている。っか、ならなんでこの生活選んだんだよ……珠弓よ。俺のところのお隣に光一が居るの知ってたよな?
「ちょっとー。珠弓ちゃん?居るんだろ?ちょっと?なぁー。弥彦が開けてくれないんだよ!聞こえてる?ヘルプヘルプー。珠弓ちゃん!」
「……」
外はうるさいが室内は静か。何だろうこれ。
「あの……珠弓。無言貫かれましても……」
すると人差し指と人差し指をクロスさせた珠弓。バツだね。はい。バツです。どういう意味だ?っか、かわいい。
「えっとバツ。だな。光一が?バツ」
「……」
俺が言うと大きく頷く珠弓。
「つまり、早く帰らせろと」
「……」
また大きく頷く珠弓。
「はぁ……ホント大変」
「弥彦ー。何してるんだー。とりあえずチェーンが邪魔だー」
「うるさすぎるから!光一はしばらく黙れー!」
「断る!」
「あー、もう。なんでこんなに大変なんだよ」
バタン。
俺は開いていたドアを閉める。そして……。
ガチャ。
「お、おいおいおい。弥彦ー!急にドア閉めるなー。あと鍵を閉めるなー。ちょっとー!今ガチャっていったぞ。ガチャって」
バンバンバン。
俺が玄関のドアを閉めて再度珠弓を見ると。数回頷いている珠弓が居た。とりあえず……うるさい馬鹿野郎を室内にはいれなかったが……。
バンバンバンバンバンバン。
めっちゃうるさいんですが……。
こんな生活続くのやだわ。ホント。っか光一ドア壊れるからやめろー!
今日のお人形さんは、お願い。をしてきました。
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