第199話 県予選決勝戦⑧
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球場に快音が鳴り響いた。綺羅星が思い切り引っ張った打球がライトの頭を超えて、大きな当たりになった。
「これは痛いね」
スタンドで華菜の横で見ている美乃梨が呟いた。
2アウトからの大きな当たりに塁上のランナーが次々よホームを踏んでいく。
満塁からの走者一掃タイムリースリーベースで星空学園が一気に逆転した。
「ミレーヌちゃん……」
すっかりミレーヌのファンになってしまっている千早が目を覆っている。
綺羅星の逆転タイムリースリーベースは、完全に皐月女子のホームと化したスタンドに絶望をもたらした。
2回以降ヒットが出ていないうえに、綺羅星によって完全に流れを持っていかれてしまった皐月女子に、もはや打つ手はなかった……。
「結局、あの凪原さんの逆転スリーベースが最後まで響いちゃったね」
帰りの市営バスの車内で、美乃梨がぼんやりと言う。
試合は6-2で星空学園の勝利に終わった。これで5年連続、岡山県の代表は星空学園に決まった。
「でも、菜畑さんもよく粘ったと思います。一歩間違えたら、あのままワンサイドゲームになってもおかしくない展開でした。よく6失点で投げ切ったと思います」
「うん。星空学園打線相手に7回6失点なら立派だと思うよ」
ここまで全試合5回コールド勝ちを決めてきた星空学園相手に疲労困憊の状態で7回まで戦えた時点で充分すごいのである。
「ただ、凪原さんのピッチングは間違いなく厄介ですね」
「でも、あれを打たないと、ボクたちは全国にはいけない」
美乃梨の言葉を聞いて、華菜は静かに外の景色を見た。何の変哲もないごく普通の郊外の景色が続いていた。
「遠いなあ……」
桜風学園投手陣から6回で10点も取った皐月女子打線は綺羅星の前では4回無安打9三振と手も足も出ずに、一方的にやられていたのを思い出して、華菜はため息をついた。
今のチーム力では全国を目指すための力は圧倒的に足りなかった。改めて現実を突きつけられて、大きなため息をつく華菜だった。
第1章 力の差 終
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