幕間2 それはまるで恋に落ちたかのような③
華菜が子供の頃から憧れていた元スパローズの湊唯投手と、中学2年生の時に出会ったカッコいい湊由里香投手。苗字が湊の好投手なんて、本当はすぐにでも何らかの関係性がある2人だと考えなければならなかったのかもしれない。
だけど、当時の華菜はその2人の関係性をわざわざ考えるなんて発想には至らなかった。それだけ由里香に対してシンプルに憧れの気持ちを持っていた。
カッコいい由里香のことが大好きだった。
もちろん、由里香とは別に湊唯という、数年前に野球界を去ってから消息を絶ってしまっている伝説の投手に対する憧れの気持ちは変わらず持っているし、湊という苗字が一致していることにもさすがに気が付いてはいた。
だけど、湊唯という投手も湊由里香という投手もどちらも変わらずカッコいいし、憧れの人なんだから、その2人を根拠もなく結び付けるのはナンセンスだと思った。
その2人が何か関係していても、していなくても、華菜の憧れであることには変わりないのだから、そんなことは気にすることでもないと思った。
それに由里香が自分の姉の話なんてこれっぽっちもしなかったから、無関係の人だと思っていた。姉が湊唯なのだったら、きっとどこかでその話も出ただろうから。
だから、女子野球雑誌記者の黒井から由里香が唯の妹だと聞かされた時には驚いた。
当然、ただただ嬉しかった。自分が野球を始めたきっかけの選手の妹に、憧れの気持ちを持っていて、しかもとてもかわいがってもらっているのだから。
訳がわからないくらい嬉しかった。
だから、思わず何も考えずに、いつものように由里香にメッセージを送ってしまった。
『由里香さんのお姉さんって湊唯投手だったんですね! だからあんなにも凄い球を投げられるんですね!✨』
人の心は案外繊細なもので、どこに触れてはいけない感情が埋まっているのかはわからない。
ただ、華菜は純粋に由里香に、自分が大好きな湊唯と同じように、湊由里香という投手が大好きな事を伝えたかっただけだ。
だけど、そのメッセージに由里香からの返信がくることはもうなかった。
その後にどんなメッセージを送っても由里香から返信が来ることはなかった。
何が気に障ったのかは全く分からなかったが、もう二度と由里香が自分に連絡をくれないかもしれないという事実に、華菜は三日三晩泣き腫らしたのだった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます