第81話 7人目の部員②
「ごめんね、ありがとう」
美乃梨が次第に落ち着いてくる。少し恥ずかそうに笑いながら、華菜にお礼を言った。
「美乃梨先輩、言っときますけど、私の気持ちは、初めて会った日からずっと変わってませんからね!」
華菜が向こう側が透けるんじゃないかというくらいしっかりと、美乃梨の目を見つめた。そんな華菜の目を美乃梨もしっかりと見つめ返した。
「美乃梨先輩、野球部に入ってください!」
「ボクが入ってもいいの?」
この期に及んで遠慮がちな美乃梨に、華菜はわざとらしく大きなため息をついて、いつもよりも大きな声で話す。
「何で今までこんなにずーーーーーっとずかずかと、勝手に野球部設立に向けて頑張ってくれていたのに、今更遠慮し出すんですか? こんなときだけ遠慮しないでくださいよ! ダメなわけがないじゃないですか! ていうかもう初対面のときから美乃梨先輩に野球部に入って欲しいって言い続けてたじゃないですか!」
初めて会ったその日からずっと美乃梨を誘い続けていた華菜の言葉は、ようやく美乃梨の心に届いてくれた。
華菜の心からの勧誘を受けて、美乃梨は恥ずかしそうに笑ってから、姿勢を正す。
「ありがとう。そして華菜キャプテン、改めて今日からお世話になります!」
美乃梨が華菜に向かって深々と頭を下げた。頭をあげた美乃梨に向けて華菜が手を差し出す。
「これは?」
「握手です」
「握手って……」
呆れて笑いながらも、美乃梨が華菜の手を握り返した。
「握手は世界共通の対人コミュニケーションの基本らしいですよ。ほんとかどうかわかりませんけど」
「誰が言ってたの?」
「千早です」
「言いそうだね」
美乃梨が笑ったので、華菜も笑い返した。
これでついに部員が7人になった。部員が8人になれば、由里香を勧誘できるから、ついにあともう1人というところまで来たのか、と感慨深くなる。
そして、美乃梨が野球部に入部してくれたのと時を同じくして、怜は部員集めのキーパーソンとなる人物と会っていた。
第3章 集え!野球部員 終
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