第50話 再交渉②
「春原怜……?」
怪訝そうな顔を華菜の方に向けるが、どうしてそこに引っかかったのはわからなかった。
「どうして春原さんがいるのですか?」
「えっと、どうしてと言われても……勝負に勝ったからというか……」
なぜ生徒会長が怒っているのかもわからず、迂闊なことを言ってしまって怒られると怖いので、どう言えばいいのか悩んでしまう。野球対決も勝手にグラウンドを使ってやったことなので大っぴらに言えることではない。
「もしかして怜先輩が入ったら何かまずいこととかあるんですか?」
悩んだ結果、直接聞いてみることにしたら、生徒会長がカカオ100%のチョコを初めて食べた時のような苦そうな表情をする。
「むしろどうして春原さんが入って私が困らないと思ったんですか? まさかあなたがそういう作戦に出てくるとは思ってもみませんでした」
「えっと、それはどういう意味ですか?」
「理事長の娘を部に入れられたら、私が部の創設を認めないといけない、という意味以外に何があると思ってるんですか?」
「理事長の娘?」
華菜は目を丸くした。
「理事長の娘って誰がですか? 怜先輩がですか?!」
華菜が聞き返したら今度は生徒会長が首を傾げる。
「あなたもしかして春原さんが理事長の娘だってこと、今の今まで知らずに野球部に入れていたのですか?」
華菜と千早が困惑しているのを見て生徒会長がため息をついた。
「うちの学校の理事長、春原和子は春原怜の母親ですよ?」
「ええ!?」
そう言われると、容姿端麗でスポーツ万能な上に親が理事長ならばあれだけ怜が堂々としているのも納得ができる。
「そういうわけで、私は残念ながらこの部活動申請用紙を受理しなければならないでしょうね。きちんと顧問の先生まで用意して、部活動設立の要件を満たしているのですから」
「顧問の先生?」
華菜と千早はお互いに顔を見合わせた。顧問の先生なんて用意した覚えがない。
「ねえ、千早。顧問の先生の話、何か怜先輩から聞いてる?」
「ううん、知らない。華菜ちゃんは?」
「知らない」
小声でやり取りをしたが、どうやらお互いに心当たりはないようだ。
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