第34話 火花バチバチ①
「戻ってきましたのね」
華菜と千早が戻って来た姿を見て、怜が笑みを浮かべた。
「さっきの野球部に入らないとは言ってないってどういう意味なんですか? 入ってくれると受け取ってもいいんですか?」
華菜は正直怜とあまり対峙したくはない。だが、これ以上千早が高圧的な態度で話しかけられているのを見るのも嫌なので、千早を庇うような体勢で前に立って話し出す。千早から自身へと怜の矛先を向けるために先程よりも少し語気を強めて会話を進める。
「文字通り、そのままですわ。入るかもしれないし、入らないかもしれない、ただそれだけのことですわ」
華菜をからかって楽しんでいるような笑みを交えさせた話し方。その中にたまに心を見透かしてくるような鋭い目つきが混ざる。
怜がどういう人物なのか、話せば話すほどわからなくなる。
「野球というスポーツに興味が無いわけではないですわ。ただ、はっきり言ってまだ部員2人の非公認の野球部から真剣さは感じられませんわね。おまけに1人は犬のお面をつけたふざけた子。そんな人たちを信用できませんわ」
華菜は千早の前に立っているため、千早の表情は見えない。それでもどういう表情をしているのかは想像がついた。
千早の方に顔は向けず怜の方を見たまま、背中の後ろで千早の手を握る。温かい千早の手を握ると華菜の心も温かくなり、勇気が湧いてくる。
「私たちは絶対に部員9人集めます。千早は人見知りだから初対面の人と話す時に恥ずかしくてお面をつけているだけで、ふざけているわけじゃないです。私たちは真剣そのものです」
華菜が毅然とした態度で怜に返答した。
「なら真剣である証拠を見せてくださいませ」
「証拠?」
「ええ」
「どうやって見せればいいですか?」
「そうですわね……」
フフフと怜が笑った。
「1打席勝負なんてどうでしょうか? きっとあなたが本気かどうか見られる良い機会になると思いますわ」
怜が挑発的な笑みを浮かべた。
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