禁忌:知ってはいけない

「色々な禁忌を調べていくと、知ってはいけない話っていうのも出てくるんですよ」

コーヒーというよりは黒い砂糖汁の有様である。

私はそれを啜りながら、言葉を続ける。


「まぁ、知ってはいけない話なんて、世にありふれてますけどね。

 芸能人の裏側とか、社会の仕組みとか、

 ハッピーに暮らしていくには知らない方がいいことのほうが多いんですよ」

例えば、この黒い砂糖汁が身体にもたらす悪影響もそうだ。

当然、私はそれを調べようとは思わないし、知ったところで忘れるだろう。

勿論、コンビニスイーツのカロリーだって調べない。


「好奇心は猫をも殺す……それでも人間の好奇心って奴は、

 そういう話に興味津々ですよね、私もそうです。

 だから、知ってはいけない話について今からお話しようと思います。

 と言っても、聞いたら呪われるような話ではなく、

 おそらく、健康に対する被害も出ないでしょう」

私は黒砂糖汁を飲み干す。

値段相応のコーヒーだったものも、ここまでやると愛おしい。

ただ、流石にお冷のグラスにも手が伸びる。


「じゃあ、話しますよ」

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