(4)

 溶かしたバター、砂糖、卵黄、ホットケーキミックス、ココアパウダーを用意、それをすべて混ぜる。

 ラップで包んで冷蔵庫で寝かせる。

 生地を伸ばして型抜き。

 百八十度のオーブンで十分焼く。

 デコレーションをする。

 ――以上、チョコレートクッキーの作り方(某動画サイト調べ)。


 最近は放課後家に帰ってからのお菓子作りも少なくない。おかげで少し手際が上がった気がする。


 母親が夕飯の支度を始める前に生地を作り、寝かせている間に晩御飯を食す。ついでにおいしいクッキーの作り方を聞いてみるも、有力な情報なし。満面の笑みでまたもやタブレットを手渡され、ほんとこの人は何でこんなに料理が上手なのに一切のアドバイスがないのかと頭を抱えながらおかずを食べる。んまい。


 おいしいご飯に舌鼓を打った後、諸々を終わらせていざクッキー作り。


 生地を伸ばして、どんな形にしようかと頭をひねる。


 藤島の好みの形なんて知るわけもなし、というかクッキーの形に好みとかあってないようなもんだしだけどだからといって適当に作るのも何となく違うようなまったくもって悩ましい。


 どうしようかなぁなんて考えて、ふと思いつく。猫。猫にしよう。そういえばこの前神社に参拝したし。黒猫とチョコレートクッキー、色もちょうどいいし。よし決まり、ということで伸ばした生地を猫型に成型していく。


 天板にオーブンシートを敷き、並べる。オーブンに入れて焼く。おいしくできるだろうか。というか、おいしくできてくれないと困る。なぜなら告白の時に渡すからだ。ひゃーなんてこと告白なんてそんな恥ずかしい、なんて言っていられる時間は強制的に無くされて、決行しなければいけない事実というか決心だけが残された。まったく真央のやつめ、という悪態の中に少しの感謝も込めておく。割合としては七・三くらい。成功したら一・九くらいに変えてあげよう。


 オーブンが焼き終わりを告げる。残るはデコレーション。つぶらな目とチャーミングなひげを目指して描いていく。いびつな形をしたものは端に避けて、味見用として簡単にデコる。そういえば最初のころは熱いまま口に放り込んで火傷しかけたなぁ、なんてそんなに昔の話じゃないはずなのに思い出す。兄も道連れにしようとしたことも含めていい思い出のような気がする。思い出というほど遠い話でもないしあくまで気がするだけだけど。


 冷めた頃合いを見計らって一つ味見をする。……うん、まあ成功かな、と自分にオーケーサインを出して出来がいいものを選んでラッピングする。


 さて、これで準備はできた。あとは当たって砕けるのみ。いや砕けたくはないけど。ともかくもうやるべきことはない。


 できれば、おいしいと言ってくれますように。すべては明日。頑張ろう。

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