第三十三話 突如はじまる問題
突然ですけれど、こんにちは! もしくはこんばんは!
ぼくの名前は
初めましての方は初めまして!
この話においては、とある事情から強兄さん側からの物語は支障がありそう、とのことで僕がナレーション? を務めさせていただきますね。
お耳に障る点も多々あると思いますが、なにとぞよろしくお願いします。
それにしても、強兄さん、なにか企んでいる様子ですね。
それがなんなのか、どうしてこうなったのか、考えながら読むも、ただ読み進んでいくのも、そっとこのお話を閉じて、二度と開かないようにするのも、すべてはあなたの自由です! ぼくは最後の対応が一番おすすめです!
では、今回のお話。
ぼくは
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日曜日のこと。ワールドワイドファイターズポストの事務所に、強兄さんとすいさんが姿を現しました。
「やあやあ、お二人さん。今日も来たんだね~。掃除してく?」
三穂田さんがデスクに寝そべりながら彼らを出迎えます。
「いえ、今日はコレを」
そう言って強兄さんが取り出したのは、彼のスマホです。
「写真を撮らせていただきたいな、と」
「ボクをかい? いや~まいったな~。そんなにボクかっこいいかな~」
「んなわけないじゃろがい! 世界が選ぶ被写体メンズ部門ナンバーワンはヨッシーじゃろがい! もちろんプリティガール部門はワッシじゃろがい!」
「いや、みぽりんも撮るよ?」
「マジで?!」
「マジで」
「マジマジのマジで?!」
「マジマジのマジで」
強兄さんは三穂田さんに近づきながら、カシャリ、カシャリとシャッターをきっています。
「おっと、ごめんね~。一応、試験中だからさ~。二メートル以内は近づかないでね~。
「二メートル、ですか」
「うん。そこらへんからならオーケーだと思うよ」
「へえ……」
「ヨッシー、ワタシも撮ってよ! レンズに収めて! 今、このときのワタシは今しか撮れないのよ!」
ポーズをとるすいさんを無視して、強兄さんはカシャリ、カシャリ……。
と、突然、強兄さんは三穂田さんに向かってダッシュしました。
「おっと~?」
強兄さんが手を伸ばすよりも先に、三穂田さんの姿は隣のデスクに移っていました。
「逢瀬くんもずいぶん食わせ者だよね~」
「みぽりんほどじゃあ、ないですよ……っと」
ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべ、強兄さんは再び三穂田さんに飛びかかりました。
ですが当然、三穂田さんの姿はその場から消えてしまいます。今度は室内に三穂田さんの姿がありません。
強兄さんはあせらずに、隣の部屋に続くドアを開きました。すいさんも続きます。
隣の部屋では三穂田さんがベッドに寝転んでいました。
「ふぁあぁ……。こりないねぇ~」
あくびをする三穂田さんをよそ目に、強兄さんは、またもカシャリ、カシャリ……。強兄さんは部屋の入り口から、室内をしきりと撮影しています。
撮りながら……そーっと、そーっと近づいて、ベッドのすぐ横の……テーブルの上のカウボーイハットに手を……。
「あぁ! まぁた消えやがって、みぽみぽりんがッ!」
テーブルの上の帽子も消えています。
「ふぁあぁ……今日こそは仕事しようと思ったんだけどな~」
隣の部屋から三穂田さんの嘆きの声が聞こえます。またオフィス部屋に移ったようなのです。
「じゃあ、今日は思う存分、仕事できますね」
オフィスの部屋に戻ると、強兄さんは言いました。
「えっ、ヨッシー……もしかして、もう終わり?!」
「うん、終わり」
「あれ~あきらめいいんだね~。どうしちゃった? やる気なくなっちゃった~?」
「そんなことはないですよ、また来ますね」
そういうと強兄さんは、
「なんだ~。じゃあ今日はもう寝ようっと~」
仕事をしてください。
それから月曜日、火曜日、水曜日と、強兄さんは学校の放課後時間、三穂田さんのもとを訪ねてきました。日曜日と違い、この三日間ともはかなり遅くまで強兄さんは粘りました。ですが、三穂田さんから星を取ることはできません。
木曜日の夕方。
「やあ~。おいでやす~。今日も遅くまで挑戦してくのかな~?」
「はぁ。そのつもりでは、います……」
どこか疲れているような様子の強兄さん。連日通って成果なしですから、ムリもありませんよね。
「えぇ~! 今日は早くおウチ帰ってご飯作ってよ、ヨッシー!」
「だから、それは……ちょっとキツイって何度も言ってるじゃんか……」
すいさんが強兄さんの腕のスソをつかんで訴えます。言ってるそばから、すいさんのお腹がグゥ、と鳴きました。
「うわぁぁん、もう夕ご飯抜き四日目だよ~? 昨日なんか体育祭だったのに……。朝ごはんとお昼だけじゃあ身が持たへん、持たへんで~」
ワンワンと、漫画のような泣き方で空腹を訴えるすいさん。この元気、二食でも結構もってそうですけどね。
「じゃあ、ウチのご飯、食べていきなよ~」
「ご飯?! いいの?!」
すいさんは顔を輝かせます。
「といっても、カップめんの買い置きしかないけどね~」
「っしゃあ! みぽりん、見直したっ!」
「あの……。僕もいただいていいですか?」
「うん。あ、もちろんセルフでね~。僕のも作って。激辛キムチ麺」
強兄さんは三穂田さんに教えられたところからカップ麺を取り出すと、お湯を入れるだけですが、三人分の夕食をちゃっちゃと作りました。
「足らんわ」
見事にラーメンカップを空にして、すいさんが言い放ちます。
「よっぽどだったんだね~。好きに残りも食べていいよ~」
「はぁ……すい。お前なぁ……」
「だって三日夕食なしだよ、ヨッシー! ワタシの大腸菌は、もっと……もっと……って欲してるんだよ」
そういうと彼女はお腹を出して、ポン、とひと叩きしました。
「すい……君、なんかポッコーってしてるな、お腹」
「幼児体型で悪かったなーっ!!」
「あと、そういうこと人前でするなよ……。で、何個食べるの?」
「あと三……いや、四は行けますぜ、ダンナ」
「お前……ちょっとは遠慮しろよ?」
チラリ、と強兄さんは三穂田さんの様子をうかがいます。
「いいよ、食べなよ~。騒がれるほうがメンドくさいし~」
「ホラ! みぽりんオーケー、略してミケが出たよ!」
「……あの、じゃあ、僕ももう一個いいです?」
「オッケ~」
「なんだよ、ヨッシーもお腹減ってんじゃん! 我慢しなくて……いいんだよ?」
結局その日は最初の宣言に反して、二人は早々に切り上げて、お腹いっぱいの
「明日こそは仕事しなきゃな~」
仕事してください。
翌金曜日。お昼時。ワワフポ社事務所内。
「ふぁぁあ。そろそろお腹空いたな~。メンドくさいけど、これって人間の生理現象なのよね、っと……」
三穂田さんが事務所の流し台下の棚を開きます。ですが、そこにいつもあるはずのカップ麺ストックはひとつもありません。
「あちゃ~。昨日食べさせ過ぎちゃったか~。今夜、逢瀬くんたちに買ってきてもらおうかな~。あ、でも今日も来るとは限らないし~……」
三穂田さんはのっそりと窓辺に寄ると、外の様子をうかがいます。
「あちゃちゃ~。外は雨か~。じゃあ、明日でいいや~。一日くらいはもつでしょ~」
本当、小学生でもわかります。こうなってはいけない、という大人の
デスクに腰を下ろすと、三穂田さんはテレビのリモコンボタンを押しました。
『……以上のように今週は
「あちゃちゃちゃ~。明日も雨か……。仕方ない、行くか~」
三穂田さんは事務所を出ると、雨の中をカサもささずにノンビリと歩いて行きます。
カサを差すのもメンドくさいんでしょうか。ダメだ、この人。
カップ麺を買い込み、事務所に戻ってきた三穂田さん。ずぶ濡れです。
「う~ん……。着替えるか、着替えざるべきか……。どちらがメンドくさいか……」
早く着替えてください! カゼ引きますよ!
「そうだよね~。いくらなんでも着替えないのはね~」
三穂田さん、僕の声、聴こえてるんですか?! だったら早く着替えて!
と、三穂田さんの姿が一瞬消えて、また現れました。
あら不思議、もうスッカリ濡れたパーカーではなくなっています。でも、おんなじ色、おんなじパーカーだ。何着持ってるんですか?!
着替えると、三穂田さんはカップ麺を作って食べました。
「ふぁあ。お腹いっぱいで眠いね~。今日は久しぶりに外出もして疲れたし、もう寝よ~」
仕事してください!
三穂田さんは濡れた帽子を帽子かけにかけると、そのまますぐそばのベッドにドサリと身を横たえました。
翌土曜日。
「ふぁあぁぁ。朝だ~。今日こそは仕事しよ~」
ひときわ大きなあくびをすると、三穂田さんはテーブルの上からカウボーイハットを取り、ポンと頭に乗せました。
ぼく、この人が仕事してるところ、一度も見ていません。ぼくはしっかりした大人になろう。
お昼の十一時頃、強兄さんがやってきました。今日はすいさんだけでなく、ウチの姉ちゃん、ソフィーさんも一緒です。
「やあやぁ。今日は大勢だね~って……あれ? どこ行くの~?」
強兄さんは入ってくるなり、三穂田さんを見てニヤッとすると、そのまま隣の部屋――三穂田さんのプレイベートルームに行ってしまいました。
まもなく、強兄さんが出てきます。その手には、三穂田さんのカウボーイハットが。
「みぽりん、星は取りましたよ」
三穂田さんに向かって、強兄さんはキラキラと輝く星を掲げてみせました。
「あれ~?」
「えっ、取れたの? 強」
「さすが強くん。今夜、あけとくからね」
「ゴルァ! 金パツゥ! 乱れんじゃねぇ!」
三穂田さんは自分の頭の帽子を脱ぐと、その横にくっつけられている星を手に取りました。
マジマジとそれを眺めたあと、三穂田さんはニヤリと笑います。
「やられたね~。まあ、もうわかったけど、ボクからタネあかしなんてのはメンドくさいから、それはそっちのみんなでおねがい。ボクはひと眠りするよ~」
さてはて、強兄さんは一体どんなカラクリで「星取り」を成功させたのでしょう? 次回にその
以上、ナレーションを笹原拳一でお送りしました。
三穂田さん、仕事してください。
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