お題:責任
「深海のグロリアⅢ、いよいよ明日ですなー」
「あたし予約しちゃった!」
「私も特装版ポチったから財布がぺったんぺったんよ」
夕方のファミレスでフライドポテトを挟んで楽しそうに会話する二人の女子高生。誰が見ても仲良しの友達と答えるであろう二人である。
「……ってちがぁう!」
突如、片方の少女が机を叩いてうなだれた。
「どうしたの?」
「あ、あたしはもっとファッションとかネイルとかの話をするキラキラした女子になりたかったんだ。なのにどうよいま! ゲームの話しかしてない!!」
「楽しいからいいじゃん。カッカしてると人生損ですわぞー」
「じゃかしい! 中学デビューに失敗して歩んだ灰色の三年間を乗り越え、あたしは万全を期して高校デビューに臨んだんだぞ! スカートを膝下ギリギリまで短くした! めちゃくそビビりながら髪も染めた! どんな話振られても返せるようにいろんなジャンルを勉強した! ……なのにあんたが入学式で!」
『あ、それ深海のグロリアのキーホルダー! ディ・モールトなセンスしてるねー』
「なんて言うからぁ!」
「なんかすんまそん」
少女は言いたい事を吐き出して心が落ち着いたのか、一息置いて話し始めた。
「あんたとの話が嫌いなわけじゃないの。けど、結局あたしって何にも変わってないんだって思うと不安になって……」
「さよか」
「ごめん。あんたに責任なんてないのにね。……ほんと、ごめんね」
心底申し訳なさそうに下げられた頭を、少女はなんでもないとばかりに撫でた。
「謝るのは私の方だな。漫画アニメゲームの話にそっちが合わせてくれてるって、考えたこともなかった」
「合わせてるっていうか、別に無理はしてないし……」
「けど、ファッションの話がしたいのも本当なんだろう。私はゲームと同じぐらいファッションが好きなお前が好きだ」
「ちょ、好きってそんな……」
「だから責任持って、私もファッションを勉強しよう」
少女は宣誓した。真剣な表情に、疑いの余地などない。
「教えてくれないか。この素人に、お前の好きなことをな」
「……オッケー。じゃ、まず雑誌買うわよ!」
テーブルの大皿に残っていたポテトを頬張ると、少女は善は急げとばかりに伝票を手に席を立つ。
「疾風迅雷かお前」
「あったりまえでしょ! 流行りからあたしの趣味まで、全部教えたげる!」
駆け出す二人には、たしかな信頼が見えた。これから先、何があっても心がつながっているのだと。
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