お題:公園
5月、憂鬱な午前9時。学校を何となくサボって、公園で現実逃避していた時だ。
「ヲ?」
僕は宇宙人に出会った。
自分でも受け入れ難いことだ。公園の砂地に空から何かが落ちてきて、ドデカいクレーターを掘った。その中心に、半透明のクラゲのようなモノがいたのだ。
声も出さずに立ちすくんでいると、ソレは弦楽器を弾いたような音を発しながら何度かのたうった。僕にはその挙動が、起きあがろうとして失敗しているように見えた。
少しすると、そいつがのそりと体を上げて僕を見た気がした。すると、あっという間にそいつは体の形を変え、人間に近い形状を取った。髪はゼリー状で指先はまだ半透明だが、間違いなくソレは知性ある生き物の形を取った。
「ゆ、夢だよな……?」
「ヲー?」
そいつはようやく立てた幼児のようにあぶなっかしく歩み寄ってきた。思わず後ずさるが、
「ヲっ?」
「あぶねっ!」
そいつが転びそうになったので反射的に抱き止めてしまった。
「つ、冷たい……お前、な、何なんだよ……」
「ヲー、ヲ」
こっちの不安など素知らぬ顔で、そいつはふにゃりと笑って、プルプルの髪の毛を触手のように動かして僕の頭を撫でた。
「……言葉も通じてないかもしれないけど、早く帰った方がいいぞ。捕まったら解剖とかされるし、多分」
「ヲー?」
「とにかく、僕はもう行くからな。じゃあな」
厄介ごとから文字通り逃げ出すが、しかし。
「ヲ、ヲー」
「ついてくんなよぉ……」
「ん? きみ、高校生かな?」
曲がり角でばったり警察官と出くわした。僕がヤバいと思ったのは、後ろをトコトコついてくる宇宙人が見つかることだ。
「やばっ」
「ヲー」
「な、なんだこああああああ」
宇宙人が髪を伸ばして警察官の頬に触れたかと思うと、警察官が感電するように震え始めた。
「おい!?」
「ウム、今日はイイ天気だ! 天気がイイ!」
目を回した警察官は、曇り空を褒めちぎりながら僕らのことを忘れて歩いて行った。
宇宙人がにっこり笑う。
「ヲっヲー」
僕はヤバいのに懐かれたらしい。
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