第5話 塔の主人
ステータスボードとは自分の能力を書き記した魔法的表記らしい。
通常は他人に見られることはなく、本人にしか
僕のステータスはこんな感じになっている。
名前:ロウリー・アスター
特殊能力:|塔のマスター(レベル2)
魔法:
身体能力:自己治癒力
エクストラギフト:オートシールド
タワー構築・タワー1階部分構築、部屋作製
保有ポイント:12
作成可能な部屋の種類(カッコ内は必要ポイント)
寝室(4)、書斎(4)、居間(4)、食堂(4)、キッチン(5)、食糧庫(5)、トイレ(5)、バスルーム(7)、ゲストルーム(4)、遊戯室(5)etc
これによると僕は自分の塔を作ることができるようになったらしい。
もっとも、作製可能なのはまだ1階部分だけか。
それじゃあ塔というよりは
でも、本当に塔をれるのなら、住むところには困らなさそうだ。
この小屋もアネットに返すことができる。
これっていいことずくめじゃないか!
場所はこの小屋の隣でいいな。
ラッセルなら文句を言うこともないと思う。
それに、あとで文句を言われても大丈夫だ。
なんと自分で建てた塔は出し入れが自由なのだ。
いや、すごすぎる能力だよね。
もう日暮れも近いけど、とても明日まで待ちきれない。
さっそく、小屋の隣に塔を建ててしまおう!
小屋を飛び出した僕は先ほどアネットと勝負した広場にやってきた。
ここはかなり広いから塔のを建てるスペースはじゅうぶんにある。
地形の補正なども自動的にやってくれるようなので安心だ。
目を閉じて精神を落ち着ける。
『心が乱れていてはクソみたいな魔法しかひねり出せない』とは師匠ラッセルの教えだ。
大きく深呼吸して、体内の魔力循環を感じ取って、ためらいなく発動!
広場に巨大な魔法陣が浮かび上がったぞ!?
周囲の大気がビリビリ震えているけど、これは大丈夫だろうか?
大爆発とかを起こしたりしないよね?
うおっ!?
今度はまばゆい光を放ちながら魔法陣が高速で回転し始めた!
どうなるんだろう、これ……。
5分以上も魔法陣は回り続け、塔の基底部を作っていた。
草木や石などの余分なものが取り払われ、大地が少し盛り上がっていく。
やがて、なだらかな台形の小山ができて整地は完了したようだ。
きっと水はけを良くするためにこうなったのだな。
整地が終わったら今度はバチバチと光が弾け、石の壁が積みあがっていく。
これはかなり大きい!
塔は六角形で、幅は縦横50mにもなるようだ。
一人で住むには大きすぎるサイズじゃないか。
最後に一際まばゆい光を放って僕の塔は完成した。
正面に小さな
裏口や窓、内部の間取りなどは後から自由に付け足せるようなので、とりあえず入ってみることにした。
「うわぁ……」
思わずため息がこぼれる。
だって塔の中は何にもなくて、がらんどうの空間だったんだもん。
そのうえ天井までの高さは10mもあり、見上げてしまうほどだから余計に広く感じてしまうのだ。
天井からはシャンデリアがいくつも下がっていて内部は明るかった。
このままでは集会場みたいで、人間が住むための場所って感じではない。
さっそくポイントを消費して、人間の住居らしく改造していこう。
まずはどんな部屋を作ろうか?
住むところとなるとやっぱり寝室は外せないよな。
いやいや、考えてみればトイレを作る方が先か?
寝るだけなら今の状態でもなんとかなるけど、トイレはどうしようもない。
現在の保有ポイントは12ある。
寝室は4ポイント、トイレは5ポイントだから両方作ることが可能だ。
よし、塔の中を三つに分けて、奥に寝室とトイレを作ってしまおう。
考えがまとまると僕はさっそく行動に移った。
間取り自体を変えるのは簡単なので、とりあえずは大胆に塔の中央に壁を設置した。
のちに奥側をさらに真ん中で二つに分ける。
これで入り口すぐが広間、奥の左側を寝室にして、右側をトイレにした。
どれどれさっそくトイレを見てみるか。
「なんて開放的なトイレなんだ……」
我ながらとんでもないものを作ってしまったものだよ。
小劇場くらいだだっぴろい部屋のど真ん中にポツンと便座があるのだ。
なんとも落ち着かない場所になってしまったな。
もっとも、こんなもんは慣れもあると思う。
『アップルパイとおっぱいは大きい方がいい』とは我が師ラッセルの言葉だけど、トイレだって大きい方がいいよね……、たぶん……。
それにこのトイレはちゃんとした水洗トイレだ。
どこに繋がっているかは謎だけど、水で流すタイプではある。
手洗い場も便座のすぐ横にあるし、せっけん、トイレットペーパーホルダー、掃除用具などもそろっていて、一般的なトイレより数十倍は清潔だった。
しかもこのトイレは(レベル1)だ。
今後もポイント消費でレベルが上がり、それに伴ってグレードアップするらしい。
トイレのレベルアップってどういう風になるんだろうね?
僕には想像もつかないや。
「なるほど……わかりました」
せっかくトイレに来たのだから、ついでに小を済ませて僕は寝室に向かった。
「ううーむ……」
寝室を見た僕は、やるせない
だって寝室もトイレと同じで、だだっ広い部屋の真ん中にベッドが置かれていたから。
こういう間取りにした僕が悪いんだけどね。
品質は悪くないシングルベッドで、暖かそうな毛布もかかっている。
ベッドわきにはサイドテーブルがあり、その上には魔法で灯るランプも用意されている。
こちらもレベルが上がれば、ベッドがクイーンサイズとかキングサイズに進化するのかな?
ステータス画面を見ると、
■所有している部屋
トイレ:レベル1(4)
寝室:レベル1(4)
と、書いてある。
つまりポイントを4消費すれば更なるレベルアップができるみたいだ。
しかし、どうして突然『塔の主人』がレベルアップしたのだろうか?
思い当たる節がないのだけど、強いて言えばアネットと知り合ったことかな?
考えてみれば『塔の主人』の能力に目覚めたのは、ラッセルとの関係が親密になった時期に重なる。
果たして関係があるのかどうか……。
気が付くと辺りはすっかり暗くなっていた。
森の入り口にあるポストに入れておけば本人に届くようだし、夕食の前にラッセルに手紙でも書くとするか。
アネットのことも知らせておいてあげよう。
ラッセルへ
無事にカンタベル中央学院に到着しました。男子寮の空きがなかったので、ラッセルの土地に塔を建てさせてもらいました。いいよね? 邪魔になるようならどかします。
ラッセルの小屋で娘さんであるアネットに会いましたよ。僕と同じ学院の新入生だそうです。本人は否定していたけど、お父さんに会いたがっているという印象を受けました。一度、王都まで来てはどうですか?
僕の方はなんとか学院生活をスタートできそうです。これもラッセルの紹介状のおかげかな? あらためてお礼を言います。ありがとう。
そろそろ秋の気配がしてきました。季節の変わり目は体調を崩しやすいので気をつけてください。まあ、ラッセルなら回復魔法で簡単に治しちゃうか。ハゲは治らなかったのにね。
それではご自愛ください。
ロウリー・アスター
書き終わるとすぐに、僕は手紙をポストに投函した。
うまいことラッセルに届いてくれればいいな。
ラッセルのことだから返事なんてこないかもしれないけど、元気にやっていることを伝えられればそれでいいと思った。
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