会議、会議!会議!!
200.邦奈良の現状 ハンターギルド編 1
今日からしばらく会議編です
退屈かも知れませんがご容赦を……
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マスタールームの扉をノックして入室許可をもらい入っていくとサブマスターのユーリウスさんが待っていた。
あまり休めてないんじゃなかろうか、この人。
「ああ、きてくれたんですね。予想よりも早かったですが」
「これでも買い取りスペース裏に寄ってきたから多少時間を食ったんだが」
「裏にですか? なんでまた」
「昨日、吾輩たちが指導した子たちがいてにゃ。その子たちの倒したモンスターがレベルに見合ってなかったのにゃよ」
「……鷹の子は鷹ですか」
「そこまでじゃないわよ。ただ小さい頃から元Bランクハンターに修行をつけてもらっていたみたいだから筋がいいだけで」
「筋がいいところにあなたたちの指導が入るんです。化けてもおかしくないでしょう」
「そんなに指導は上手くないんだけどなぁ……」
「フートさんの指導が一番恐ろしい……いえ、とりあえずこの話は置いておきましょう。まずはハンターギルドの現状説明から行います。立ち話で済ませられるような内容ではありませんので、どうぞおかけください」
ソファーを勧められたので俺たちはそこに座り、ユーリウスさんも席に着く。
一呼吸置いてからユーリウスさんの説明が始まった。
「先ほども言いましたが、まずはハンターギルドの状況からご説明いたします。……といっても下位ランクのハンターたちがこぞって都に戻ってきており、さらに高ランクハンターに再度弟子入りしたいと要望を出しているというのは聞きましたか?」
「ゲーテから聞いたわ。皆が戻ってきている理由は後天性魔法覚醒施設目当てね?」
「はい。皆さんがいない間に王家直轄領の大規模な街には後天性魔法覚醒施設が建設されております。できれば各ハンターが身近な街に散ってくれればよかったんですが……」
「都まで戻ってきてしまったと」
「そうなります。都の設備が一番最先端の技術を使っているだろうという噂を聞いて戻ってきたらしいですね。……まったく、ハンターが出所のわからない噂を信じて都まで戻ってくるとは嘆かわしい」
「にゃはは……気持ちはわからなくもないがにゃ」
「ともかく、都にあるハンターギルド4カ所はどこもパンク状態です。高ランクハンターたちはそれぞれモンスター狩りや上位魔物狩りに出ているので弟子入りしたくても不可能なんですがね」
「まあ、そんなところだろうな。で、この状況はどう収めるんだ?」
「Dランクハンターについては問答無用でクエストを発行し狩りに赴いてもらいます。今更彼らが誰かの下について学ぶことなどないでしょう。新しい魔法を覚えたのなら自分たちで試行錯誤して戦術に組み入れるべきです」
「正論だにゃ。残りEランクとFランクについてはどうするにゃ?」
「それについてはまた後ほど。学校運営にも関わってきますので」
「うん? なんでハンターギルドの話が学校運営……フェンリル学校の問題になるんだ?」
「まあ、いろいろとありまして……ともかくそちらの話はいったん棚上げしておいてください」
「気になりますが……わかりました、保留にしておきます」
「助かります。一応、Eランクハンターについてもある程度以上の実力があれば僻地の魔物狩りに行ってもらいますが」
「……ああ、そう言うところの魔物って冒険者はあまり狩らないんだっけ」
「不人気ですね。では次の問題に移ります。……すみません、フートさんたちが礫岩の荒野で狩ってきた魔物素材を多めに卸していただけませんか?」
「にゃ? 財政難なのかにゃ?」
「ええ、少々。……いまは問題になっていませんが下位ハンターが集中してしまったために支出が増えた一方、大口の収入源がなく半年後には困ったことになりそうなんですよ。……まあ、これは冒険者ギルドも同じようなので頭が痛いのですが」
「そういうことなら問題ない。俺たちが使う分以外は全部放出してもいいよ。それから、今回の修行で手に入れたハーミットホーン素材をいくらか融通するからそれをオークションにかけて資金にしてくれ」
「……助かりますが……いいのですか?」
「ぶっちゃけ、これ以上お金いらない……」
「個人でお金を持ちすぎるというのも困りますねぇ……」
「まったくだ」
「卸してもらう素材ですが一度にもらってしまうと値崩れや痛みなどが発生する可能性があるのでその都度でもよろしいでしょうか?」
「構わないぞ。ここまでくるだけならそんな手間じゃないし。買い取りスペース裏でおっちゃんにも同じようなことを言われたから」
「助かります。この先、国に支払う税金などで固まったお金が出ていってしまうので少々懐具合が厳しくなるのです……」
「ちなみにユーリウス。ブルクハルトの許可は取っているのかにゃ?」
「はい。フートさんたちから適正な値段で素材を買い取って売りさばくなら問題ないだろうと」
「わかった。それで、ほかには?」
「ハンターギルドの現状はこれくらいでいいでしょう。ここからは午後のギルド連合における予備知識としての情報です」
「わかったわ。……まずはあの大聖堂がなくなっていることについてね」
「大聖堂は教会勢力……といいますか枢機卿の立ち会いの元、教会の魔術師によって破壊されました」
「……穏やかじゃないですね」
「まったくです。事前に通達もなにも出しておらず、一方的な演説を行ったあといきなり破壊したと連絡を受けています」
「本当に穏やかじゃないにゃ」
「もちろん大聖堂周囲には多くの無関係な一般市民などもいたわけで……巻き込まれて多くの負傷者を出しました」
「……それって犯罪じゃないのか?」
「もちろん犯罪です。なので国の警備隊が取り締まろうとしたのですが警備隊に対してもお構いなく攻撃して彼らは魔導船に搭乗、故国へと引き揚げたそうです」
「うわぁ……よくやるわ」
「枢機卿いわく『神の教えに背いたこの国の民はもはや人間ではない』そうですよ?」
「ひどいことだにゃ。……そういえば『負傷者』と言っていたのにゃが死人は出なかったのにゃ?」
「枢機卿たちの動きが不穏だったために国の騎士や魔術師などが見張っていたみたいなのです。なので一般市民に死者が出ることはありませんでした」
「と言うことは騎士たちには?」
「……騎士たちは重症レベルですみましたが枢機卿たちを取り締まろうとした警備隊に死者が出ましたね」
「本当にめちゃくちゃね」
「はい。……まあ、私たちにとっての話はここで終わらないのですが」
「どういう意味ですか?」
「爆発音を聞いたフェンリル学校の生徒たちが教師の引率の元、様子を見に出たそうなんです。そうすると多くの負傷者が出ている事態に遭遇して……」
「教師はなにを考えているにゃ……」
「止めようとしたらしいのですが子供たちを止めきれず、引率の元でならと許可を出したらしいです」
「はぁ、話が読めてきたぞ。それで救援活動に尽力したわけだな」
「はい。フェンリル学校の生徒は強弱の差こそあれ、ほぼすべての生徒が回復魔法持ちです。回復魔法が使えなくとも医療の知識を持ち合わせています。大聖堂爆破事件の時にはすでに調合ギルドや錬金術ギルドも加盟しており、生徒たちはポーションなどの回復薬を作っていました。それらを学校からかき集めてきて治療してまわったんですよね……」
「ユーリウスも知っているのかにゃ?」
「ええ、私もギルドに残っていたハンターやギルド職員とともに救助活動にあたっていましたから。必要な治療を手早く行う、見事なものでしたよ」
「それはいいことですにゃあ」
「うーむ……」
「どうしたんですか、フートさん?」
「いや、いいことをしすぎたんじゃないかと」
「その懸念であたりです。元々フェンリル学校はスラムの子供たちの保護兼教育施設として認識されていました。それが大聖堂爆破事件以降、急な災害にも対応できるだけの人材を育てられる学校と認識が変わってしまったのです」
「それはいいことなんじゃない?」
「……うーん、いいことばかりじゃありませんにゃ」
「どういう意味よ、ネコ?」
「あそこはユーリウスが言ったとおりスラムの子供たちを育てるための施設にゃ。なのに、そこで育った子供たちは大人顔負けの技術と知識、精神力を持っている、それが証明されてしまったにゃ。そうなるとどうなるかと言うと……」
「……一般市民からもフェンリル学校に子供を通わせたいという希望者が殺到しているのですよ……」
「……それは困りましたね」
「はい。受け入れ可能か不可能かで言えば、教師陣を増やすことができるのならなんとかなります。ですが……」
「アグニの件があると」
「そうなります。今日の会議、最初の議題はこれでしょう。間違いなく理事長判断を求められますので考えておいてください」
「ああ、わかった。……ちなみに、邦奈良の都は怪我の治療をどうやって行ってるんだ? 求道者はいないんじゃないか?」
「はい、都には求道者がおりません。なので治癒所をもうけてそこで回復魔法士が交代交代に治癒を行っております」
「ふむ、そこにはフェンリル学校の生徒も加わっているな?」
「推測通りです。放課後だけですが学校で腕のいい回復魔法士と医療に関する知識が深い生徒を組み合わせて派遣しております。国からも回復魔法士を派遣されてきていますが、医療知識はまだ詳しくないようでありがたがられてますね」
「邪魔になってなければいいんだ。……やり過ぎな気もするんだが」
「国にも教本として医療知識の本を提供しています。なにやら魔法学科の教師たちが秘匿していたり、調合学科や錬金術学科から提供された大昔の本らしいのですが妙に保存状態がよく」
「それって赤の明星が関わっているわよね」
「おそらくは。そして知識が途絶えている理由も赤の明星が関わっているなら説明がつきます」
「どういう意味だ?」
「……教会勢力は自分たち以外勢力に加わった赤の明星、およびその知識や技術を闇に葬ってきたようなのですよ」
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