169.対ハーミットホーン戦 3

「さて、本日のフォーメーションを説明するにゃ」


 翌朝、食事をとった後に本日の戦い方についてブリーフィング開始だ。


「いつものフォーメーションじゃないの?」


「基本的にはいつも通りですにゃ。ただ、角を折られたことでハーミットホーンの行動パターンに変化が起こりますにゃ」


「どう変わるんだ?」


「まず攻撃方法から当然、突撃攻撃がなくなりますにゃ。代わりに頭の叩きつけや飲み込み攻撃、牙での噛みつき、体での踏み潰しがありますにゃ」


「それって、角を折らない方がよかったんじゃないですか?」


「角を折らないと延々と空中からの突撃攻撃が飛んできますにゃ。それから、ときどき魔法攻撃も飛んできてやってられませんにゃ」


「うん? 角がないと魔法攻撃もこないのか?」


「こないのにゃ。角が魔法の制御器官を兼ねているために、あそこまで根元からポッキリ折れてしまえば魔法なんて使えませんにゃ。というか、空を飛ぶのもかなり遅くなっているはずにゃ」


「やっぱりツチノコが空を飛ぶには魔法が必要なのね。納得だわ」


「飛行系の魔法は羽が制御をつかさどっているのである程度は問題ないのですがにゃ。加速は角の力がないと難しいようですにゃ」


「……それで、角折りを最優先したのか」


「そういうわけにゃ。角さえ折ってしまえば脅威は激減にゃ」


「それでレベルが高いのにこっちを優先したのか」


「はいにゃ。……まあ、地龍王様の加護という想定外のパワーアップもありましたがにゃ」


「あれなぁ。かなり変わってたからなぁ」


「そういえば詠唱句もなかったにゃ」


「なくてもいけそうだから試してみたら問題なかった。詠唱句ってこの世界の理にこいねがうためのものなんだが」


「超越存在というのはわからないものですにゃ。それで、フォーメーションですが、アヤネ殿が先頭、ゼファーがその補助、フート殿がその後ろなのは変わりませんにゃ」


「そこまではいつも通りなのね」


「変わるのはここからですにゃ。吾輩とミキ殿、テラはその斜め後ろについてサポートに徹しますにゃ」


「あら、攻撃には参加しないの?」


「飛ばれている間は相手の間合いですからにゃ。地上に落ちてからが吾輩たちの出番にゃ」


「ふむ、つまり俺がアヤネに守られながら撃ち落とせばいいんだな?」


「はいですにゃ。羽をある程度傷つければ飛行できなくなりますにゃ。そうすれば、地上を這いずるしかなくなりますにゃ」


「ハーミットホーンって地中に潜るのではなかったですか、リオンさん」


「砂の中なら潜れますにゃ。でも、ねぐらは洞窟で岩場にゃ」


「なるほどです。それなら遠慮なく攻撃できますね」


「そうなりますにゃ。ちなみに、ストーンランナーのように硬くもないですし、やたらと柔らかくて物理攻撃を軽減するなんてこともないですにゃ。頑丈ではありますが物理攻撃は普通に通りますにゃ」


「わかりました。無理をしない程度に頑張ります!」


「その意気にゃ。ともかく、まずは地上に引きずり落とすところからですにゃ」


「わかったよ。じゃあ、行こうか」


 事前打ち合わせも終わったし、車に乗り込んでねぐらに向かう。

 そして、ねぐらの中を進み、その最奥部に当たるハーミットホーンのねぐらにつくと……。


「また寝てますね……」


「眠って魔力の回復に努めてますにゃ。可能性は考えていましたが、これは好機ですにゃ」


「で、どうするのよネコ」


「フート殿、片翼に1回ずつタイタンズクラッシュ、お願いしますにゃ」


「それが開戦の合図だな」


「はいですにゃ。それでは始めましょうかにゃ」


「わかった。……踏み砕け! タイタンズクラッシュ!」


「GYUAAAA!?」


 左右両方の羽に向けてタイタンズクラッシュを放つ。

 これ一発で羽が使えなくなってくれるとよかったんだけど……。


「KISYURU……」


「やっぱり一発じゃだめか」


「想定内ですにゃ。ここからは数で押していきますにゃ。レベルは多少低くてもいいので連発できる魔法をお願いしますにゃ!」


「わかった。【灯火の幻影】からのアースニードル多重起動!」


 幻影の効果で自分自身の詠唱回数を増やし、アースニードルを多重起動する。

 すると……。


「これまた、立派な槍の雨を用意したわね……」


「これを受けることになるハーミットホーンに同情します……」


「フート殿、これで終わりかにゃ?」


「数十回同じ弾幕を連射できるぞ?」


「哀れにゃ……」


「……ともかく、行け!」


 空に浮かんで呆然とこちらを見ていたハーミットホーンに対し、アースニードルの雨を叩きつける。

 一発一発のダメージは非常に少ないが、数が膨大であり逃げ場もない。

 こちらの狙いが羽であることを理解しているのか、羽を体の後ろに隠してアースニードルから守っていた。


「考えが甘い! タイタンズクラッシュ!」


 本来、灯火の幻影を使っているときは高レベル魔法を使えないはずなのに、なぜか使える気がしたので使ってみる。

 すると、一発だけであるが確かに魔法が発動し、ハーミットホーンが背中に隠した羽を直撃した。


「GYAOOOON!!」


「えげつないわね、地龍王のスキルって」


「でも私たちももらいましたよね?」


「深く考えない方がいいにゃ。相手は精霊王様よりも上位のお方なんですからにゃ」


 タイタンズクラッシュを背中側から受けたことでバランスを崩し、ハーミットホーンはたまらず羽を広げる。

 そして、そこにアースニードルの雨が突き刺さっていく。

 ときどき、ブレス攻撃で反撃してくるが、アースニードルで威力の大部分を削がれ、アヤネのスキルで守られるため被害はまったく出ていない。

 ……竜狩りってこんなに楽でいいんだっけ?


「そろそろ落ちてくるはずですにゃ!」


「私たちの出番ですね!」


「はいですにゃ!」


「じゃあ、景気づけに派手なのいこうか! タイタンズクラッシュ!」


 戦闘開始時と同じように両翼に向けてタイタンズクラッシュを撃ち込む。

 すると、羽が見るも無惨にボロボロになりハーミットホーンが地上へと墜落した。

 気絶でもしたのか、ハーミットホーンの動きは非常に鈍い。


「さあ、ここからが地上戦ですにゃ! 気をつけながら気合いを入れていきますにゃよ!」


「はい! ……そういえば、ハーミットホーンって毒とかは持ってないんですか?」


「麻痺毒を噴出することがありますにゃ。……地龍王様の加護で無効化されるはずですにゃが」


「でしたね……いきましょうか!」

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