168.対ハーミットホーン戦 幕間
幕間だし普段入れない地の文によるキャラ描写を追加してみた!
さあ、どちらが読みやすい?
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「いやはや、今日は上手くいきましたのにゃ」
食事の席でそう切り出したのはリオンだった。
リオンは角折りが一日で成功して持ち帰ることができたことに大変ご満悦のようである。
「まあ、確かに上手くいったわね。私、何もできなかったけど」
対照的に不機嫌気味なのはアヤネだ。
結局、何も仕事がなかったのが不満らしい。
「盾役の仕事がないのはいいことですにゃ。過去にハーミットホーン狩りで命を落とす人間は何人もいましたからにゃ~」
「そうかもしれないけど、不完全燃焼だわ……」
「まあまあ、明日以降は出番がありますよ」
アヤネをなだめるのはミキ。
実際、明日以降はアヤネに頑張ってもらわないと俺たちが危うい。
「それもそうね。明日は全力でぶつかってみせるわ!」
「いい気合いですにゃ」
「そういえば、明日以降も夜にねぐらを襲うのか?」
ふと疑問に思ったことを聞いてみる。
あの角がなければ、ハーミットホーンは狩りがしづらいだろうし……。
「いえ、明日以降は昼間に戦いを挑みますにゃ」
「何よ。昼間の砂漠で戦うの?」
アヤネの追求に、リオンは首を振って否定する。
「いえいえ、そんな真似はしないにゃ。ハーミットホーンは角を根元から折られると、しばらくねぐらから出歩かなくなるにゃ」
「つまり、いつ行ってもあの場所にいると」
「そういうことですにゃ」
「謎生態ね」
アヤネが一言毒づくと、苦笑いしながらリオンが補足説明を加える。
「ハーミットホーンの角は狩りに必要なものにゃ。それ故にある程度再生するまでは狩りに出歩かないのにゃ」
「ふーん。ちなみに根元から折れなかった場合は?」
「残った角の長さにもよりますが……再構築されて細長い角になりますにゃ」
「やっぱり謎生態ね」
アヤネはやはり謎生態で結論をつける。
ただ、いままでのモンスターも大概謎生態だったぞ?
「それで、根元から折られた場合、食事とかはどうするんでしょう?」
食事、という観点から質問をするのはミキ。
ハーミットホーンは狩りをする魔物なんだよな……。
そう考えると、食事が必要……なのか?
「結論から言いますと、ヤツに食事はいりませんのにゃ」
「食事がいらないのに狩りをしているんですか?」
「ヤツにとって狩りは、吾輩たちにとっての魔物狩りといっしょ。自身が成長するためのものですにゃ」
「そうなんですね……モンスターって勝手に成長するんだと思ってました」
ミキの言葉に、リオンはまた苦笑いを浮かべる。
「まあ、勝手に成長するヤツもいますにゃ。そういうヤツは定期的に間引かれますがにゃ」
「そうなんですね。強いハンターさんもいますね」
「ちなみに。吾輩たちもアグニの一件が片付けば、その『強いハンターさん』の仲間入りですにゃ」
うん?
「どういう意味だ、リオン?」
「簡単ですにゃ。基本的にギルドからの討伐指示を優先的に片付ける、ギルド指定のハンターになるんですにゃ。皆さんにはその資格が十分にあります……というか、ギルド最強パーティになった以上、その責務を負う必要がありますにゃ」
「責務、ねぇ……」
「まあ、嫌なら嫌で断れるにゃが……」
断るか……。
俺とミキ、それにアヤネは互いに考えてから発言する。
「断る理由もないよなぁ……」
「私たち、移動も快適ですしね……」
「野宿もハウスを出せば一発で解決だし……」
「心配なのは都を空ける期間が長くなることくらいか」
「そこは家精霊たちに任せておけば大丈夫ですにゃ。学校の方は商業ギルドが徹底的に管理してくれそうですしにゃ」
徹底的に、の表現に思わず笑みがこぼれる。
なるほど、その表現はあってるな。
「確かに。あの学校の卒業生は何をやらせるにしても普通の成人より使い出がよさそうだ」
「よさそうなんてものじゃないですにゃ。お三方がいないときに商業ギルドのギルドマスターに会う機会があったのにゃが、可能ならば最初の卒業生は全員商業ギルド預かりにしたいとも言ってましたにゃ」
「そこまでか」
「体力のあるものは護衛として、算数が得意なものは経理として、礼儀作法が得意なものは接客要員として雇いたいそうにゃ。もちろん、給金も色をつけると言っていたにゃ」
んー、そこまでなのか。
だが、俺は渋い顔で返答する。
「どうするかは子供たち次第だな。商業ギルドに雇われたいならそうすればいいし、他の道を歩みたいならその方がいいだろう」
「だと思ってましたにゃ。商業ギルドのギルドマスターもさすがに無理でしょう、と言ってましたにゃ」
「ならいいんだが」
その後もいろいろ話をしながら遅い夕食を食べ終える。
そして、食後のお茶を飲んでいた頃、思い出したかのようにリオンが声をかけてきた。
「フート殿、ハーミットホーンの折った角を見せてほしいにゃ」
「構わないが……明日じゃダメか? 外じゃないと出せないし、もう暗いぞ?」
「大丈夫ですにゃ。光源は準備しますにゃ」
「ならいいが……ミキとアヤネはどうする?」
「私はいいわ。もうしばらく休んだら寝ることにする」
「すみません、私もそうさせてください。ちょっと緊張していたせいで疲れが……」
確かに、ふたりとも少し疲れた顔をしているな。
無理はさせない方がいいか。
リオンが見たがっているだけだし。
「わかった。俺とリオンだけで行ってくる」
「「オンオン!」」
「わかったわかった。テラとゼファーも一緒だな」
「それじゃ、おやすみふたりとも」
「おやすみなさい、フートさん、リオンさん」
「おやすみだにゃ~」
「おやすみ」
ふたりに別れを告げてハウスの外に出る。
少し離れた場所に、先ほど折ってきた角を出すが……でっかいな。
「……ふむ。これが今回のハーミットホーンの角ですかにゃ」
「ああ、そうだが。……この光源はなんだ?」
「ちょっとした魔道具ですのでお構いなくですにゃ。……ふむふむ、根元からきれいにぽっきり折れてますにゃぁ」
「根元だってわかるのか?」
「この焦げ茶色になっている部分が根元の証ですにゃ。……これなら角の再生まで年単位でねぐらから出てきませんにゃ」
年単位か……。
ちょっとやり過ぎたか?
「だからといってのんびり相手をするつもりはないんだろう?」
「もちろんですにゃ。できることなら、あと一週間で狩ってしまいたいですにゃ」
「どんどん短くなっていくな、予定が」
「地龍王様の加護が強すぎなんだにゃ。ハーミットホーンは土属性に弱いモンスター故、的にもってこいですにゃ」
「つまり、加護でどれくらいのことができるのか見極めろと」
「はいですにゃ」
はいですにゃって、簡単に言ってくれるなこのネコ。
まあ、試すつもりではあったんだが。
というわけで、俺の考えとも一致するので頷き返す。
「では明日以降の予定は決まりですにゃ。フォーメーションなどは明日、4人全員が揃っているときに説明しますにゃ」
「わかった。それじゃ、角はしまうぞ」
「はいですにゃ」
そして、角を再びアイテムボックスに格納し、ハウスに戻って寝ることにする。
地龍王の加護ってどこまでのことができるのやら……。
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