162.ストーンランナー(?)戦リザルト
「行ってしまわれましたにゃあ」
「だな」
「嵐のような方でしたね」
「なんだったのかしらね」
話したいことを話し終えると、地龍王は再びストーンランナーの姿に戻り礫岩の荒野へと戻っていった。
どうやら、このままストーンランナーのフリをして監視を続けるのだろう。
「……考えてもわからないものはわかりませんにゃ。とりあえず、ストーンランナーにこれ以上、手を出す理由がなくなりましたにゃ。というわけで、一度ギルマスに報告……と言いたいところですが地龍王様からいただいた加護とスキルが気になりますにゃ。今晩はいつものキャンプ地で何が増えたのかを確認ですにゃ」
「それがいいだろうな……ソウルも莫大な量が増えてるし」
「レベル150相当のモンスターを倒した時と同じと言っておられましたからにゃ。それくらいにはなるでしょうにゃ」
「……本当にレベル150でこんなにもらえるんでしょうか?」
「にゃ?」
「帰ってから話すわよ」
「そうしますかにゃ。車を出しますので、乗ってくださいにゃ」
結局、予定に近い日数をかけてストーンランナーというか地龍王と戦った俺たちだが……これは正常なのか?
なんだか普通じゃない気がするんだが……。
「皆さん、キャンプ地に着きましたにゃ」
それぞれが物思いにふけっていたのか、会話もなくいつの間にかキャンプ地にたどり着いていた。
さて、どう話したものか。
「……とりあえず、お風呂とご飯にしましょう。話はそれからでもできるはずです」
「そうね、そうしましょうか」
「だな。めんどくさいことになりそうな話は後に回したい」
「……皆さん、どれだけのソウルや加護をいただいたのですかにゃ?」
「そういうリオンさんは何ももらってないんですか?」
「ちょっと待つにゃ……【地龍の毒消し】と【地龍の竜鱗】が増えてますにゃ……」
「まあ、そういうことだ。あとで確認しよう」
「はいですにゃ。そうしましょうにゃ」
やっぱりリオンにもスキル……というか加護? は与えられていたようだ。
うん、めんどくさい話になりそうである。
ともかく、お風呂で埃を落とし、夕飯を食べたあとはリザルト確認の時間だ。
……非常にめんどくさい話になりそうなんだけど。
「では、まず吾輩からですにゃ。吾輩がいただいていた加護は先ほども言ったとおり【地龍の毒消し】と【地龍の竜鱗】ですにゃ。効果を確認したところ、【地龍の毒消し】はその名前の通りどんな種類の毒でも無効にする効果が、【地龍の竜鱗】は意識外からの攻撃を防ぐ効果があるそうですにゃ」
「意識外からの攻撃ってどういうことよ?」
「まあ、簡単に言ってしまえば不意打ち対策のスキルですにゃ。これがあれば、相手から不意打ちを受けてもある程度は防いでくれるみたいにゃ」
「ある程度、なんですね」
「……龍王様基準の『ある程度』だからにゃあ……人間の攻撃なんてレベル8魔法くらいじゃないと無意味じゃないのかにゃ?」
「さらっととんでもないものを渡してくれたな」
「ですにゃ。一体吾輩たちは何と戦えばいいのでしょうかにゃ?」
「アグニでしょ? なんか大昔の赤の明星らしいけど」
「そのようですにゃ。しかしどういう意味でしょうにゃあ……」
「わからない事は置いておこう。で、俺たちが今回入手したソウル量なんだが……」
「何か問題でもあったのかにゃ?」
「まずはこの10日間でストーンランナーの外殻を破壊したときのソウルの合計は500万ほどだった」
「あれも上下差が激しかったわよね。多い日もあれば少ない日もあるし」
「そこら辺は地龍王様の加減一つでしょうからにゃ。それで、他に問題があったのかにゃ?」
「……地龍王からもらったソウル量なんだが……15億ほどあるぞ?」
「にゃに?」
「間違いないわよ? 私も15億増えてるもの」
「私もです。レベル150のモンスターってこんなに多くないですよね?」
「多いはずがないにゃ! せいぜい、2億から3億程度だにゃ!」
「あ、それでも億単位なのね」
「……地龍王様は何を考えてこんな膨大なソウルをくださったのにゃ?」
「それでなんだが、ソウルパーチャスで覚えられるスキルも増えていた」
「それも地龍王様が言っていたとおりですにゃ。ストーンランナーのスキルですにゃ?」
「私が覚えられるようになった【積層の盾】とかはそうでしょうね」
「にゃ?」
「明らかに地龍王由来のスキルも増えているんだが……」
「にゃんですと?」
「例えば俺だと【地龍王の叡智】なんてのがあってな。これを覚えると、無条件で土属性の属性相性が最高になって威力も極大化するらしいぞ」
「私にも似たようなものがありました。【地龍王の爆爪】というスキルなんですが……これを使用すると打撃攻撃でもスパスパ相手を切り裂けるようになって、その上爆発までするらしいんですよね」
「アヤネ殿にもなにかあるのかにゃ?」
「私は【地龍王の咆吼】ね。相手を一気に吹き飛ばしつつ意識を自分だけに向けさせるって技のようよ。……それだけじゃなくて、防護壁みたいなのもできるようなんだけど。あとは【地龍王の守護】って言うのも覚えられるわ。こっちは常時使用型で、とにかく頑丈で傷の治りが早くなるみたい」
「……地龍王様、何を考えておいでですかにゃ」
「でだ、これらのスキルを覚えるのに10億ソウル必要なんだよな……」
「なんですよね。どう考えても、10億ソウルを使って自分が与えたスキルを覚えろってことですよね」
「どうしてそんなまどろっこしいことをしたのかしらね?」
「おそらくはレベルアップを優先するかどうかを考えさせる為ですにゃ」
「……なるほどな。15億もあればかなりのレベルアップが見込めるからなぁ」
「それで、皆さんはスキルとレベル、どちらを優先するのですかにゃ?」
「いや、さすがにこれはスキルだろう」
「ですね。残りの5億でもかなりレベルが上がると思いますし」
「むしろ、覚えなくちゃ死ぬ可能性があるから覚えろ! 的な感じすら受けるのよねぇ」
「その判断は正しいと思いますにゃ」
「じゃ、今日の打ち合わせは終了だな」
「各自スキルを覚えてレベル上げをして終わりね」
「うん? ストーンランナー由来のスキルは覚えないのですかにゃ?」
「あー、それなんだがな……」
「いまいちピンとくるものがないんですよね」
「さっき言った【積層の盾】だって地龍王のスキルがあれば問題なさそうだし」
「【重疾走】ってスキルは覚えてもいいかなと思ったんだが……」
「そのスキル、自分のステータス以上のスピードは出ないんですよね」
「結局、俺の足が遅いのはどうにもならないって訳だ」
「ふむ……フート殿の足の遅さもどうにかしたいところですがにゃ」
「まったくだ。ともかく、ストーンランナー由来のスキルは一時保留……多分このまま忘れ去られそうだけど」
「そんな気がしますにゃ。どちらにせよ使わないスキルを覚えても仕方がないですにゃ。吾輩にもソウルは入っていますし、強化しておくことにしますにゃ」
「決まりですね。それじゃあ、明日以降に備えて休みましょうか」
「明日は一度検問所まで戻ってギルドマスターにことの顛末を報告ですにゃ。会話の音声も記録してありますしにゃ」
「……抜かりがないな、リオン」
「まあにゃ。報告を終えたら、またこのキャンプに戻って一泊。その翌日からは次の獲物に向かって出発ですにゃ」
「ようやく二匹目の獲物なのね……」
「あまり時間に余裕がなくなっちゃいましたね」
「……今回の強化で次の獲物はものすごく狩りやすくなったと思いますにゃ」
「そうなの?」
「というか、今回の遠征はもう終わりにしてもいいくらいにゃ。……レベル上げのために残りの獲物もいただいていきにゃすが」
「それは楽しみだな。……さて、そろそろ休もうか」
「そうですね。ではまた明日」
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