160.ストーンランナー戦 6
ストーンランナー戦10日目、ついに第四層目を突破することができた。
「にゃっはっは! 吾輩、研究を頑張った結果ですにゃ!」
「すごいです、リオンさん!」
「確かに、やるじゃない、ネコ」
「お手柄だな」
「もっと褒めてもいいんにゃよ?」
第四層に到達してから毎日ちまちまと手に入る、欠片を持ち帰ってリオンと俺でいろいろな研究と実験をしてみた。
その結果、イフリート・アーム以上の超高温で一度加熱して急冷却すれば普通の岩と同程度まで脆くなるとわかったのだ。
「それにしても風魔法と組み合わせて高温環境を作るなんて、大胆なことをするわね」
「これが一番効率的だったのにゃ」
「だなぁ。イフリート・アームでつかんでから風魔法で竜巻を起こしてやれば、周囲の空気をぐんぐん取り込んで高熱化するんだものなぁ」
「火炎旋風と呼ばれる現象かしらね?」
「どうだろうな。魔法と魔法の合成の結果かも知れないし……帰ったら魔術師ギルドのギルドマスターに面会できるといいんだけど」
「あの人なら知っていそうですにゃ。まあ、問題は……」
「五層目ですよね……」
「あれは意外だったわ……」
「まさか、なぁ……」
俺たちが確認した五層目、それは鱗だった。
試しに攻撃してみたが、金属のような質感もあったけど生物の鱗で間違いない、というのが感想だ。
五層目が鱗ということは……。
「なあ、リオン。ストーンランナーって五層目が鱗なんてことありえるのか?」
「聞いたことがないですにゃ。……吾輩たち、ストーンランナーと戦っているつもりでまったく別のモンスターと戦っているのかもですにゃ」
「……それってまずいんじゃ?」
「うーん、どうですかにゃぁ? 生態自体はストーンランナーと一緒ですし、あと数日戦ってみて、それでダメだったら次の獲物に向かいましょうにゃ」
「ですね。……なんだか、あの五層目からは異様な圧迫感が感じられました」
「ミキ殿もですかにゃ? 吾輩もいやな予感がしますにゃ」
「……そもそも、ストーンランナーって本来はどんな生肌なんだ?」
「後ろ脚が非常に発達したトカゲですにゃ。肌は鱗で覆われていますが……あんな強固な鱗ではありませんにゃ」
「……どっかで拾ってきた鱗を五層目としてつけているっていう可能性は?」
「それならいいのですがにゃ……どうにも、あの鱗、直接生えているように思えますにゃ」
「……ほんと、モンスターって謎生物よね」
「だな」
「謎生物なのは認めますが、今回みたいなイレギュラーはまずありえませんにゃ。状況次第では、ギルドマスターに連絡を取って調査する必要がありますにゃ」
「そこまでなんですね」
「そこまでなんだにゃ。第三層までは普通のストーンランナーと大差なかったわけですがにゃ。第四層と今回の第五層、このふたつは明らかに異常ですにゃ。それに層を削るごとにソウルが手に入るのもおかしいですにゃ」
「……まあ、とにかく俺たちはあれの討伐を目指すわけだな」
「そこは変わりませんにゃ。……さて、では休憩を終わりにして、仮称ストーンランナーを探しに行きますにゃ」
「仮称なのね、ネコ」
「吾輩にもあれがストーンランナーである自信がなくなってきたのにゃ……」
車に乗り込み、ストーンランナーを探しに出たのだが……今回はあっさりと見つかった。
離脱する前に交戦していた場所から移動していなかったのだ。
『休憩は終わりでいいのか、ニンゲンたちよ』
「はい、大丈夫ですよ!」
『そうか。……それにしても、わずか10日でこの鱗を晒すことになろうとはな』
「……お前は一体何者なのにゃ?」
『ふむ、我が何者か、とな?』
「ストーンランナーにしては知能が高すぎるにゃ。それにストーンランナーの鱗はそんなに硬くないのにゃ」
『……なるほど、そこまで確認していなかったな。これは我の落ち度だ』
「やっぱりストーンランナーじゃないのね?」
『ふむ、難しい質問だな。この体はストーンランナーの体をベースに構成してある。故に、ストーンランナーであるとも言える』
「……なるほど。外殻を破壊するだけでソウルが手に入るのは」
『この体自体がソウルの塊だからだな。第四層のオリハルコンなどの鉱石類は別途準備しているが……基本的には我がソウルを使ってストーンランナーの体を模している』
「……なぜそんなことをするにゃ? そしてお前は何者にゃ?」
『ふむ、その答えがほしいか。ならば、この体も相応しい形に変えさせてもらおう』
その言葉とともに、ストーンランナーの体が光に変わり別の姿へと変わっていく。
そして、変わった姿は背中に二対の翼を持ち茶色の鱗を持った一匹の竜。
「な……、なんで、ここに、こんなやつがいるのにゃ!?」
「……圧迫感がすごいんだけど、そんなにやばいヤツなの、ネコ?」
「やばいなんてもんじゃありませんにゃ! こいつの名前は……」
『我が名は地龍王グランハザード。……まあ、これは我の分体に過ぎぬのだがな』
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