144.フェンリル二匹
「……本当にその2匹は本当に君の従魔なんだな?」
テラとゼファーの2匹が俺の従魔かどうか疑われてしまったのだ。
「見てのとおり懐いてるし、従魔の証もあるだろう?」
「いや、しかし……レッサーフェンリルがそのサイズになるなど聞いたことが……」
「あ、こいつら、フェンリルだから」
「な、フェンリル? どういう意味だ!?」
ま、フェンリルが従魔なんて聞いたことあるわけないし、驚くだろう。
俺だって、逆の立場だったら思いっきり驚く。
フェンリルって確か災害指定? の魔物だった気がするし。
「俺が飼っていたレッサーフェンリルが進化したとしか」
「……しばらく待っていてくれ。テイマーギルドに確認を取ってくる。レッサーフェンリルがフェンリルに進化するなど聞いたことがない」
「……まあ、任せるよ。ただ、俺が一例目だから連絡が届いているかどうか」
「その場合は、君だけ街の外で待ってもらう事になるが……」
「かまわんよ。というか、残りの3人は問題ないんだろう? 先に通してもらっていいか?」
「いいのであるか?」
「急ぐ旅なんだ。少しでも時間が惜しい」
「わかったのである。通っても構わないであるな、門衛殿」
「ああ、君たちは問題ない、通ってくれ」
「では、また後で」
「行ってきますね、フートさん」
「アンタもさっさと来なさいよ」
そうして3人を見送ってから数分後、門衛さんが1人の女性を連れて帰ってきた。
と言うか、女性の方が猛ダッシュで突っ込んで来た。
「フートさん! 会報で見ましたよ! フェンリルの進化だけじゃなく、自分が体験した進化条件まで公開したとか!!」
「ああ、その通りだから、落ち着いてくれ。えーと……」
「グラニエです! 私の名前なんてどうだっていいんですよ! どうして進化条件まで公開しちゃうんですか!!」
「……進化条件をばらすのってマズかったか?」
「だって、進化条件を秘匿情報として売りに出せばガッポガッポと儲かりますよ! それこそそれだけで一生食べられるくらいに!」
「そうなんだな」
「反応がいちいち薄いです! 進化条件を公開してくれたのはギルドとしては非常にと~っても非常ににありがたかったのですが!! おかげで会報の売り上げがとんでもないことになってますし、バックナンバーとして小冊子化もしましたし!!」
「……なら、いいじゃないか」
「ほら、反応が薄い!!」
「それで、お金稼ぎをしようと思ってなかったからなぁ。それよりも、自分以外のフェンリルが見てみたかった」
「~~!! そこまで言われてはギルドは何も言えないじゃないですか! どうです? 他の進化条件不明従魔の進化条件を探すというのは?」
「時間ができたらな。……門衛さん。通ってもいいか?」
「あ、ああ。まさか、あなたが本物のフェンリル使いだと思わず……」
「偽物がいたんだな」
「そういうわけだ。見抜くコツとかあるのか?」
「体長……はあまり参考にならないかもだけど、体長4メートルは超えていないと進化の兆しも見せないと思う。あと、見えにくいけど、フェンリルの額にはこういう角があるんだ」
「……なるほど、フェンリルはレッサーフェンリルよりも大型で額に角があると。見分け方がわかったよ。助かった」
「こちらこそ。それじゃあ、俺はハンターギルドに行くから」
「あ、私も今週はハンターギルド詰めですのでご一緒します。と言うか、フェンリルちゃんともっと一緒にいたいです」
「テラ、背中に乗せてやってくれないか?」
「ウォフ」
仕方がないなぁ、と言う仕草でふせをするテラ。
テンションが上がるのはグラニエだ。
「あの、本当に乗っていいんですか?」
「ああ。テラの気が変わらないうちに早く乗れ」
「はい。……おお、視線が高い!!」
馬よりも高いテラの背中に乗ってはしゃぐグラニエ。
……大丈夫かな?
子供たちのうらやましそうな視線を受けつつも、今日は時間がないのでまた今度となだめすかす。
目的のハンターギルドに到着する頃には20分くらいかかってしまった。
「はぁ、もっと背中に乗っていたいですが、さすがに門にぶつかりますねぇ」
「……だから、降りろよ?」
「わかってますよ。それに仕事を途中ですっぽかしてきたので急いで戻らないと。ではまた!」
なんとも元気だね、嵐のように去って行ったけど。
さて、俺の方の用事は終わってるかな……?
あ、1階でミキが待っている。
なにか良くない予感がするぞ。
「あ、フートさん……」
「……あまりよさげな話じゃないな」
「はい、なんでも無断で礫岩の荒野に侵入した人がいたらしく……」
どうやら、何事もうまくいくことはないようだ。
はぁ、もっと気楽に生きたいよ、ほんと。
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