131.対赤の明星対策会議 後編

「一週間前より国軍旗が1,000ほど使用許可が出されております! 使用責任者はジャック = アンスラン公爵! すでに許可が出た国軍旗は持ち出されている模様!」


「……つながりましたね」


「……いかがすれば、我が国は敵対認定を解いてもらえるでしょうかな」


「まずはそのアンスラン公爵とやらを捕まえるところからでしょう。すでに都にはいないと思われますが」


「それでは敵対認定は解かれないのでは?」


「はっ。身から出た錆だろうが」


「ちょ!? ブルクハルト!?」


「少しくらい語らせろよ。今回の一件。国軍旗を持った連中がフートたちを攻めた、それは間違いないなリオン」


「間違いないである」


「そのときの詳しい状況は?」


「魔玉石を差し出せ、さもなくば反逆者として捕らえると」


「で、魔玉石は出したのか?」


「今でも魔玉石は足りていないのである。差し出すわけがあるまいよ」


「で、襲ってきたと」


「うむ。騎馬隊全軍でな」


「数はどれくらいだった?」


「さぁなぁ……300以上だとは思うのであるが」


「4人仕留めるのに300出すか、赤の明星をわかってらっしゃる。全然足りてないけどな」


「ハンターギルドマスターよ。なにかいい打開策はあるのか?」


「まぁ、詭弁なんですがね。国軍旗を持ち出したアンスラン公爵とその軍を賊軍にしちまえばいいんですよ」


「む……それは」


「そうすれば、フートを襲ったのも国軍ではなくタダの賊軍。フートのことだから生かして返すとは思いませんが、被害はそこで終わりです」


「いや、待つのだ、ブルクハルト殿。アンスラン公爵殿は……」


「王位継承権も持っているって言うんでしょ? なら、王位を簒奪するためとか話をでっち上げやすい」


「……そんなことをすれば一族郎党どころか親類縁者まで全員処刑だぞ?」


「王様が釘を刺してあるんですよね? ハンターギルドの赤の明星はすでに国家戦力級だと。……まさか、例の田舎ギルドから来た冒険者崩れの赤の明星を見たせいで王様の話を眉唾だと思ったとか?」


「……タイムリミットはいつなのだ?」


「3日後……いや、もう日付が変わってますから2日後の昼ぐらいにはフート殿のところまで戻らなければいけないのである」


「ハンターギルドで用意できる移動手段で間に合うものは?」


「あと、1~2時間後に出発してギリギリですかね」


「貴様ら!! なぜこんな大事な用件をダラダラと引き延ばした!!」


 あー、また騎士団長ががなり立ててるぜ。

 コイツ、もう首でいいんじゃないか?


「俺たちはこの会議が始まる4時間前には城門に来てますよ? 城門前で2時間、そのあと待合室で2時間放置したのはあんたら王宮側だろう?」


「……軍務卿?」


「申し訳ありません。各ギルドの取り次ぎは騎士団の勤めとなっております。この件は早急に処断させていただきます」


「まあ、待たされちまったもんは仕方がねぇさ。時間はもうまき戻らないんだからな。で、どうするよ?」


「……親類縁者はマズい。他国の王子に嫁いだ姫もいるのだ」


「あっそ。じゃあ、貴族街と王宮が火の海……にすらならねぇか。クレーターになって押しつぶされるのを覚悟するんだな」


 用件は終わったので、俺たち3人は席を立つ。

 あー、ギルドの一番速い車を持ちだしてこの3人で昼夜を問わず爆走か……。

 おっさんにはきっついぜ。


「待ってくれ! あと、半日余裕をくれ!! それまでに平和裏に解決する結論を用意する!!」


「半日遅れたら、フート殿が行動を起こすであるよ?」


「王宮が持っている特別仕様のオフロードカーを貸し出す!! それならば半日程度の遅れは取り戻せるはずだ!!」


「……わかったよ。俺たちだって王宮や貴族をいじめたいわけじゃないんだ。その代わり、信頼は裏切るんじゃねぇぞ」


「わかっている。準備ができたら車を持って使いを出す。ハンターギルドで待っていてくれ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る