127.エイスファン ドロップアイテム整理
「っはー! あったまったー! これで湯上がりのビールでもあれば完璧なのにね!」
「アヤネさん、またそんな格好で! ちゃんと服を着てから出てきてください!」
「タンクトップは着てるしいいじゃない」
「そういう問題じゃありません。言うことを聞かない人には晩御飯抜きですよ?」
「……地味にいたいところを。きちんと着替えてくるわよ」
エイスファンを討伐したあと、ある程度安全な場所まで移動した俺たち。
リオンが珍しく早めに休んで暖をとろうと言い出したのだが……正解だったようだな。
食事担当のミキがお風呂に入ったときも普段より長めだったし、アヤネも長かった。
ふたりとも、かなり寒波で体力を消耗していたようだ。
おれ? 獄炎の盾を張っちゃえば寒波とか関係ないし……。
「あがったわよー。フートもお風呂入っちゃいなさいな」
「わかった。ソウル確認とスキル確認はそのあとだな」
「なにか増えているといいんだけどね、スキル」
「ラーヴァトータスの経験から言って増えてるとは思うが……とりあえず先にお風呂行ってくるわ」
「はーい、ごゆっくり~」
結局俺も長湯をしてしまい、最後にリオンがネコの行水でささっと上がってきてお風呂は終了。
全員揃って晩ご飯を食べたあとは、とりあえずドロップアイテムの整理となった。
「ドロップアイテムですが、まずは基本の魔石ですににゃ」
「きれいな魔石ね.……オークションに流せばどれくらいの価値が付くのかしら?」
「アイテムボックス預金を増やしたいのですかな? アヤネ殿?」
「冗談よ。この魔石の属性とかはわかる?」
「ああ、俺でもわかるよ。水に風、それから幻属性だそうだ」
「幻、ですか? 聞いたことありませんね」
「ヒト族には無縁だからにゃぁ。幻属性は妖精族の一部が持っている魔法属性の一部にゃよ」
「……ということは、あの狐さんって妖精族?」
「モンスターであることは間違いないにゃ。あの場所に何か未練があったのかどうかは知らないけど、あの場でモンスター化したにゃ。モンスターは討伐されても仕方がないにゃ」
「……そうですね。それにアストラル体? には逃げられましたしね」
「それなんだよにゃぁ。最悪、1年程度で復活することも考えなきゃなんだよにゃぁ」
「モンスターって復活するの? リオン?」
「復活するにゃ。ラーヴァトータスは3年から5年で復活にゃ。未確認モンスターだったダークトライホーンや、今回初討伐になるエイスファンは復活時期未確定になってしまうのにゃ」
「……じゃあ、あの黒熊も復活するのか?」
「はいですにゃ。ヤツは30年から50年で復活ですにゃ。ただ、復活するのは魔黒の大森林中域ですから、死道でかち合うなんてこと自体がイレギュラー中のイレギュラーですにゃ」
「そうか。それならいいさ。……で、ラーヴァトータスの魔石もそのままだが、誰がこの魔石を使う?」
「吾輩は、アヤネ殿を推すにゃ。アヤネ殿の防御力が増せばそれだけ吾輩たちも安心にゃ」
「うーん、それじゃラーヴァトータスの魔石は鎧に使わせてもらうわ。エイスファンの魔石は……ミキのナックルかしら?」
「えっと、どうしてでしょう?」
「今までも、ミキのナックルって強化が後回しにされ気味でしょう。それに、エイスファンにはヘイト無視っていう力もあった。そんなの私が持っちゃったら危険だからね」
「わかりました。私のナックルに使わせてもらいます」
「そー言えば、忘れ去られていたけど、フレスヴェルグの魔石は?」
「ああ、そんなのもありましたにゃぁ。これ、どうするにゃ?」
「フートの防具にでも使えば?」
「そうだな。杖は今でも火力過多気味だし防御を鍛えておくか……っておおお?」
「フートさん今浮きませんでした?」
「【浮遊】って言う特殊スキルを覚えた。10秒くらいだけど空を動けるらしい」
「使い方次第なスキルですにゃぁ」
「あまり使わないだろうな。さて、他のドロップだが……金銀財宝の類いはないな。めんどくさくなくてよし」
「毎回ハンターギルドの皆さんに換金してもらうのも悪いですしね」
「あれ、手数料が入ってくるから小銭稼ぎににはいいにゃよ? ギルドにとっては」
「そうなのか?」
「フート殿たちの持ち込む財宝は価値の高いものばかりですから、かなりの金額がハンターギルドにも落ちてますにゃ」
「うーん、そう考えると悪いことをしたかな」
「エイスファン討伐方法を示したレポートだけでおつりが来るにゃ。というか、これを提出したらまたがっぽりと報奨金がもらえるから覚悟しておくにゃ」
「……俺、これ以上お金いらない」
「私もです」
「私だってそうよ」
「ミスリル貨も100枚を超えては邪魔なだけにゃ。その苦しみを味わうといいにゃ」
「……気を取り直そう。魔宝石……」
「……オークションです……」
「しかもこれ、恐ろしくきれいよね。私たちの世界にあったスノードームみたいで」
「あっはっは。これでまたミスリル貨が増えますにゃ!」
「ラーヴァトータスもあるんだよなぁ」
「あっちはあっちで燃えさかるような感じがするんですよね」
「そういうのが好きそうな人って多そう」
「……お金の話は止めましょうかにゃ」
「そうだな。次は魔玉石だが……これもラーヴァトータスと同じで変なかたちをしているな」
「……ん? このかたちって……フートさんラーヴァトータスの魔玉石を貸してください!」
「ああ、わかった……っておお!」
「なんと! ラーヴァトータスとエイスファンの魔玉石は組み合わせて使うものでしたかにゃ!」
「そんな魔玉石もあるのね。二匹に何かつながりがあるのかしら?」
「つながりがあるのは二匹ではなく場所の問題だと思いますにゃ。しかし、白と赤が美しい魔玉石ですにゃぁ」
「うん、これはミキのものだな」
「へ? 鑑定はいいんですか?」
「鑑定はもう済ませたよ。防具につければ火と水の耐性アップ。杖につけると火と水の攻撃魔法の威力をアップ。武器につけると、火と水属性の攻撃ができるようになるらしい」
「それなら私がもらってもしょうがないわね。私は今の魔玉石が性に合ってるし」
「俺も火や水魔法をメインで使う予定はないからなぁ。魔玉石を使ってないのはミキだけだし、ミキが使ってくれ」
「はい! ありがとうございます!!」
「残りのドロップアイテムにゃが……食べられそうなお肉はないにゃ」
「ネコもすっかりモンスター肉の旨さにハマってるわね」
「仕方のない事にゃ。というか、このお面はなんにゃ?」
「『氷狐の仮面』と言うらしいぞ。装備していると、それだけで水属性耐性と攻撃力アップだ」
「……ハードルが高いにゃ。フート殿しまっておいてにゃ」
「はいはい。残るは、この13本の尻尾だけだが……」
「鑑定結果は『氷狐の零尾』と出ますね」
「装備品の作成に混ぜると全属性耐性アップですって」
「魔法防御が全部上がるなら是非とも欲しい逸品ですにゃぁ」
「じゃあ、ネコが全部持ってく?」
「それはダメですにゃ。皆で倒したのですから」
「じゃあ、どうするのよ」
「……皆さんは3本ずつ神器に取り込めないか試してくださいにゃ。できなければ吾輩が何かアクセサリーを作るために預かりますにゃ。できたらそのままでいいですにゃ」
結果としては、零尾は神器に取り込むことができた。
神器の装備効果として【全属性耐性レベル3】が付いたが……まあ強くなったな。
「どうやら、取り込むことは成功のようですにゃ。残り4本のうち3本は吾輩がもらって、1本はサンプルとしてハンターギルドに提出ですにゃ」
「了解。……あとはスキルか」
「もうちょっとです。がんばりましょう!」
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