114.神器の耐性入手

 全員走り続けていたということで、まずお風呂に入る。

 それから夕食の時間になってリオンが提案してきた。


「お三方の神器は、確かアイテムを取り込んで強くなることもできるんでしたにゃ?」


「ああ、そういえばそういう能力もあったな。効果を実感できないから、最初の頃に試して以来やってなかったが」


「それでしたら、氷狼の皮を吸収してみて欲しいのにゃ。食事後ににゃ」


「構いませんが……なにか意味が?」


「氷狼の皮は防具にすると耐熱効果のある装備になるにゃ。あれだけ倒してきたんだから、皮も十分に集まっているはずにゃ。三人分に分割しても十分だと思うのにゃ」


「三人分? フートも? 普段は攻撃を食らわないわよ?」


「ここではそうはいきませんにゃ。ウィル・オ・ウィスプは炎を使った全体攻撃……というか拡張攻撃をしてくるのですにゃ。先に仕留めることができればそれに越したことはないのですが、必ずそういうわけにもいかないでしょうにゃ。転ばぬ先の杖にゃ」


「ふーん、本音を言いなさいよ、青猫」


「にゃはは、ばれてますか。この地域にも討伐許可モンスターがいますにゃ。【炎熱の息吹】ラーヴァトータスといいますにゃ」


「そいつが炎のブレスを使ってくると」


「ブレスだけじゃなく、溶岩弾を飛ばしたり自身の身体を赤熱化して倒すのが大変なんですにゃ。ちなみにレベルは130ですにゃ」


「エイスファンより高くないか?」


「戦い易さはこちらが上ですにゃ。フート殿をレベル110まで押し上げれば十分にハント可能ですにゃ」


「ふーん、ということは戦い方も見当がついているのね」


「溶岩弾や赤熱化についてはフート殿の氷魔法で消してもらえばいいにゃ。モンスター自体は水属性が弱点にゃ」


「ややこしいが……なんとかなるだろう」


「というわけだにゃ。それでは、食べ終わったら試してみてにゃ」


 リオンがそう言うので三人で防具に氷狼の皮を吸収させてみる。

 すると、リオンの言うとおり装備効果に耐熱効果がついた。

 それぞれ300に近い数の皮を取り込んだ結果、耐熱効果は5、ダメージを25%カットしてくれるらしい。


「うん、これならそれなりに安心できるかな」


「だにゃ。吾輩もこの地域では耐熱装備をしますにゃ」


「……耐熱装備なんて持ち歩いてたの?」


「ハンターはアクセサリーで耐性をつけるものですにゃ」


「鎧とかは持ち歩かないの?」


「逆に聞くのにゃが、スペアの鎧なんて持ち歩けるのかにゃ? 吾輩のような軽装で」


「アイテムボックスがあるでしょう?」


「……そうだったにゃ。レベル3のアイテムボックスがあれば、スペアの鎧も持ち歩けるにゃ」


「このネコ、どこか抜けてるわね」


「ええい、耐熱アクセサリーでなんとかなるので問題ないにゃ! 今度の遠征からスペア装備を持ち歩くにゃ!」


「そうしなさいな。……そういえば、リオンの武器や鎧って壊れたこと無いわよね。結構無茶な使い方してるはずなのに」


「今更そこかにゃ? 吾輩の武器は魔法金属に自己修復系の付与魔法をつけてもらっているにゃ。これのおかげで、普段は簡単なメンテナンスだけで大丈夫なんだにゃ!」


「なるほどね。……そういえば、私たちってほとんど生産系のスキルを持ってないわよね」


「ほとんど、ですか?」


「ミキは料理スキルをとったでしょ?」


「【料理レベル5】はとりましたけど、後は自力で伸ばしましたよ?」


「ちなみに、いまのレベルはなんなのよ?」


「7です」


「フート?」


「常人がたどり着くような領域じゃないそうだ」


「私たち、赤の明星ですから補正があるんですよ」


「それは否定できないな。俺も【雷精霊魔法レベル8】のアンロックがされたわけだし」


「……そういえば、アンロックされたのは雷の8だけにゃ?」


「ああ。それだけだ。他のスキルは使用していなかったしな。どんな条件でアンロックされるのかわからないし、戦いで使っていくしかないな」


「ですにゃぁ。……ただ、マキナ・トリガーは実戦で使うのは難しいのにゃ」


「なんだよなぁ。聖句を詠唱しなくちゃいけないし、詠唱が完了しても発射まで動けないし」


「聖句、にゃ?」


「レベル7以上の詠唱句を聖句って呼ぶらしいんだよ。アグニがそんなことを言っていたから調べてみたんだけどそうらしい」


「レベル7以上って、レベル7を越える魔法の存在なんて知られていないにゃ」


「確かに」


 俺とリオンは笑い合って、和やかな空気が流れる。


「さて、明日からはまた狩りの日々にゃ。今日はゆっくり寝るにゃ」


「了解。それで狩りはどうやるの?」


「氷狼のときのようにひとつの群れごとに倒していくしかないにゃ。ただし、近いところに群れがいると異変を察知してこっちに寄ってくるにゃ」


「……大海嘯は連発できないぞ?」


「そこは吾輩たちががんばるにゃ」


「まあ、時間を稼いでくれれば大海嘯が使えるか」


「……吾輩たちごと?」


「敵味方の識別をしてくれるから、流されたりしないぞ?」


「できれば退避してからにしてほしいにゃぁ」


「善処はする。ただし、ウィル・オ・ウィスプが多かったらどうする?」


「……吾輩たちごとやっちゃってくださいにゃ」


「明日以降はずぶ濡れね」


「私の道着はぬれても透けないから大丈夫ですが……」


「……念のためだが、大海嘯じゃ濡れもしないぞ?」


 とりあえず仲間たちの誤解を解き、今日は就寝となった。

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