おまけ:73.開校初等学校_裏

今回は種明かし回。

学校の開校準備から開校し軌道に乗るまでの流れをダイジェストで。

文字数的には普段の2倍以上あるから興味のない方は読み飛ばし推奨。

朝から2時間半ほどかけて書いてたからね、この資料……。

ではどうぞ。


*******************


・第二回学校開校会議


第一回で名前の出ていた調理・裁縫・紡織各ギルドの他、魔術師・テイマー・薬剤師・錬金術士ギルドも参加。


今回からフートたち赤の明星一行はオブザーバーへと変更。

あまり先進的な意見を出され過ぎても話が進まないからな!


第二回では各ギルドの希望をとりあえず集約。

以下取りまとめ内容


・商業:とにかく読み書き計算(できれば四則演算まで)をできるように

・冒険者・ハンター:体作りができる校庭と各種武器の使い方が学べる環境

・鍛冶:できればハンマーやヤスリなどの材料が使えるスペースが欲しいが後回しでいい

・調理:調理実習室が欲しい、あと給食係として雇う子たちはローテーションで雇って欲しい

・裁縫:裁縫実習室が欲しい。制服のほつれなど手直しはギルドの若い子向けに。

・紡織:紡織実習室が欲しい。あと、体験教室も欲しい(どんなことをしているか想像できないだろうから)

・魔術師:ある魔術師グループを教師陣として迎えて欲しい。人格も技術も折り紙付きだが、とある理由で表立てない連中。そのほかには、そいつら専用の研究棟が欲しい(危険な実験をする可能性もあるため)。魔術の実践場も欲しい。

テイマー:急ぎはしないが、テイマーの魔獣との付き合い方を教えたい。また、相性の合う子供がいればプレゼントも考える。

薬剤師:薬剤調合室が欲しい。そのための教師も派遣する。

錬金術士:錬金術教室を開きたい。講師ももちろん毎回派遣し、危険なアイテムはしっかり管理する。


以上が、『現在』参加を希望しているギルドの希望。

意見を集約した結果、実現順としては


・商業、冒険者・ハンター、調理、裁縫:初期投資として必要な素材もあるし最初に作った方がいい施設もある

・紡織・魔術師:魔術の授業は受け入れ体勢が整い次第始めたい。紡織も設備を設置するだけなら問題ない。

・薬剤師・錬金術士:やはり危険な素材を扱う可能性があるので別棟を作ってしっかり管理したい。

・テイマー:そもそも急ぎの対応を望んでいない(できれば春頃でいいらしい)。


が、決まった実現順序。

薬剤師・錬金術士は少し不満だったが、教える相手がスラムの子供たちと言うことで、危険物の取り扱いについては一層の注意をしなければいけないことを説明され納得。


第二回では、ここまでが取り決められた。


・第三回学校開校会議


続いて第三回、各ギルドの持ち出し金額について。

今回は赤の明星組は完全シャットアウト。

調理ギルドのギルドメンバーと一緒にスラム街へ炊き出しに行っている最中。


さて、各ギルドの持ち出し金額。

単位はミスリル貨。


・商業:10枚(商業ギルドとしての見栄もあるが、それ以上に今回の事業に期待している)

・ハンター:4枚

・冒険者:4枚(ハンターと冒険者は双方、卒業生で死人がひとりでも減るように簡単な装備品の購入資金として提供)

・鍛冶:2枚(この後、鍛冶ギルド向けの施設を作るなら3枚追加すると豪語)

・調理:5枚(若い子の面倒まで見てもらえるのにけちれない)

・裁縫:5枚(調理ギルド同様)

・紡織:3枚(ギルドとして裁縫ギルドより少し規模が小さい。あと、どれだけ人が来てくれるか未知数)

・魔術師:10枚(かなり要求で無茶を言っているので謝罪金も含めてこの金額)

・テイマー:3枚(まだ先の話なのでとりあえずこの金額。場合によっては増資も考える)

・薬剤師:2枚(薬剤師ギルドの施設を建てるときに3枚追加)

・錬金術士:2枚(錬金術士ギルドの施設を建てるときに3枚追加)


以上、合計ミスリル貨50枚が初期資金(フートたちの50枚は基本無視)

頭がくらついてきたのは商業ギルド。

「資金不足でなければ失敗しない」と豪語してしまった故にもう引き返せない。

商業ギルドはこの大金を一度預かり持ち帰ることに。

さあさあ、大変な事になってきたぞ!


・フート組

炊き出しが大好評で一緒に列の整理を手伝ってくれていた先輩ハンターたちに感謝。

しかし、列に並んでいた人間たちに幼い子供も多く含まれていたのが気がかり。

そして、帰り際、ひとりの老人から声をかけられる。


「一回の施しをする気まぐれならもうくるんじゃねぇ」と。

対してフート「定期的にくるなら問題ないだろう」と返す。

さすがにその返しは予測外だったのか老人は「おう」とだけ告げて立ち去ろうとした。

だが、今度はフートのターン。


「炊き出しにきていた子供たちの住処は知らないか」

「そんなところに行ってどうする?」

「日持ちするパンがそれなりの数ある。できればそれを配りたい」


(フートのアイテムボックスの中身ってミキから渡された保存食がたんまり入っているので嘘はない)


老人、一切目を離すことのないフートたちを連れていくことに。

炊き出しを手伝ってくれた調理ギルドの人とはここでお別れ。

先輩ハンターに付き添ってもらいながら帰ってもらうことに(フート側にも1パーティは残った)。


そして、一軒のぼろ屋敷についた老人はそこに住む子供たちを呼び出した。

年齢は10歳から14歳くらいまでの少年少女。

多少のいざこざはあったが、数日分の保存食を渡すことに成功。

炊き出しについては

3日から4日後の予定でまた来られるように調整する、と言い残し老人とも別れ家路についた。


・商業ギルドサイド

フートたちの現金もあわせるとミスリル貨100枚という大金が集まってしまった今回の事業。

失敗するわけにいかなくなった商業ギルドマスターは、懇意の貴族方に連絡を取る。

それは、この国にある5大公爵家の3つと10大侯爵家の2つ。

そこで、商業ギルマスは『スラムの子供たちを収容し成人まで育てる施設』として今回の計画を話す。

もちろん学校の事はおくびにも出さない。

各貴族家はこれらの事業に自分たちも資金を出して乗ろうとするが、商業ギルマスは断固拒否。

役所に届け出るための保証人にさえなってくれれば問題ないと説得。

ミスリル貨『50枚』もあるし、近年問題となっていたスラムの若年層の増加を食い止めてくれればと全員了承。

もちろん、政治的な駆け引きはあっただろうが、そんなことは商業ギルマスにとっては『今回は』些細なこととぶん投げる。


そして、五家の信認を得た商業ギルマスは役所に行き『スラムの子供たちを収容し成人まで育てる施設』を作ることの許可を求める。

場所は、スラム北に面している倉庫街。

あそこは管理だけはされているが、まともに使っている商会は誰もおらず、今回の施設を作るのにうってつけだった。

程なく、施設を作る許可も下り、施設買収に動き出すことに。


なお、『スラムの子供たちを収容し成人まで育てる施設』としてさまざまな場面で説明したのは、『学校』というものが廃れきってしまい、法律上でも扱いがあやふやになってしまっている点をついたギリギリの虚言である。

まともに『学校』を作ります、などと言い出せば、数週間から数カ月審査がかかるのは目に見えているので、『スラムの子供たちを収容し成人まで育てる施設』と言う詭弁を使ったのだ。

嘘は一切ついてないし。


・フート(冒険者・ハンターギルマス)サイド

炊き出しは数回続き、いろいろなご老体と知り合いになったフート。

そのおかげで、ここに来る子供たちの顔色も大分良くなってきたことにご満悦。

だが、その一方で、大人による保存食の強奪も起こっていると聞き、老人たち共々頭の痛い問題となっていた。


そこで話に加わってきた、冒険者・ハンターの両ギルマス。

自分たちの素性を明かした上で、今計画している学校計画について説明を始める。

最初は半信半疑だった老人たちであったが、これまでフートたちによる地道な炊き出し作戦もあり、子供の安全が担保できるなら、少人数からの参加ならば許可できる、とのお墨付きをいただいた。


ちなみに、このあとご老人(各スラム街の顔役)とギルマスたちとの面談で裏ギルドとの付き合いがある子供は送り込まないように密約が交わされた。

また、スラム街北は、老朽化やスラム以外の住人との衝突が激しく、取り壊しても構わない、と言う事になったため、学校の敷地予定地はさらに広がることに。

ガンバレ、商業ギルマス!


・商業ギルドサイド

倉庫の管理人たちと話をつけ、そこに棲み着いていた裏ギルドの人間たちをハンターギルドに追い払ってもらい整地の準備が整った商業ギルマス(このとき、最初の会議から2週間経過・使用した金額はミスリル貨2枚弱)。

やれ、整地だ、と言うところで冒険者・ハンターギルマスからスラムの北地区も取り壊して構わないと連絡が。

さすがにどっと疲れがましたが、やるしかないので、土木・建築・整備各ギルドに色をつけて資金を渡し、大急ぎで作業に取りかかってもらうことに。

結局、10日ほどで立派な更地とそれを取り巻く2メートルほどの壁、各種上下水道が通った事で、次は箱物に着手。

こちらも5日ほどで、まず寮が完成。それから10日ほどで2階建ての校舎と給食室が完成した。

最終的には初回の会議から1カ月ちょっとで箱物は完成したことになり、各ギルドに依頼して必要な資材等を運び込んでもらう事となった。

(寮の各部屋に備え付けてあるクローゼットや二段ベッドは特注品になるため木工ギルドに事前に頼んでいた)

そんなこんなで40日ほどで開校準備は完了。

魔法がある世界ってコンクリート工事がや土木工事早いから工期が超短い。

(なお、ちゃんと鉄筋コンクリートだよ)


・フート(スラム)サイド

学校が完成したことを受け、スラムの老人たちにその旨を伝えるフート一行。

ただ、それだけでは信用できないと言うことで、スラムから集められた20名ほどの子供と一緒に、老人たちの何人かも一緒に見に行くことに。


そうして案内された場所は、まだまだ殺風景だがしっかりとした手入れのされているきれいな建物。

まずは男女に分かれてお風呂で体を洗えといわれ、寮長に体をゴシゴシ洗われる。


きれいになったところで、子供たちにはサイズがあった制服を、老人たちには制服がないため、平民服を与えることに。

子供たちはこの服が自分たちのものになると聞いて大はしゃぎ。


そして、教室に行けば、教師であるセドリック校長がいろいろな事を教えてくれた。

文字の読み方から始まり、次に与えられたのは絵本。

それを文字一覧と照らし合わせながら読み進めていく。

老人たちにも文字一覧は配られたが、自分たちは読めるということなので絵本を読んでもらうことに。

絵とお話が一緒に書いてあり、文字が読めれば物語に引き込まれていく絵本の作りに納得。


次に計算ドリルが渡されて計算を実際にさせてみることに。

子供たちは数字の書き方さえ覚えていない子供がほとんどだったが、老人たちはすらすらと解いていき、かけ算のところで詰まってしまう。

セドリック校長からかけ算の概念を習えば、おぼつかないまでもかけ算を解いていく老人。

だが、今度は割り算で止まってしまい割り算の仕方を聞いても、なかなか理解できずに授業の時間は終了。

給食の時間となった。


給食は、それ専用の部屋が用意され、清潔なテーブルや椅子が用意されている。

そして、この『給食』というのは子供たちに一日三食無償で提供されるものらしい。

メニューは選べないが、スラムにいればそんなことは当たり前。

子供たちは用意された給食を喜んで食べていた。


初日ということもあり、子供たちも疲れただろうという配慮の元これで今日の授業は終了となった。

午後からは体力作りや、料理教室、裁縫教室などが予定されているらしい。

その説明を聞いた老人たちは腹が決まったようだった。


その夜、スラムの顔役たちの会合があり、まだ凶悪な悪事に手を染めていない子供を選りすぐり『学校』に任せることを決定。

反対意見もあるにはあったが、その翌日に校舎前で元気に体力作りに励む子供たちを見てそんな考えはすっ飛んだらしい。

ただし、しばらくの間は顔役たちが定期的に面会に行くことでも学校側と合意。

学校側が受け入れ可能といった男女200人ずつの許容人数のうち8割近くが埋まるほどの子供たちが集まることとなった。



なお、第73話でフートが学校の様子を見ていたのはこのとき。



・学校運営ギルド連盟(理事会)サイド

まさか、学校を作った段階で、あの人数を送り込んでくるとは思ってもみなかった理事会。

しかも、聞くところによれば、今回は学校入りを見送らねばならなかった年少組も多かったとのこと。

こちらは炊き出しで糊口ををしのいでいるが、いつまでも放置できない。

と言うわけで、大急ぎで年少期向けの初等学級を作ることで全会一致。

資金は潤沢すぎるほどに余っている(この時点でも35枚ある)ことから懸案である魔術師棟と魔術練習場ができ次第、寮の拡張と年少者の引き取りを開始することに。

また、自分たちの教室が伸びた薬剤師ギルドや錬金術士ギルドからは若干の不満の声が上がったものの、子供たちを冬前に暖かい場所で保護したいという思いは一致、そちらの準備に取りかかることに。


また、同時に、スラムに何カ所かある孤児院を立て直す計画も浮上。

顔役に頼んで場所を確保してもらったら、孤児院も新しく建て直して、幼年期未満の子供たちのフォローができるようにすることも決定。


全員、お金はあるし、子供の支援は徹底的にやれ、の精神が芽生えつつある、怖い。


次の問題は、スラムの大人たちの働き口だが、それについては今後検討することとなる。

ぶっちゃけ、そういった人たち向けの職業訓練校がオープンします。


初期投資額が大きすぎたため多少の無茶はなんでも効くんだよね怖い。

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