学校を作ろう!

70.学校なんてどうだろう?

「うーん、問題点の洗い出しとかしたいが明日でいいか? さすがにおなかが減ってきた」


「なんなら食堂でおごるぜ?」


「遠出の予定がないのに家で晩ご飯を食べないと、パールさんが不機嫌になるんですよ」


「完全に料理はあの子の仕事だからねぇ」


「そう言うわけであるので吾輩たちは帰るにゃ」


「そうですか……では、済みませんがまた明日の午前中に集まってもらえませんか?」


「わかった。それじゃあ、いい夜を」


「おう」


「狙っているヤツがまだいるかも知れません、お気をつけて」


 ああ、俺にとっては本気で気をつけなくちゃいけないことだったんだ。

 だからといって、完全武装のアヤネが前を固めて両サイドはミキとリオン。

 後ろはレッサーフェンリル2匹って……。


 家までの10分何事も起こらず無事に到着し、家ではパールさんの温かい料理を食べてお風呂に入りゆっくりと寝る。

 そして新しい一日が始まるのだが……最近はミキのスキンシップが激しくなってきた。

 なんというか、いまじゃ上半身で身体をがっしりホールドして首にかじりつかん勢いだ。

 ……これ、発情期とかが来たら生き残れるんだろうか。


 まだ眠っているミキもかわいいのだが、起き上がることができないので、やむなく起きてもらう。

 その後は着替えてクリーンを一回、それで寝汗は吹き飛ぶ。

 ミキも着替えおわったらクリーンをかけてあげる。

 まあ、この後もクリーンをかけることになるのだが。


 朝は運動に適した服装に着替えて、4人と2匹で軽くランニングだ。

 スタミナもスピードももっとも少ない俺にあわせてのランニングなので3人は余裕なのだが、俺には結構響く。


 ランニングがおわったら、シャワーで汗を流し、着替えてから再度クリーンをかけて朝食を食べる。

 これで、朝の7時位なので……まあ、ブルクハルトさんやユーリウスさんの言っていた『午前中』には間に合うだろう。


 さて、朝ご飯もおわって身支度を整えたら早速ハンターギルドに出発である。

 今日もがっちり周囲を警護されながらの移動ですよ。


「あ、いらっしゃい、フートさん。今日は早かったですね」


「おはようございます。ゲーテさん。早すぎたかな?」


「いえいえ、ギルドマスターもサブマスターもすでに来ていらっしゃいます。どうぞ4階へ」


「ありがとう。さて、それじゃあ、行くか」


 散々来た道であるギルドマスタールーム。

 今日も、ノックをして入室許可をもらい入っていく。

 そこには、巨大な黒板が用意されていた。


「いいところに来た、フート! この黒板を部屋の真ん中に持って行きたいんだ! 一度俺の机をアイテムボックスにしまえるか?」


「いや、しまえるけど……」


「じゃあ、やってくれ!」


「はいよ」


 机の上に乗っている物ごとしまってしまう。

 ギルドマスターは残った椅子を移動させて黒板を再移動。


「よーし、じゃあ、フート。しまった机を出してもらえるか?」


「ここに?」


「ああ、ここにだ」


「まあ、いいけどさ」


 言われたとおりに出すと、壁ギリギリまでのサイズとなってしまった。

 これは使いにくそうだなー。


「……今日はこれで仕事すんの?」


「……もう少し、壁からはなすことってできるか?」


「そうしたらソファーの動線の邪魔になるけど?」


「くっ……やむを得まい! 今日はこれで作業だ!」


「マスター、黒板の準備……できているようですね。代わりにあなたが狭っ苦しいですが」


「ほっとけ!」


 ユーリウスさんもやってきてこれで全員揃ったかな?


「さて、今日は少し大事になってしまいました。最初はハンターギルド内だけで草案をまとめるつもりだったのですが、その話がどこかから漏れて冒険者ギルドや商業ギルド、鍛冶ギルドのマスターまで来ることとなりました」


「そこまで立派な腹案はないぞ」


「ええ、ですから何か適当な話を出してくれるだけで十分なのです。それをこの世界の常識に照らし合わせてよい方向に持って行くのが我々の仕事なんですから」


「うへぇ……」


「がんばりましょう! フートさん」


「前向きになれるミキがうらやましいわ」


「吾輩、この世界の住人だから発言権はないのである」


「あ、逃げたわね、このネコ!」


「まあ、まあ、それではお歴々が集まる前に簡単に案を出していきましょう。フートさんには腹案があるようですが……」


「腹案というか……この世界には学校……高等教育を施すところじゃなくて幼児教育や初等教育を施す場所がないのかなと思って」


「……ふむ、学校ですか……」


「その様子だと何か問題があったようだな」


「この世界、というか国にもあったんですよ、初等学校が。ですが、貴族が入学して幅をきかせるようになり、入学生がどんどん減っていき、最終的に閉校したという歴史がね」


「なるほど、それなら最初から貴族を入れないような教育を目指せばいい」


「と、言いますと?」


「この国の識字率ってどのくらいなんだ?」


「識字率……文字を読める人の割合ですね。子供で20%未満、大人でも60%弱と言ったところでしょうか」


「それじゃあ、一向に暮らしはよくならないよ。契約書を作るにしろなんにしろだまし放題だもの」


「それは認識しています。ですが、識字率を上げると簡単にもうされても……」


「そこで登場するのが子供のおもちゃ、『絵本』なんだな」


「『えほん』ですか?」


「そ、具体的には絵が描いてある本に、物語として文章を付け足していく。その文章が読めないと物語でなにが起こっているのかよくわからない。だからこそ子供は勉強するようになるのさ。……って言うか、このあたりの知識って昔の赤の明星が与えてないの?」


「話は聞かせてもらいました。そこからは私が説明いたしましょう」


 後ろを振り向くとモノクルがよく似合う壮年の男性がひとり。

 この人、誰なんだ?

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